最強の敵
ロイは深い呼吸をした。新たに手に入れた力を実感するように、自分の内側を探る。呪装適応の力が、まるで自分の一部となったかのように、体内で動き回っている感覚があった。黒月の力を逆手に取ることができる今、ロイは確かに強くなった。
「さあ、行くぞ。」カイルが笑顔を浮かべて言った。「もう後戻りはできないんだからな。」
「俺が先に行く。」ロイは目を見開き、視線を前に向けた。「絶対に黒月を復活させる連中を止めて、完全に封じ込めてみせる。」
「その意気だ!」リリィが頷き、弓を手に取る。
エファトは無言で二人の後ろに立ち、長く伸びた影のように静かに歩みを進める。その姿勢には、確かな自信と覚悟が感じられる。
「だが、慎重に行動しろ。」エファトが淡々と言う。「敵はお前が思っているよりも強い。」
その言葉に、ロイは力強く頷いた。
「わかってる。今回は、何としてでも勝つ。」
―――
ロイたちは、黒月を復活させようとしている者たちの拠点があるとされる地域へと足を進めていた。エファトの情報によれば、その拠点は極めて厳重に守られており、数多くの魔物や呪詛で守られている場所だった。
「かなりの数だな…」カイルが周囲を警戒しながら呟く。「これ、かなりヤバいことになりそうだ。」
「だが、今は俺たちの力がある。」ロイは力強く言った。「封印を完全に終わらせるために、俺たちがやらなきゃいけない。」
その言葉を聞いたエファトが振り返り、静かに口を開いた。
「ロイ、君の力が成長したのは間違いない。だが、試練の中で最も重要なのは、覚悟だ。君が黒月の力を扱えるようになったとしても、それを使う覚悟があるかどうかが試される。」
「覚悟か…」
ロイはその言葉を胸に刻み、改めて自分の中で覚悟を固めた。彼が向かう先には、これまでの戦いを遥かに上回る強敵が待っていることは明白だ。
―――
拠点が見えてきた。
それは、かつての神殿の廃墟のような場所で、全体を覆う暗雲が空を覆っていた。その中心には、巨大な石造りの祭壇が立っており、そこから異常な力が放たれているのが感じ取れる。
「ここだ。」エファトが冷徹な眼差しを向ける。
ロイはその瞬間、再び黒月の力を感じ取る。強大な力が、まるで引き寄せられるように自分の中に流れ込んでくるのを感じた。それは、今まで感じたことのない圧倒的な存在感だ。
「準備はいいか?」ロイは振り返り、仲間たちを確認した。
「もちろん。」カイルが一歩前に出て言う。「今更引き返すわけないだろ。」
「私も準備完了。」リリィが弓を握りしめ、視線を真剣に前方に向けた。
ロイは深く息を吸い込み、力を高める。
「それじゃあ、行くぞ!」
ロイが一歩踏み出すと、エファトがその背を見守るように立っていた。その目の奥に、確かな意志と覚悟が宿っている。
その時、祭壇から無数の黒い影が浮かび上がり、ロイたちに向かって迫ってきた。これまで見たこともないような魔物たちが、言葉では表せないほどの圧倒的な存在感を放ちながら現れたのだ。
「来たか…!」ロイは刀を握りしめ、駆け出した。「覚悟を決めろ、みんな!」
その瞬間、黒月の力が暴走を始め、周囲の空間が歪み始めた。大地が震え、空が裂けるような音を立てて崩れていく。
エファトは、無言で振るった不老剣が魔物たちを切り裂き、次々と倒していく。しかし、その数はあまりにも多く、そして強力だった。
「くっ…!」ロイは呪装適応の力を使い、黒月の力を引き寄せながらその場に立ち向かう。力の流れを感じ、力をコントロールしようとするが、その力は次第に暴走し始める。
「やばい、制御が効かない…!」ロイは焦る。
エファトがその瞬間、ロイに声をかけた。
「力を抑えるな。逆にその力を解き放て。」
「え?」
「お前は、黒月の力を封じるためにその力を引き出すんだ。」エファトの言葉は冷徹だが、力強かった。
「行け、ロイ!」
ロイは深く息を吸い込むと、自分の中にある黒月の力をすべて引き出し、解き放った。
その瞬間、ロイの周りに漆黒の波動が広がり、周囲の魔物たちが次々と崩れ落ちていった。だが、その力の先に現れたのは、黒月を復活させようとする者たちの姿だった。
「ついに現れたな。」その一人がにやりと笑い、冷徹な目でロイを見据える。
ロイは、その眼差しを見返しながら言った。
「お前たちが、この世界を滅ぼす前に、俺が必ず止めてやる!」




