終焉の時
ロイたちが進む先には、古の時代から封印された場所へと続く道が広がっていた。高い山々に囲まれ、どこまでも静かな風景が広がっている。この場所が、黒月の力の源を封じるために選ばれた場所だということが、ロイの心に重くのしかかっていた。
「ここが、封印された場所か。」ロイは足を止めて、前方の不気味な岩壁を見上げた。
「ここで間違いない。」エファトが静かに答える。その目には、過去を知る者ならではの冷徹さが感じられた。
「どうする?」カイルがロイに尋ねる。
「まずは、調べてみよう。」ロイは静かに答えると、慎重に一歩一歩岩壁に近づいていった。
その岩壁には、古代の文字が刻まれていた。だが、時が経ちすぎているため、はっきりとは読めなかった。ロイはその文字を指でなぞりながら、心の中で呪文のように唱える。
すると、不意に岩壁が震え、ゆっくりと動き始めた。周囲の空気が重くなり、まるで何か大きな力が解き放たれるかのような感覚がロイの体を包み込んだ。
「気をつけろ!」エファトが叫ぶ。
岩壁が完全に開いたその瞬間、暗闇の中から一つの巨大な影が現れた。それはまるで黒月の力そのものが具現化したような、異形の存在だった。
「これが、黒月の源…」ロイは息を呑んだ。
その影は、巨大な目を一つ持ち、まるでロイたちを見下ろしているような威圧感を放っていた。そして、その目の中には、何千年もの時を経て目覚めた恐ろしい力が宿っているように感じられた。
「来るぞ!」エファトが剣を抜き、前に出る。
だが、ロイはその一歩を踏み出すことなく、静かに呟いた。「これ、違う…!」
その言葉にエファトが一瞬動きを止める。
「違う?」カイルも不安げにロイを見つめた。
「これは…黒月の源じゃない。」ロイは確信を持って答えた。「ただ、黒月の力を宿した存在が封じられていただけだ。」
「そうか。」エファトは納得した様子で、剣を鞘に戻す。「それなら、あの存在に立ち向かう必要はない。」
その言葉を信じたかのように、黒月の影が動きを止め、次第にその姿を消し始めた。まるで最初から存在していなかったかのように、岩壁が元の姿に戻っていった。
「封印されていた力が、目を覚ましただけか…」ロイはその現象に驚きながらも、冷静に言った。「でも、これで黒月の力が完全に消えたわけじゃない。」
「そうだな。」エファトは少し遠くを見つめながら言った。「だが、今のうちはまだ動けない。黒月の力が再び動き出すとき、それはまた違った形で現れるだろう。」
ロイはその言葉を胸に刻みながら、仲間たちと共にその場を後にした。封印された黒月の力は、今もなお彼らを見守っているようだった。
◆
数日後、ロイたちは山を下り、再び道を進んでいった。だが、これから何が待ち受けているのか、誰もが予測できなかった。
ロイは深い思索にふける。「黒月の力が封じられているなら、もう大丈夫なのか?」
「封じられている間はな。」エファトは答えた。「だが、その力は決して消え去ったわけではない。」
「そうだな。」ロイは静かに言った。「だからこそ、次の準備をしなければ。」
その言葉を聞いたリリィが、少し声を潜めて言った。「でも、ロイがあの力を完全に制御できれば、どんな敵でも倒せるはずだよ。」
「それは確かにそうだ。」ロイは頷きながらも、心の中で決して油断してはいけないと警戒を続けていた。
そして、ロイたちは再び長い旅路を続ける。黒月の力が完全に消える日が来るまで、彼らの戦いは終わらない。
しかし、それがいつになるのか、ロイたちはまだ知らなかった。




