黒月の終焉
ロイの体内で暴走していた黒月の力が、ようやく収束した。彼は深い呼吸を繰り返しながら、足元に目を落とす。その周囲では、カイルやリリィ、そしてエファトもそれぞれのポジションを取って警戒を続けていた。
「ロイ、大丈夫か?」カイルが心配そうに声をかける。
「うん…何とか。」ロイは薄く笑うと、手を握りしめ、力を再確認した。「でも、ダルクがまだあんな顔してる以上、油断はできない。」
その時、ダルクの姿が再び浮かび上がる。彼は未だに膝をついているが、顔には不敵な笑みを浮かべていた。
「まだ、終わらないぞ。」ダルクの声は、まるで冷徹な刃のように鋭かった。「お前たちの力は確かに強い。しかし、黒月の力を完全に消し去ることはできない。」
ダルクの言葉が空気を引き裂くと、突然、彼の体から膨大な黒いエネルギーが放たれた。その波動は周囲の風をも巻き込み、辺りの景色が歪んでいく。
「こいつ、まだ力を温存していたのか…!」ロイは目を見開き、状況を把握する。
「ロイ、気をつけろ!」エファトがすぐさま警告を発するが、その時にはすでにダルクの力がすべてを飲み込みつつあった。
ダルクの体から発せられる黒月の力は、まるで巨大な渦巻きのように渦を巻き、ロイたちを包み込む。空間がひどく歪み、時間さえも狂い始めているように感じた。
「この力で、貴様らすべてを消し去る。」ダルクは冷たく言い放ち、手を広げた。その瞬間、黒い渦巻きがロイたちに向かって迫る。
「駄目だ、これを食らったら…!」カイルが叫び、ロイも一瞬でその意味を理解する。
「みんな、下がれ!」ロイは叫び、体を強く構える。黒月の力が押し寄せる中、彼は一度だけ強く目を閉じた。
「俺の力が、すべてを止める。」ロイは心の中で呟き、体内に湧き上がる黒月の力を再び引き寄せた。それをダルクの攻撃に対抗させるため、ロイは最大限の力を込めて、両手を前に突き出す。
その瞬間、彼の体から放たれた黒月の力が、まるで光の矢のように空を裂き、ダルクの力に直撃する。衝撃が辺りを震わせ、空間が崩れ落ちるような音が響く。
「うおおおお!」ロイは力を込めながら声を上げる。自分の中の呪いの力が、ついにダルクの力に勝る瞬間が訪れた。
だが、ダルクの目は依然として冷徹なままだった。「それでも、黒月の力はまだ止められん。」
ダルクの手が再び動き出す。彼は黒月の力をさらに強化し、まるでその力に生きているかのように呼び寄せていく。
「もう、終わりだ!」ロイは叫び、全身の力を解放しようとした。しかし、その瞬間、エファトがロイの背後から手を伸ばし、彼の肩をしっかりと掴んだ。
「待て、ロイ。焦るな。」エファトの声は、普段の冷静さとは裏腹に、少しだけ緊張を孕んでいた。「お前が全力を出すのはいい。しかし、まだこの戦いには時間が必要だ。」
ロイはエファトを振り返り、その目を見つめた。「でも、あのままでは…」
「確かに、ダルクの力は強大だ。しかし、今のお前なら、まだ十分に対抗できる。」エファトは静かに答えた。「お前はその力をただ解き放つのではなく、収束させ、相手に打撃を与えることができる。力を制御できることが、決定的な差になる。」
ロイはエファトの言葉に一瞬迷いを見せたが、その瞳が決意を固めた。「分かった。」
再び、ロイは深く息を吸い込み、周囲に渦巻く黒月の力を制御し始めた。今度は暴走せず、全力でそれを引き寄せ、ダルクに向けて放つ準備を整えた。
「これで、終わりだ!」ロイは一気に力を解き放った。
そのエネルギーは、今までの攻撃とは比べ物にならないほど強烈で、黒月の力を圧倒的に打ち消すものだった。ダルクが顔を歪めてその力に耐えようとするが、すでに彼の力はロイの圧倒的な勢いに押されていた。
「うおおおおお!」ロイはそのまま力を強め、ダルクの黒月の力を完全に飲み込んだ。
最後に、ダルクの体がゆっくりと崩れ落ち、力を失って地面に倒れた。
「……終わったのか。」カイルが静かに言い、その後をリリィも続けた。「やったな、ロイ。」
だが、ロイはまだその場で息を整えながら、慎重に周囲を確認していた。彼の力が暴走しないようにするためには、まだ少し時間がかかる。
そのとき、エファトが静かに言った。「ロイ、お前はまだ成長の途中だ。だが、この戦いを乗り越えたことで、確実にその力を制御できるようになった。」
ロイは頷き、そしてエファトを見上げた。「ありがとう、エファト。お前のおかげで、冷静になれた。」
エファトは少し微笑んだ。「それが俺の役目だ。さあ、次はどうする?」
ロイは一度だけ、深呼吸をした後に答えた。「次は、あいつを……完全に倒す。」
その先に待ち受けるものが何であれ、ロイはすでにその決意を固めていた。




