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3話. 当たり前で普通な生活

どうも、ノウミと申します。

まだまだ作品数、話数としては少ないですが、これから皆様の元へ、面白かったと思って頂けるような作品を随時掲載していきますので、楽しみに読んでいただければと思います。

沢山の小説がある中で、沢山の面白い作品がある中で私の作品を読んでいただけた事を“読んでよかった”と思っていただける様にお届けします。


X(旧:Twitter)でも情報更新しています。

↓是非フォローください↓

https://x.com/noumi_20240308?s=21

意味もなく学校に来てしまった、理由が理由なので怒られる事は無かったが、それにしても家に引き返せば良かったと、自分でも思う。


生徒の一人すら見当たらない学校の中、完全に学校が終わって、生徒達が下校した後だった。

少しの希望を考え、晴香が待ってるかと思ったが見当たらない、流石にもう帰ってしまったのだろうか。


そうしていると神崎さんが歩いてくる、向こうもこちらに気がついたのか目線が合う。


「あら、今から登校かしら?余裕ね」


「はっ、ちげぇよ、晴香から聞いたんだろ?」


「バレた?」


「バレバレだよ……また残って勉強?」


「えっ?あ、あああそうよ、()()なの」


「頑張りますね、優等生様は」


「嫌味かしら?」


「褒めていますよ」


「ふふっ」


意外にも笑った顔は可愛い、クールな見た目とのギャップという奴だな。これに弱い男子も多いだろう。


「あ、電話折り返してあげた?」


「へ?あ!…見てない、忘れてた!」


そんな呆れた顔を俺に向けないでくれ、頭が回らなくなるほどに余裕がなかったのだ、仕方がないだろ。


スマホの画面を見ると、晴香と友成から着信が入っていた、少しだけ安心する。その場ですぐに電話をかけると、すぐに出た。

電話の向こうには、友成と長良さんもいるらしい、みんなでハンバーガーを食べているとの事なので、俺も直接向かう事にする。


神崎さんは塾があるようなので、来れないそうだ。


指定のお店に向かおうとしていると、遠くに愛染さんがいた、初めて面と向かったような気がする。


確かに晴香の言う通り、不思議な雰囲気がある。髪も黒かと思ったが翠も見えていた、その髪色も不思議な雰囲気の一つだろうと思う。愛染さんは、今まで出会った人の中で一番綺麗だと思う、それほどまでに整った容姿をしていた、肌も白く、スタイルもいい。

まさに“完璧”、という言葉が一番似合いそうな人だ。


「あの…愛染さんですか?」


「はい、今朝はどうもありがとうございました」


声もいいときた、妙に心を惹かれる声が耳に響く。

その声を聞いて思い出した、昨日の女性に似ていると。すれ違い様に言葉を置いていった、あの声に。


「とんでもないです!あれから大丈夫でしたか?」


「はい、おかげさまで」


「それは良かった……あの、こんな状況でなんですが、昨日会いました?」


「?いえ、初めてかと思いますが…」


どうやら違ったらしい、急に恥ずかしくなってきた。

これでは、変にナンパしようとしている雰囲気だ。


「あ、そうですか、何かすいません」


「いえいえ、大丈夫ですよ」


「良かったらこの後、どうですか?今日一緒にいた晴香…琴浪さんもいますよ」


「ごめんなさい、この後は用事が…」


「あ、そうでしたか…それは失礼」


「うふふっ、また誘ってください」


そう言いながら、愛染さんは去っていく去り際も綺麗な人だった。俺は完全にナンパに失敗した男になってしまった。穴があったら、さらに掘って全身を埋めたい。


残された俺はこの出来事を殺し、待ち合わせの場所へと向かう事にする。もう、思い出したくない。


待ち合わせは有名なハンバーガーチェーン店で、中は学生達で賑わっていた。同じような事を考えている人が多いらしい。


「おーい!誠、こっちこっち!」


友成に呼ばれてテーブルに向かう、三人はすでに食べ終わった後らしい。俺も飲み物だけ注文してくる。

メニュー表を見ていると、季節限定ドリンクが出ているようで、それにする。


席に着くと、今日の事について早速質問される。


「今日はえらい活躍だったらしいな?」


「何にもしてないよ」


「えぇ?ヒーローみたいだって聞いたぜ?」


「だぁー、何にもないって」


「にしては時間かかったっすね?」


「あぁ、警察と駅員さんに捕まってたの」


渋々、事が起こった経緯を説明する、これ以上の質問攻めは面倒くさい。

ひとしきりの説明を終えると、晴香と目があった。何か説明が足りていない事でもあったのだろうか。


「それで?()()()()()()()()()()()()?」


「え?なんで知ってるの?」


特に何もなかったが、思わず聞き返してしまった。

もしかして、ナンパみたいなやりとりになっていた事が、バレてしまったのだろうか。


「あ、帰る時に聞かれたから」


「校門で会って声かけられたぐらいだよ」


それ以上も、それ以下も何もない。あんな感じになったのだ、今後も会うことはないだろう。こっちから話しかけない以上、向こうから何か話しかけられる事も無いだろうから。


「あ!新良、ジュース頂戴っす!」


「あ、馬鹿お前!」


俺の制止も振り切り、長良がストローに口をつける。ようやく取り返した俺は、思いっきり頭を叩く。

なぜなら、中身が全部飲み干されていたからだ。


「おまっ、俺ちょっとしか飲んでねぇぞ!」


()()()()()()()()()()()()()()


「お前、幸せそうな顔しやがって……」


友成と晴香がこちらを見ていた。

やり過ぎたのか、()()()()()()ような気がする。

まぁ、頭を叩いた時の音も大きかったからな。


長良は頭をさすりながら、喜んでいる。でもその気持ちはわかる、この飲み物は美味しかっただろうさ。

俺は全部飲みたかったんだぞ、と心の中で叫ぶ。


「あっ!そういえば俺のクラスどこ、先生から晴香に聞けって言われたんだけど」


そう言うと、全員がこっちを見てニヤついている。

もしかして俺だけ違うクラスとか、それは最後の高校生活が楽しく無くなるぞ。


「な、なんだよ…」


「なんと、全員同じクラスでーす!!」


「おぉ!マジか!」


「そうっすよ〜ちなみに咲良もっす」


「また今年もよろしくな!誠!」


最後の年に全員が一緒になるとは。これからの行事ごとが、一層楽しみになる。これなら、最後の高校生活になるとしては、問題なく最高の思い出になるだろう。


そうして、これからやりたい事などを楽しく話した、時間の事をすっかり忘れるほどに。

気がつくと、外が暗くなり始めたので解散する事にする、また明日も会えるのだから。


お店の前で皆と別れる。晴香とは家が隣なので、一緒に帰る事にする。これもまた、いつもの日常だ。


「今日は朝から大忙しだったね〜」


「そうだな、あんな事はもうこりごりだ」


「愛染さんみたいに、綺麗な人を助けたのに?」


「関係ないって、たまたまだよ」


「じゃあ〜私でも助けてくれた?」


「もちろん助けるよ」


そう答えると、晴香が嬉しそうにスキップしている。

それを見てるだけで俺も嬉しくなる、勿論何があっても助けると、心から思えるからだ。



「ごきげんよう」



二人で自宅近くの駅から降り、家までの道を歩いていると、後ろから声をかけられたので振り返る。

俺は驚いた、聞き覚えのあった声は愛染さんだった。


「びっくりした、こんばんは」


「あ!愛染さんだ!やほ!」


「お二人は今お帰りかしら?」


「あぁ、この近くでさ、家が隣同士なんだよ」


「仲が良さそうね、幼馴染なのかしら?」


「そうだよ〜産まれた時からだね〜」


「腐れ縁ですよ」


「なにそれ〜」


ふくれっ面を浮かべながらこちらを見ている。そんな俺と晴香のやりとりを見て、愛染さんが笑っていた。

ちょっとだけ恥ずかしくなる、そんなに可笑しい事をしていただろうか?


「愛染さんも帰りですか?」


「ええ、私もこの近くなの」


「ねぇねぇ、愛染さんも同じクラスだよ」


「あ、そうなんですか?」


「はい、これから一年よろしくお願いします」


とても綺麗なお辞儀をする。動作の一つ一つが、洗練されていると感じる。どこかのお嬢様なのだろうか。

そう思えるほどに、気品もあり、纏っている雰囲気も不思議なものだった。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


もう話すことはないと思っていた、まさかクラスまで同じになるとは。愛染さんとも、これから一年過ごす事になるのだろう。


「それでは、また明日」


「はい、また明日」


「ばいば〜い」


そうして、愛染さんと別れる。

俺たちとは逆の方に歩いて行くので、たまたま見かけて声をかけてくれたのだろうか。良い人だな。


「愛染さん綺麗だね〜つい見惚れちゃうよ」


「そうか?綺麗だとは思うが…」


どこか寄せ付けない雰囲気が、少し苦手にも感じる綺麗だとは思うがそれだけだ。

それ以上の感情が芽生える事はない。


「あっ〜!やっぱり見惚れてたんでしょ!」


「ちげぇよ、別に何にもないよ」


「ふ〜ん、こんなに可愛い幼馴染がいるのに…」


「知ってるよ」


「ほぇっ?」


暗がりでも分かるぐらい、晴香の顔が赤くなっていた、少しおどけた表情が可愛いと思う。


「ほら、帰るぞ」


「あ、待って〜!」


晴香と帰り、挨拶を交わしながら家の前で別れる。俺の家へと歩き扉の鍵を開ける。家に入るため、扉を開けようとノブに手をかけると、後ろらから誰かに抱きつかれた。


どうせ晴香がからかいにきたのだろうと、振り返る。


「おい、何だはる……」


そこにいたのは、先ほど別れた愛染さんだった。俺に後ろから抱きついてきていた、ここにいる事もそうだかなぜ抱きついて!?


「えっ?愛染さん!?」


「へへっ、もう一回お礼が言いたくて来ちゃった」



そう言いながら、頬にキスをした。



俺には、何が起こったのか理解できなかった。


「えっ…」


「これもお礼だよ…改めて一年間よろしくね」


頬が熱くなっている気がする。いや、手を当てるが、気のせいじゃないく熱い。呆然とする俺を置いて、そう告げながら、愛染さんは帰っていく。


一人取り残され何もわからないまま立ちすくむ。


「えぇーっ……なにそれ………」


しばらくして家に入る、中に入っても頬の熱は冷めなかった、ずっと熱が残っている気がする。玄関でしゃがみ込み、心を落ち着かせる。先ほどから煩いぐらいに鳴り止まないから。


でもこの心臓の止め方を、俺は知らない。時間に任せるしかない。


落ち着いて来たら、自分の部屋に上がる。


今日のことは忘れよう、単なるお礼と言っていたのだから、そう自分に言い聞かせ着替えを済ます。

向こうは何も思ってないさ、初対面なんだし、愛染さんなりのお礼のつもりなんだろう。



そう思う事にし。リビングに降りる。そこには、()()()()()一人分の食事が待っていた。母は深夜までパートに働きに出ており、父は日付が変わるまで残業だ。我が家が顔を揃えるのは、朝の時間だけ。


これが俺にとっては、普通の日常。


そうして、明日からも、変わらない普通の日々がやってくる。それでいい、そうして普通の学生生活を楽しむ。卒業したら普通に就職して普通に暮らす、ゆくゆくは普通に結婚して、普通に死んでいく。



そんな当たり前で、普通の生活を送りたい。



普通の恋だってしてみたい。



まだ好きな人はいないけど、そんな人が現れたなら。




ただ、俺に普通の高校生活は訪れなかったー

第3話ご完読ありがとうございます!


ここまでは、普通の青春恋愛物語です。

ここからです…ここから…

普通のようで、普通でない物語が始まります。


また次話でお会いしましょう(^^)

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