表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/203

『神造炉の心臓』

白と金の光が混ざり合う空間。

そこには時間も重力も存在しなかった。

ただ、神の意志そのものが“構造体”として形を成している。


そこが――神造炉しんぞうろ

この世界のすべての“英雄”が生まれ、祝福が再分配される中心だった。


ロイは浮遊するようにその空間に立っていた。

足元には無数の魔法陣が回転し、無限の祈りと願いが流れ込んでいる。

そのどれもが、神への信仰の残響。

そして、それが人を“縛る”ための鎖でもある。


「ここが……神の心臓ってわけか。」


彼の声に応えるように、空間全体が微かに震えた。

“声”が響く。

それは言葉ではなく、世界の根幹から直接流れ込んでくる音。


――なぜ、呪いを選ぶ。

――なぜ、祝福を拒む。

――なぜ、神の秩序を壊そうとする。


「うるさいな。」

ロイは微笑むでもなく呟いた。

「お前たちの“秩序”がある限り、誰かが犠牲になる。

 祝福を持つ者と、持たぬ者。

 それを作り続ける神が、この世界の一番の“呪い”なんだよ。」



神の光が収束し、中心から“形”が現れた。

それは巨大な球体――

まるで心臓のように鼓動し、光脈が世界中へ流れ出ている。


『我が核を穿つなら、世界は崩壊する。』

『お前が憎む秩序も、お前が守る民も、全てが消える。』


「構わない。」

ロイは黒い剣を抜いた。

「俺が作る。呪いでも祝福でもない、“新しい世界”を。」


呪いの紋様が腕を這い、剣に絡みつく。

光と闇が混じり合い、黒炎の刃が現れた。

それは《呪装適応》の極致――

呪いが世界と完全に同化した姿。


「《カースリンク・オーバーソウル》――発動。」


神造炉が唸る。

祈りと願いが悲鳴のように響く。

そして、ロイが剣を振り下ろした瞬間――



空間が裂けた。

神の光が爆ぜ、世界の記録そのものが揺らぐ。

時間が巻き戻り、未来が書き換えられ、

無限の可能性が一瞬で消えていく。


(……ロイ、やめろ……!)

どこか遠くからリリィの声が聞こえた気がした。

だが、ロイの表情は微動だにしない。


「大丈夫だ、リリィ。」

「俺は壊すだけじゃない。――創るために、壊す。」


黒い閃光が神の心臓を貫いた。

その瞬間、金の光が破裂し、世界中の“祝福の紋”が崩壊した。



全てが静まり返る。

神の声も、光も、消えた。

ロイはただ一人、灰色の世界に立っていた。

その手には、光でも闇でもない――

“灰色の剣”が握られている。


「……これが、俺の答えか。」


その刃は、どんな呪いも祝福も受け付けない。

純粋な「意思の象徴」だった。


「呪いも、祝福も、もういらない。

 これからは――“人”が選べばいい。」


ロイの背に淡い光が灯る。

そして、ゆっくりと歩き出す。

神話が終わり、人の時代が始まるその瞬間。

世界は確かに、新しい朝を迎えようとしていた。



だが――その遠く、虚空の奥底で。

壊れた神の残滓が、微かに囁いた。


『……英雄を廃したその男も、いずれ“英雄”と呼ばれるだろう。』


それは、終わりではなく。

新たなる呪いの、始まりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ