第15章:信仰ではなく、選択
第15章:信仰ではなく、選択
回想:中学時代、日本
図書室の窓際。英傑は、分厚い政治学の本を読みながら、ずっとひとりだった。
周りは「変な奴」と距離を取り、担任ですら気味悪がっていた。
でも、彼の中にだけはずっと“確信”があった。
「チャレンジすれば、楽になる。
覚悟を決めれば、選択肢が増える。
でも、逃げれば……全部が敵になる。世界そのものが、こっちを潰しにくる」
それは、じいちゃん――ミニ政党党首だった祖父が、死ぬ間際に語った一言がきっかけだった。
「動け。やってみろ。正論で負けても、やらなかった時よりマシだ」
現在:教会改革の誘い
王都郊外。教会本部の裏庭。
ソル=ディが静かに言う。
「君の構造思想。教育・経済・外交・記録。
あれはすでに**宗教と同じ“世界解釈体系”になっている。
それを“信仰の名でまとめるかどうか”**は、君次第だ」
「……信仰ってのは、世界をひとつの正解で塗りつぶすことだろ」
「いや、信仰とは、“何を信じるか”ではなく“信じるという態度”だ」
英傑は少し黙ってから言った。
「俺は、“正解”なんか作ってねぇよ。
ただ、“挑戦していい構造”を作ろうとしてるだけだ。
逃げないで選べる世界。
チャレンジするやつが、報われる設計図。それが“俺の思想”だ」
ソルの微笑
「それを“信仰”と呼ばないなら、君が名をつけろ。
だが覚えておけ――それにすがる者が増えたとき、君は否応なく“象徴”になる」
英傑は遠くを見た。
「……そのときは、その象徴から“逃げない”。
でも、俺は神にはならない。
選ばれたくて動いてるわけじゃない。
“逃げないやつ”が笑える場所を作るために、俺はやってる」
結論:信仰ではなく、信頼
英傑の思想は、信仰ではない。だが――
「この世界で、“挑戦する”という行為そのものを守りたい。
それを守る仕組みを作る。その設計者が俺だ」
信じろ、ではなく「選べ」
従え、ではなく「参加しろ」
救う、ではなく「踏み出せ」
それが、野々山英傑の“思想”だった。