祝福なき者、呪われし運命の果てに
この世界に生まれたすべての人間は、生まれながらにして“選別”される。
祝福を受ける者と、受けられぬ者。
光に選ばれた者は「祝福装備」を纏い、英雄となる。
それ以外の者は……ただの“その他”だ。
「お前に、祝福は来なかった。ご愁傷様」
ロイ・クロードは、そんな“その他”の中でも、特に不遇な存在だった。
スキル:呪装適応。
その効果は――「呪われた装備を装備できるだけ」。
何の強化もなければ、戦闘力も皆無。
むしろ呪装具を装備すればするほど、ステータスはマイナスになっていく。
それはまさに、“絶望の証明”だった。
「下民は、祝福どころか呪いがお似合いだな」
「さっさと引退しろよ、デバフ人間」
「聖騎士団に喧嘩売って、どこの誰が庇ってくれるってんだ?」
世界を統べる祝福装備の聖騎士団。
彼らは選ばれし者たちであり、神の恩寵を受けた“特権階級”だ。
その輝きは、ロイのような庶民には絶対に届かない。
……そう、“届くはずがなかった”。
「ここが……〈深淵の祭壇〉か」
ロイは、長年探し続けていた伝説の遺跡へと辿り着いていた。
あらゆる祝福を拒絶し、呪われし者のみが通れる禁域。
そこには、最悪の呪装具が封じられていると伝えられていた。
彼の目の前に、それはあった。
黒い瘴気を放つ異形の鎧――《深淵王の黒鎧》。
《装備確認:深淵王の黒鎧(呪装具)》
効果:全ステータス -9999/魂結合(不可逆)/虚無因子増幅
装備者に通常の生命活動は推奨されません
「……どうせ祝福がないなら、呪いでいい」
そう呟き、ロイは鎧を装備した。
その瞬間、脳を焼き切るような痛みが彼を襲う。
身体が軋み、精神が崩れ、世界が反転する――
【警告:ステータスがマイナス限界を突破】
【システム異常:数値処理不能】
【スキル《呪装適応》が進化条件を満たしました】
次の瞬間、ロイの中に**“何か”が目覚めた。**
《スキル進化:呪装適応→呪装適応・超臨》
効果:マイナス値を正に反転/呪装具と完全融合/現実法則干渉
視界が開ける。
彼の手には漆黒の剣が生まれ、全身から虚無の力が溢れ出す。
装備の呪いが、逆に力となって彼を包み込んでいた。
「……これが、呪いの底か。いや、これは――最強だ」
だがその刹那、空が割れ、光が差し込む。
白銀の鎧を纏った騎士たちが、天より舞い降りた。
「確認。呪装者ロイ・クロード、特S級危険存在。即時討伐を開始する」
先頭にいたのは、かつての友――セルディア・アークリード。
王都最上級の祝福を授かった“聖騎士団長”にして、かつての同級生。
「……ロイ。呪いに堕ちたか」
「俺には、最初から祝福なんて来なかった。堕ちたんじゃない、初めからここにいたんだよ」
「ならば、裁きの光を受けてもらおう」
セルディアが構えたのは、神の祝福を受けた剣。
対するロイは、呪いを凝縮した黒剣を手に、静かに構えた。
光と闇。祝福と呪い。
相反する力が、ついに激突する――!
「祝福だけが力じゃない」
「呪われた俺が、お前ら全員を無双してやる」
こうして、世界の底辺からの“反逆”が始まる。