偽りの聖女と、神の声を聞く者
王都グランベルト。
その中心部に聳える大聖堂。
そこは“神の声を受け取る者”──《聖女》のみが入ることを許された、祝福の最上階層だった。
白金の柱。天蓋にきらめく光の聖印。
荘厳な光景の中、一人の少女が祈りを捧げていた。
その名は──ルミア・グレイスフィア。
王国に祝福を齎す、“唯一神の器”と称される現代の《聖女》。
だが、彼女の瞳には――ひどく冷めた色があった。
「……アグナスも、エルネストも敗れたそうね」
そう告げたルミアの言葉に、老神官が青ざめる。
「お、おそれながら、聖女様……相手は“呪装適応”の二重適合者。しかも妹の方が……“神経侵蝕値”の段階に達し……」
ルミアは微笑んだ。
「なら、切り捨てるまで。神にとって、“適応者”は異端。
全てを滅して、跡形もなく消し去るべきよ」
彼女の手が、光の装置に触れる。
《認証:聖女権限コード GZ-01》
《王家直属鎧:第三鎧・神罰のバルゼリオ 解放申請》
《対象:呪装適応者 ロイ=クロード》
《出撃予定時刻:二十四時》
老神官が震える。
「し、しかし第三鎧は……祝福ではなく、“聖罰”。制御のためには聖女様の“魂の一部”が……」
「構わないわ。これは“神の意思”なのだから」
その言葉に、装置が静かに点灯する。
まるで、“神そのもの”が答えたかのように――。
同時刻、《黒の楔》拠点・地下室。
リリィは、昏睡状態にあった。
呪装適応の反動か、因子が臨界値を超えて、意識が耐えられなかったのだ。
ロイは無言で見守っていた。
だが、彼の瞳には焦りも怒りもなかった。
代わりに、深く静かな決意だけが燃えていた。
リゼが言う。
「……第三鎧が動く。今度のは、“ただの祝福装備”じゃない。
あれは――“神罰装備”。神の意志を宿した、半生体装甲よ」
「神罰か」
ロイはつぶやく。
「ついに来たか、“神そのもの”と向き合うときが」
場面は再び王都。
ルミアは一人、聖堂の奥へと進んでいた。
その奥深くにある、決して誰にも触れさせてはならぬ《聖遺装》の間。
そして、そこに横たわる“骸”がある。
黒い翼を持ち、金の瞳で天を睨みつけたまま眠る、巨大な“何か”。
それは──
「神ではなく、神を創ったもの」。
ルミアはその骸に語りかける。
「あなたの“声”が、私を導いた。だから、私の魂を捧げるの」
《契約開始──神罰装備・バルゼリオ、聖女同調モード》
《対象ロックオン:呪装適応・第一適合者 ロイ=クロード》
装置が起動する。
次に世界に現れるのは、“神の刑罰”そのもの。
そしてその夜。
ロイは、昏睡するリリィの額に手を当てる。
「お前が覚醒してくれて、正直……安心した」
「でも、もう“俺だけの問題”じゃない」
彼はゆっくりと立ち上がる。
《呪装適応:戦闘領域・《黒環結界》 展開準備》
《迎撃対象:第三鎧 神罰装備・バルゼリオ》
《推定ランク:祝福特級+ 神性融合体》
「やろうか、“神の呪殺”を」
「神罰の戦場──バルゼリオ降臨」
大地が裂け、空が焦げる。神性融合装備が王都を出発。
一方、リリィの夢の中では、“神ではない存在”が語りかけていた。
神とは? 呪いとは? そして、選ばれし者とは――
物語は、ついに世界の真実へ。




