第18章:この国は、誰のものか
第18章:この国は、誰のものか
場所:王都旧議政殿「七光円堂」
王直属の評議殿。かつて国王と教主、貴族、軍の最高責任者が集まり国家方針を決めた、形式上は“国の頂点”。
王室代表:国王セルギウス三世
教会代表:教主代行ソル・ディ=アブディア
貴族代表:リグラス公爵
市民代表:野々山英傑
他に補佐官・司書官・記録官などが静かに見守る。
国王の発言
「野々山英傑。
貴君の改革が、民の知恵を高めたことは事実。
だが、それが“王命より強くなりつつある”こともまた事実だ。
貴君に問う。この国を、誰が導くべきだと考える?」
野々山、静かに答える
「導く、という発想自体がもう古い。
“指導者のための国”じゃなく、“選べる構造の集合体”として国を運用する時代に来てる」
「俺の理想は、“導かれる側に選択肢があること”だ。
だから俺は王にならないし、神にもならない。
“逃げずに選べる構造”だけを残したい。」
教会代表・ソルの発言
「英傑よ。お前の思想は、“信仰の代替物”として機能している。
では、魂は誰が導くのか? それすらも個人に任せるのか?」
英傑は頷いた。
「当たり前だろ。魂の行き先まで他人に決められたら、もう生きてる意味すら他人に握られてる」
リグラス公爵が割って入る
「だが、構造を組んだ者が最も強くなるのではないか?
つまりお前が“選択肢を操る神”になるだけだ!」
英傑は一歩前へ出る。
「だからこそ俺は、“自分の外にしか正義を置けない連中”が一番危険だと思ってる。
王、神、血筋、勅令――全部、“責任の外注”だろ?」
「俺は違う。
選ばれたくて作ってない。選びたいやつに、“道”を与えたいだけだ。」
結論:王の宣言
議場が静まる中、国王セルギウス三世が立ち上がる。
「……面白い。
私は今ここに、国王として明言する。
この国における“統治の定義”を、初めて民に委ねると。
貴君、野々山英傑を“構造設計官”とする。
法と教育、経済と情報の運用を担わせる。
王は“国家の象徴”として存在を保つ。
神は“魂の慰撫”に専念する。
国家とは何か――その問いに、“共存の答え”を持ってみせよ」
会議後、英傑の独白
人々が去った後、野々山はひとり立っていた。
「俺は戦って勝ったんじゃない。
ただ、“逃げなかった”だけだ。
誰かに従わず、でも誰も排除しないやり方で――
この国に、“選べる形”を残していく。」
第一期クライマックス完了
国家は変わり始めた。
英傑は“征服者”ではなく“設計者”として、この国の中枢に根を張った。
だがまだ――変えられていないものがある。