表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/5

案内

「・・・すいませんね」


「い、いえ・・・ありがとうございます」


やっばい・・・思いっきり顔に出てたかも・・・・。


だって、だってだってだってだって・・・!


ほんっっっっとに美味しくないんだもん!


普通は粗末なもので・・・とか言ってもそれなりに美味しいものが出てくるじゃん!!地方の聞いたことのない魚とか山菜で作られた郷土料理みたいなのが出てくるじゃん!


なのに・・・。


なんなの、この噛んだ瞬間歯が欠けるかと思うほどカッ・・・チカチのパンと健康にいいとインフルエンサーが飲んでる白湯みたいなうっ・・・すいスープは!


でも・・・お腹減り過ぎてるから食べる・・・。


パンもスープでふやかせばなんとか食べられそうだし・・・


「貴族様の口にするような食べ物はここにはありませんので・・・それで我慢してください」


「あ、あの・・・」


お腹に物も入って、安心できる場所に来たことで気持ちがかなり落ち着いた私は、この世界のことについて聞いてみることにした。


「ここって・・・どこ・・・の国なのでしょうか?」


ここがカームという名前の村なのは聞いていたので、慌てて国と付け足すように後から単語を追加した。


「ここは・・・ファルムンド帝国ですが・・・なぜそのようなことを・・・?」


「あ、いえ・・・私は連れられていただけなので、自分がどこにいるのか、どこへ向かっているのかも知らず・・・」


ヤバい・・・咄嗟についたとしてはうまく言えた気がするけど、冷静に考えたら苦しすぎる言い訳だよね・・・自分がどこにいるのかもわからないって・・・。


「そう・・・ですか、貴族ことは良く分からないのですが、そのようなこともあるのですね」


あーっぶなぁ・・・セーーーフ。

そうだよね、貴族の偉い人の生活なんて普通の人には分からないか。

私だってSNSでただ普通の自撮りをあげただけのものが必ずバズっちゃうような人が普段どんな生活をしてるのかなんて、全然想像つかないもの。


「私、お金も元々持っていたものも、すべて無くしてしまったのですが・・・どうしましょう・・・」


この国は私のような人に補助金?とかで支援したりしてくれるかな?

せめてとりあえず雨風凌げる場所と、飲食に困らない程度は欲しいのだけれど・・・。


「どうしましょうと言われましても・・・とりあえず村長に相談してみてはいかがでしょうか?」


「村長?」


「はい」


そうしたら当面のお金か食べ物と最低限安全に寝泊まりできる空き家とかを紹介してもらえるのかな?


「分かりました、それでお願いします」


「では、参りましょう」


そうして私は先導してくれたタヘスさんの後を追い、部屋から出た。


扉を開けて見えてきた光景は、何というか・・・まるで映画のセットのようで、全然現実味がなかった。


土の地面に木材にもせず丸太をただ組み立てただけのログハウスのような家、そして土壁に草みたいなのをいっぱい乗せただけみたいな童話に出てきそうな家まである。

すべての人は麻みたいな茶色い服を着ているから、オシャレをしてスマホを鏡代わりに前髪を気にしているような人もいない。


ほんとに異世界なんだ・・・まだどこかの影からプラカードに「ドッキリ大成功」って書かれた人が出てこないか期待している自分もいるけど・・・タレントでもない一般人の私にこんな大規模でお金のかかりそうなことをしないよね・・・。


「どうしました?」


私が物珍しそうにキョロキョロしていて遅れたことでタヘスさんが声をかけてきた。


「いえ、少し景色が珍しくて・・・」


「ああ、大和と帝国では様式が全然違うという話ですものね。しかもここは田舎の寂れた村ですし、こういった建物は貴族様からしたら珍しいかもしれないですね」


そんなんじゃないんですけど、そういうことにしとこっと。

私がほんとは貴族じゃないなんて嘘が今更バレたらどうなるかわからないし・・・。


「こちらへ・・・」


「あ、はい」


タヘスさんにそのままついていくとすぐ、他の家と何ら変わらない一軒の家の前についた。なんならさっき見渡した時にも奥の方に見えていた家だ。

タヘスさんはその家の扉の前に立ち、ノックする。


「村長。さっき報告した女性を連れてきた。どうやら俺らの推測は合っていたようだ」


扉が開く前に話し始めるなんて、せっかちすぎない?

防音みたいな考えがないような家の造りだからこれでも屋内にも丸聞こえなんだろうけどね。


そしてすぐに村長の家の扉が開き、なかから初老の男の人が顔を覗かせた。


「ああ、その子が例の・・・」


村長らしき人は私のことを・・・特に服装をよく見ていた。

やっぱりこの服、珍しいよね。日本では当たり前のありふれたデザインだけど、こんな世界にそれがあるわけもないし・・・。


「ご苦労様タヘス。ささ・・・とりあえず中へどうぞ」






その言葉に私は家の中へと進む。


私を連れてきたタヘスさんはどうやら自分の仕事に戻るようで、一緒に村長宅の中まではついてこなかった。


門番の仕事って何をするんだろう・・・?

まぁ、門の番するのか・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ