第19章:思想は火より速く燃える
第19章:思想は火より速く燃える
きっかけ:越境する言葉
王都の野々山式学校に、ある日見慣れない少年が入学する。
出身は隣国ベロセリア連邦。思想・言論・教育が完全に国家管理されている軍事政権国。
その少年が広めたのはこういう話だった。
「ム・センナには、“選べる社会”がある。
王様も、神様も、言ってこない。自分で考えて、動ける」
その言葉は密輸された教科書と共に、ベロセリア国内にじわじわと広がり始めた。
ベロセリア政府の反応
首都・ラステア。
国家元首ギヴォル大統領が、側近に命じる。
「野々山英傑。この男の思想は、“国家否定の火種”だ。
選択と自由は、秩序を破壊する。
“我が国民の思考”を汚染する前に、排除せよ。」
ベロセリアは公式声明を出す。
ム・センナ王国の教育制度は**「思想侵略」である**
野々山英傑は**「隣国干渉罪」**を犯している
ベロセリアの国境管理区に思想防壁軍を設置
密入国者を敵国のスパイとして処刑する法令発表
ム・センナ王国の動揺
王室、教会、市民が揺れる。
「戦争の口実にされたらどうする?」
「野々山が余計なことをしたのでは?」
「うちの子どもが密告されてベロセリアに拘束された!」
市民評議会、王室顧問会、教会穏健派からも圧がかかる。
英傑の決断:防衛線は“戦略”で引く
英傑は作戦本部で言った。
「敵が攻めてくるのは、“軍”じゃない。
言葉に恐れた国家そのものが、砲口を向けてくる。
でも俺は、“思想で広げた世界”を剣で閉じたくない」
英傑が打った“軍事以外の防衛線”
① 情報のシールド
伊佐木が展開:「野々山思想」を攻撃から守るメディア連合構築
世界各国に“思想の無害性と構造実績”をプロモーション
② 市民の防波堤
八雲美空が推進:「思想受信者=暴力の被害者ではなく、反論者」という教育
子どもたちが「対話での返答」を訓練し、思想に自信を持って守れるようになる
③ 経済同盟の布石
古牧紗南が外交官と接触:「野々山式経済」は他国でも効果があると証明
周辺国に**「英傑式インフラ」**を売り込む → ベロセリアが孤立する構図へ
④ “思想亡命者”の保護法制定
ユーセフ主導:ム・センナに逃れてくる者を守る国際法的根拠を創設
国家ではなく“人”を守る法が初めて誕生
ついに国境が動く
ベロセリア軍が国境付近で「思想越境」者を射殺。
これが国際問題化。
王国評議会、緊急宣言を発表:
「これは軍事ではなく、思想による侵略に対する防衛権の行使である。
野々山英傑を“構造防衛責任者”に任命し、
**“武力を使わずに国家を守る権限”**を与える」
英傑、全土に向けて言う
「俺の思想が広がって、誰かが殺されたなら、
それは“俺の責任”だ。
でも、俺はやめない。
誰もが逃げずに生きられる社会を、ここに作ると決めたからだ。
武器じゃない。“選択肢”で、俺は国を守る」