第2章:リーダー就任、野々山英傑
第2章:リーダー就任、野々山英傑
「お前……読み書き、できんのか?」
そう言ったのは、盾を背負った女戦士・レサだった。
「できるけど……え、それ、珍しいの?」
「この国じゃな。ギルド試験だって“口頭面接”が基本だ。読み書きは貴族か、旅人くらいしかまともにやらん」
「マジか……」
書類を手に途方に暮れていた彼らに、英傑が一目置かれたのは、その時だった。
「じゃあ……君が読んでくれ。依頼内容と条件を」
元のリーダーが討伐任務で命を落とし、残された5人は途方に暮れていた。金の管理も、依頼の交渉も、誰にもできなかった。
そこにふらっと現れた異世界初心者、野々山英傑。
だが、英傑は“読めて”、“計算できて”、“指示もはっきりしてる”。
「……いや待て。俺、まだ旅初心者なんだけど」
「それでも今はお前が一番マシだ。正直、俺たち全員、頭より腕で生きてる連中だからな」
剣士・ケガガンは淡々と言った。口数少なめ。斬ってから考えるタイプ。
「読み書きはいい。お前、リーダーになれ」
パーティー内の空気が変わった。全員が、無言で英傑を見た。
「うーん……」
そこに、医療鞄を抱えた弓使いの女性が声を上げた。
「私もそう思う。あんた、悪くない目してる。名前は?」
「野々山英傑。日本出身。15歳」
「私は由美子。通訳兼、医療担当兼、経理係。……まあ、大変な役よ」
「え、由美子さん日本人!?」
「そう。あんたみたいなの、ちょこちょこ飛ばされてきてるのよ」
あっさり異世界の現実を突きつけてくる由美子に、英傑はちょっと安心した。
「この5人、なかなかにクセ強だけど……うまく扱えば、すごいチームになる」
パーティーメンバー:
野々山英傑:頭が回る。読み書きできる。地球人。
ケガガン(剣士):寡黙。超近接型。喧嘩には強いが話し合いは苦手。
レサ(盾):姉御肌。突っ込むが引き際は冷静。読み書きはできない。
ジューダ(魔法銃士):言葉少なめ。銃のスイッチで火水風土を切り替え。理解力はあるが理屈は苦手。
由美子(弓+医療+経理):日本人。実務能力高い。空気も読める。
オグデヘリ(斥候):身のこなしが異常。獣のような感覚。夜目も効くが言葉が不器用。
【小シーン】初仕事:罠だらけの遺跡
「ジューダ、前方に水気。火属性にスイッチ」
「カチッ……了解」
「オグデ、足元に注意しろ。怪しい石が2つある」
「……ここ、開け口。右側。トラップあり。見える」
「解除頼む。レサ、ケガガンは前を固めて。由美子、俺の横に」
「OK、リーダー」
少しずつ動き出す“野々山パーティー”。
異世界生まれ、異世界育ちの5人と、日本から来た少年ひとり。
言葉は通じる。でも価値観も、常識も違う。
だからこそ、異物であるリーダー・野々山が必要だった。