第7章:見えない罪は、描いて暴く
第7章:見えない罪は、描いて暴く
王都セリエ・ノース、政治ギルド裏口
「……この依頼、普通の討伐とはわけが違う」
ギルド本部の密談室に呼ばれた野々山隊。
依頼は非公開、内容はこうだ:
「王国南部管区の貴族、ザルド=レーン侯爵が領民から非合法に資産を巻き上げている。
だが証拠が消されている。公式捜査では動けない。
貴族会議の前までに、“本人の罪を確実に突きつける何か”を用意してほしい」
野々山の提案
「……ある」
英傑はそう言って、一枚の布で包んだ額縁を取り出した。
「波動絵画、“ラ・カール遺品”。魔力反応から実存と因果の歪みを投影する。
強い“後ろめたさ”を持った者にこれを贈れば……絵は真実を描く」
「そんなオカルト、信じるか?」
「オカルトかどうかは、見る奴が決めることだ。俺たちは“贈る”だけでいい」
シーン:ザルド=レーン邸、晩餐会
野々山隊は外交名目で侯爵邸の晩餐会に招かれる。
贈り物として持参したのが――波動絵画。
「これは、私どもの隊が最近手に入れた貴重な絵画です。“その人の歩みを映す”と言われている」
「ほう、芸術とはおもしろいものだな。飾ってやろう」
ザルドが笑いながら受け取る。
が――
絵の中の風景が、徐々に変わり始める。
平原の村が黒く塗りつぶされ、倒れる農民の姿。血に染まる倉庫。赤い帳簿と、ザルドの紋章。
「……なんだ、これは……?」
客人たちの間にざわめきが走る。
「侯爵様。どうかされましたか?」
「ふ、ふざけるな……こんなもの……ッ!」
ザルドが絵に手を伸ばすが、触れた瞬間――バチッ!
魔力がはじけ、彼の指先が焼ける。
「魔力拒絶反応。“因果に逆らう者”は拒まれる。それがこの絵の仕様です」
英傑が静かに言った。
逮捕と崩壊
その場にいた他の貴族・使者たちが一斉に動き出す。
「……今の絵、録画していた。王の補佐官へ報告する」
「ザルド侯、これは明白な証拠だ。調査の上、貴族会議に提訴する」
ザルド=レーンの顔は、青白くひきつっていた。
「わ、私ははめられたのだ!この異世界人がッ……!」
「“描かれたもの”は、あんたが抱えてたものだ。俺らはただ、見せただけ」
王国との信頼形成
後日、王国評議会より正式な通知がギルドへ届く。
「野々山隊の迅速かつ的確な政治的判断と行動は、王国の秩序維持に大きく貢献した。
よって、今後の政治関連依頼において“上級特命任務枠”への参加を許可する」
さらに――
王都にて野々山と王国補佐官の私的会談が行われる。
「君は、剣ではなく言葉と仕掛けで国を動かした。
……貴族どもはそれを恐れ、王はそれを重宝するだろう」
「恐れられるなら、悪くない」
「いずれ、“公の舞台”に立つことになる。覚悟しておけ」
英傑は答えなかった。だが、その目はまっすぐに前を見ていた。