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神域への扉

世界の果て、天へと伸びる“白の塔”。

その頂に、神々が英雄を創り出す「天上のアーク・クレイドル」があると語られてきた。

だが、それは伝承ではなかった。

――本当に、存在していたのだ。


ロイはその巨大な塔を見上げ、静かに息を呑んだ。

空を覆う雲が塔の頂に吸い込まれていく。

雷鳴と共に、塔の表面に浮かぶ無数の紋章が脈動している。


「……これが、神域の入口か。」


隣で、エファトが腕を組んでいた。

「“英雄を廃した者”だけが辿り着ける場所。皮肉な話だな。」


「上等だよ。」

ロイは唇を歪めた。「神が俺を招いたなら――その神を斬るだけだ。」



塔の前に立つ巨大な門は、光ではなく“概念”で構成されていた。

触れた瞬間、意識が浮遊し、時間が歪む。


(……見せてやろう。お前が否定した“神の正義”を。)


耳の奥で声が響く。

それは“塔そのものの声”だった。


「ロイ!」

リリィの声が遠のいていく。

ロイの身体が、光の中に吸い込まれた。


――気づくと、そこは白い大地だった。

空も地も存在せず、ただ光と音が交錯する空間。


(……ここが、“創造の間”か。)


ロイの目の前に、一人の男が立っていた。

金の鎧を纏い、背中に翼を持つ“完璧な英雄”の姿。

その瞳は、かつてロイが見たことのある色――兄、レオンのものだった。


「……兄貴?」

ロイは呆然と呟く。


だが、その声に応えるように、男は静かに首を傾げた。

「兄ではない。私は《神の模造ディバイン・コピー》」

「神は、英雄を“再生産”する。死してなお、完全な姿で。」


ロイの中で、何かが崩れた。

「……つまり、お前らは“命”すら道具にしてるってことか。」


「命は神の素材。英雄は神の部品だ。」

男――否、《模造された英雄》が淡々と告げる。


「なら、俺は“壊す側”でいい。」

ロイはゆっくりと右手を上げた。

呪いの紋様が浮かび上がり、黒い雷が走る。


「《呪装適応・最終段階カース・リミットブレイク》」


空間が悲鳴を上げ、塔そのものが揺れた。

ロイの呪いが、“神の法”を食い破っていく。


「神域を侵す者、ロイ・アーデン!」

《模造英雄》が叫び、金色の刃を構える。

「貴様の存在は、この世界に不要だ!」


「だったら証明してみろよ。俺の“呪い”が――お前の神を穿てないってな!」


二つの刃がぶつかり、白の大地が崩壊する。

光と闇の衝突は、神の世界をも揺るがす戦いとなった。



遠くの空。

地上から塔を見上げる人々は、天を貫く閃光を見た。

それはまるで、神話が燃え尽きる瞬間のようだった。


リリィが呟く。

「ロイ……どうか、帰ってきて。」


しかし、その願いを掻き消すように、塔の光はさらに強く輝き――

神々の声が響いた。


『――英雄、再構築開始。』


そして、ロイの意識は再び闇に沈んでいった。

⚔次回予告


第二部 第十七話『神造英雄レオン』

神が造りし“兄の亡霊”との対峙。

ロイは己の呪いの力の真価を問われる。

神と英雄、そのどちらにも属さぬ者の答えとは――。

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