第14章:信仰の名で殺される前に
第14章:信仰の名で殺される前に
場所:王都中央聖堂 裁定会議室
鐘が鳴る。
街に響く告知が、国中を揺らす。
「野々山英傑、及びその“魔導・異端結社(野々山隊)”に対し、
正統教会は異端審問の開始を宣言する!」
宣言したのは、教会内審問庁の頂点、“大異端裁定官”グローリア司祭。
「民を金で操り、記憶を改竄し、神の定めた秩序を歪めた。
これ以上の冒涜が、他にあるだろうか?」
教会派の貴族たちが一斉に野々山の処刑と隊の解体を求め始める。
英傑の回答:召喚・宗教構造内部者
野々山は静かに立ち上がった。
「一つだけ言う。“宗教とは、神を信じること”だろ?
だったら――“教団”が神を代弁する必要は、どこにある?」
異端裁定庁の空気が凍りつく。
英傑は手を上げ、召喚スクロールを展開する。
スキル発動:専門家召喚《Constructum Pro》
指定:某宗教 外事対策委員長
召喚者:ソル・ディ=アブディア
・元聖騎士団指揮官
・教団内政と外交を担当する“表の実行権者”
・教主の影武者的存在
・宗教信仰は厚いが、教団の腐敗には沈黙しない
・剣の腕も政治も一流、“聖なる実務屋”
現れた男は、銀の長髪を背に流し、礼装をまとっていた。
その瞳は静かに会場を一瞥し、言った。
「この召喚に応じたのは、信仰への侮辱を見逃さないためだ。
ただし――侮辱しているのは、野々山ではなく“君たちのほう”だ。」
裁判が逆転する
ソルが一歩前へ出る。
「審問庁の資料を確認した。“異端”の定義が、野々山隊の行動には一切当てはまらない。
さらに、教主閣下はかつて、“異世界来訪者に神の理が宿る可能性”を認めている」
大異端裁定官、青ざめる。
「それは……古い仮説で……」
「仮説を撤回したという記録はない。つまり、“野々山英傑は、神意の可能性を持つ者”」
一言で、審問室の重心が崩れた。
ソルの宣言
「この場での裁定権は、教主代理である私にある。
異端裁判は中止。審問庁の判断は、一時無効とする」
静まり返る会場で、英傑が静かに問う。
「なぜ、助ける?」
「君の敵は、“神”ではない。
それどころか、君の思想には――“信仰の余地”がある。
それだけで、動く価値がある」