表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/203

『王の亡霊』

ロイは包囲する王国残党たちの中へと歩みを進めた。

剣を構えた兵、怒りに燃える目。

そして――彼らの期待。


「神がいなくなった今、

次に必要なのは“王”だ!」


先頭の男が叫ぶ。

その声には、かすかに震えが混じっていた。


「秩序を!指導者を!

ロイ・アーデン!王国の血を引く貴様なら!!

再び我らを導けるはずだ!!」


リリィが息を飲む。

エファトは目を細める。


ロイの出自――

それは彼自身すら忘れたい“呪い”だった。



ロイは無言で、敵へ歩み寄る。

男は歓喜の声を上げようと――した瞬間、


剣がその喉元に突きつけられた。


「導けだと?」

ロイの瞳が、怒りで濁る。


「俺が王なんかになったら、

また同じことの繰り返しだ。」


男が困惑の声を漏らす。

「だ……だが、民は指導者を求めて……!」


「神がいなくなったから次は王?

じゃあその次は何だ、俺か?」


その声は、氷のように冷たかった。


「権力にすがり、誰かに従うだけなら、

人間は“人形”と変わらねぇ。」



騎士たちの剣先が揺れる。


「神も英雄も王も、いらない。

自分の足で立て。」


敵の顔に激昂が燃える。


「あれだけの力を持ちながら……!

貴様は、責任を放棄するというのか!!!」


ロイは剣を下ろす。


「違う。“押しつけられた責任”を拒むだけだ。」


男が歯噛みし、叫ぶ。


「では聞く!世界を救った者は、

一体誰に導かれるべきだ!!?」


ロイは静かに答えた。


「自分自身に決まってんだろ。」


その瞬間、空気が震えた。

剣を構えていた騎士たちの手が止まる。



だが――


遠くから、ゆっくりと拍手が響いた。


「素晴らしいご高説ですね、ロイ殿。」


その声は上品で、冷笑が混じっていた。

月光の下に現れたのは――

黒衣の軍勢と、仮面の男。


胸に刻まれた紋章は、王家の聖印。


エファトが低く唸る。


「……“王家直属部隊ロイヤル・ドミナ”か。」


仮面の男が優雅に一礼する。


「ロイ殿。

我々は、あなたを王として迎えに来ました。」


ロイはうんざりしたように頭を掻く。


「何度も言ってんだろ。俺は――」


仮面の男はかぶせるように言った。


「拒否権はありません。」


パチン――と指を鳴らす音。


次の瞬間、

ロイの背後でリリィが息を詰まらせた。


「……っ!」


軍勢の一人が、リリィの喉元に剣を当てていた。


「貴様ら……!!!」

カイルが激昂し、エファトも目を見開く。


仮面の男は冷酷に告げる。


「あなたが王にならないのなら――

この娘を処刑します。」


ロイの全身から、黒い瘴気が噴き出した。


その瞳に宿るのは――

怒りでも絶望でもない。


絶対的破壊の意思。


「……いい度胸だ。」


呟きが、死刑宣告そのもの。


「王を求めるなら――

お前らから“王を廃す”。」



月が陰る。

ロイの後ろで、灰の剣が唸る。


戦いが始まった。

世界がロイを“王”へ押し上げようとする力と、

ロイの“拒絶”がぶつかり合い――


夜が裂けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ