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神造英雄レオン

白光が消えたあと、そこに立っていたのは“完璧な英雄”の姿だった。

金色の鎧に、透き通るような瞳。

そして、その声は――かつての兄とまったく同じだった。


「……ロイ。お前は、また間違っている。」


その言葉が響いた瞬間、ロイの胸に何かが刺さる。

あの日の記憶が蘇る。

“王族の恥”と呼ばれ、見下ろされていた日々。

“勇者”の名を奪われ、兄レオンの影として扱われていた少年時代。


ロイはゆっくりと息を吐いた。

「神までお前の姿を使うのかよ……。最低だな。」


レオンの顔をした“神造英雄”は淡々と告げる。

「神は人の希望を形にする。私はその結果に過ぎない。」

「つまり、お前は希望の亡霊か。」


ロイの右手に呪紋が走る。

「だったら、俺は呪いで希望をぶっ壊す。」



空間が軋む。

神造英雄が振るう剣は、現実そのものを断ち切る光を放った。

同時に、ロイの体から黒い瘴気が立ち上る。


「《呪装適応・侵蝕展開カース・フィールド》!」


黒い紋様が地面を覆い、白い世界を黒へと染めていく。

空が裂け、塔の内側に潜んでいた“神々の視線”がざわめいた。

まるで、異物が神話の中に紛れ込んだかのようだった。


「神の作った世界は、都合のいい英雄を選ぶ……」

ロイが呟く。

「でもな――俺は“選ばれなかった側”の英雄だ。」


呪いの剣が光を呑み込み、黒い刃が神造英雄に迫る。

衝突のたび、現実がねじれ、空間が歪んだ。


「兄貴の名前で戦うなあああああっ!!」


ロイの叫びと共に、呪いの力が暴発した。

金の鎧が砕け散り、中から白い光の粒が溢れ出す。



神造英雄はゆっくりと剣を下ろし、微笑んだ。

「……そうか。お前は、英雄を憎んでいるんじゃない。

 “英雄という制度”を、終わらせようとしているんだな。」


「そうだよ。」ロイは息を荒げながら言った。

「英雄を作り続ける限り、誰かが犠牲になる。

 その構造を壊すためなら、俺は何度でも呪われる。」


レオンの面影が淡く消えていく。

「ならば行け、ロイ。神の中枢――“神造炉”へ。

 そこに神の心臓がある。だが……それを穿てば、世界は壊れる。」


「上等だ。」


ロイは黒い剣を背負い、振り返らずに歩き出す。

「世界が壊れるなら、作り直せばいい。

 今度は――“誰も選ばれない世界”を。」


光が弾け、ロイの姿は神域のさらに上層へと消えていった。

その背中を、誰も止められなかった。



白の大地には、砕けた鎧だけが残る。

そこに落ちた一片が、ぼんやりと呟いた。


「……英雄を廃したその先に、何を見るのか……ロイ。」


そして静寂が戻る。

天上の炉が鳴動し、次の災厄の目覚めを告げていた。

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