最後の試練
黒月の力を封じ込めた後も、ロイたちの心は晴れなかった。封印されたとはいえ、黒月の存在が残した痕跡が、世界のどこかで依然として膨れ上がっているような気配を感じさせた。
ロイはまだ、黒月を倒した満足感に浸る余裕がなかった。エファトの言葉が耳の奥で響き続けている。
「まだ何かが残っている。」
その一言がロイの心に重くのしかかっていた。黒月の力が封じられたことに対する安堵感と、それが完全な解決策ではないという事実が混ざり合い、彼は心の中で疑念を拭い去ることができなかった。
「ロイ、元気出せよ。」カイルがロイに声をかけ、軽く肩を叩いた。
「みんな無事だし、次に進まなきゃ。ここで立ち止まるわけにはいかない。」
「そうだな、でも俺…なんか嫌な感じがして。」
ロイの目は遠くを見つめたままだった。リリィもその様子を見て、少し沈んだ表情で言う。
「でも、もう一度調べてみないといけないんだろうな。黒月の力が残っているなら、完全に封じる方法を探さないと。」
エファトが、二人の会話を静かに聞きながら口を開いた。
「それだけでは終わらない。黒月の力は、あまりにも古くて深い。封印されたからと言って、完全に消えたわけではない。封印を維持するためには、次なる試練を乗り越えなければならない。」
その言葉が放たれると、ロイたちは一瞬言葉を失った。
「試練…?」
ロイが尋ねると、エファトは静かに頷き、さらに続ける。
「黒月の本体は、ただの封印で完全に消えるわけではない。その力が目覚めるための準備を整えた者たちがいる。だから、我々の試練はまだ続いている。」
「まさか…」カイルが言葉を詰まらせる。「黒月を目覚めさせようとしている連中がいるってこと?」
エファトは冷静にその場を見渡すようにして言った。
「そうだ。黒月の力を解放しようとする者たちが裏で蠢いている。彼らの目的はただ一つ、黒月を復活させ、その力を操ろうとすることだ。」
ロイの心はざわつく。この戦いが終わったわけではなかった。新たな敵が、まだ見えないところで手を組んでいるのだ。
「それなら、まずはその連中を探し出さないと。」ロイは顔を上げ、目を鋭くした。「エファト、どうすればその連中のアジトを見つけられる?」
エファトは無言で一瞬空を見上げると、ようやく答えた。
「黒月の力を完全に封印するためには、その力を解放しようとしている者たちの本拠地に乗り込まない限り、終わらせることはできない。だが、すぐに行動を起こしても間に合わないかもしれない。力が足りない。」
その言葉を聞いて、ロイは自分の胸が強く震えるのを感じた。まだ力が足りない?それをどうにかしなければ、これから訪れる試練に立ち向かうことができない。ロイはその思いを胸に、強く頷いた。
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
「まずは訓練だ。お前の力をさらに引き出し、強化しなければならない。」エファトはロイの目を真っ直ぐに見つめ、言葉を続ける。「その呪装適応の力を…もっと上手く使えるように。」
ロイは少し黙って考え込み、そして決意を固めた。
「わかった。俺、もっと強くなる。」
その後、ロイはエファトとともに厳しい訓練を重ね始めた。黒月の力を吸い込むための能力を強化する方法を模索し、実践でその力を試しながら、少しずつその力を自分のものにしていった。
数日後、訓練を重ねる中で、ロイはついにひとつの突破口を見つけた。それは、呪装適応の力を使って、黒月の力を封じ込めるだけでなく、その力を取り込み、操る方法だった。
「これで…!」
ロイはその瞬間、完全に新たな力を感じ取った。呪いの力を、自分の体に取り込むことで、黒月の力を逆に自分の力として使いこなすことができるようになったのだ。
「すごいぞ、ロイ…!」
カイルも驚きの表情を浮かべながら言う。
「これで、少なくとも黒月の力に対抗できるかもしれないな。」
ロイは深呼吸をして、心を落ち着けた。
「ありがとう、みんな。これで黒月を完全に封じ込めるために、最後の試練に挑む準備が整った。」
エファトは静かに頷き、短く言った。
「だが、まだ本当の試練はこれからだ。黒月の力を復活させようとしている者たちは、ただの障害ではない。」
ロイはその言葉をしっかりと胸に刻みながら、次なる戦いに向けて歩き出す準備を整えていった。




