トライアングルレッスン〜続・ゆいこが転生したら〇〇だった件〜余命半年編
ヨメイハントシデス…
17歳の今のワタシ、せめて健康な体に生まれたかった。
名医のひろし先生に出会ってワタシはこの世界に転生している事に気がついた。
先生の年齢はずっと上だったけど雰囲気が幼馴染のヒロシに似ていたのである。
余命半年の宣告をされ、あと残り僅かで半年が経とうとしている。
病室の窓の外に目をやるとつぼみをいくつかつけている桜をみつけた。
せめて桜が咲くまで生きる事が出来たらいいのにな…
そんな事を考えながら朝食を食べ終えた。
「ゆいこちゃん
調子どう?」
かつての幼馴染“タクミ”に似ている
新米看護師のたくみさんが今日の当番のようだ。
「今日は調子いいですよ、いつもよりご飯美味しかった…です。」
「それは良かった。うん、熱もないね。何かあったらすぐ呼んでね。」
ワタシの目を真っ直ぐ見て言うので緊張してしまう…タクミに似ているせいだけではない事に気づいてから毎回そうだ。
気の利いた返す言葉も浮かばず…軽く頷く。
よしよしと頭を撫でられ
さらに緊張が走り
心臓の鼓動が抑えきれない。
繋がれた心電図の音で気づかれ
ごめんねと抱き寄せられた。
「体に負担がかかることをボクは知っているのに
ボクに興味が無いこともわかってるのに…
でも、先生が、ひろし先生が居ないから
今しかないと思って
身勝手なボクを許して…
ゆいこちゃん、好きだよ。」
ボソボソとワタシの耳元からカラダの中に入ってくる言葉の数々…
興味がないフリしてただけだよ、だってワタシ…
答えに困って続く沈黙
たくみさんのぬくもりを痛いほど感じる。
心電図の音だけが響く。
「ワタシそんなに長いこと生きられないし…しかも…」
ずっと我慢していた言葉を口にした時、涙が止まらなくなった。
さらにたくみさんが強くワタシを抱きしめた。
「…最後にボクのこと好きになってもらえませんか?」
健康な体だったらこんな出会いも恋も出来なかっただろう。
残りの日々を嘆いているよりも残りの日々をどう生きるかが大切だった。
命が続く限り“ありがとう”を何度も伝えた。
最後にたくみさんに無理を言って満開の桜の木の下に連れて来てもらった。
来年はもう一緒には見られないから。
たくみさんが押してくれた車イスの中でワタシは静かに瞼を閉じた。
これで元のユイコに戻れるかもしれないと淡い期待をしながら…。
悲しい物語になってしまいました。
ひろし先生に会って、記憶がよみがえる…
前世の記憶を持ったまま“好きな人に似ている人”に
告白されるってどうなんだろうって
そこだけ切り取ってみた内容でした。
ご拝読ありがとうございました。