アイツらと来た日にゃー
某作家様の作品に感想しているときに思いつきました。
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アイツらと来た日にゃー
粒々を数えるのに、モルなんて使いやがる
1個2個...10の23乗個って数えりゃ
換算しないで済むし
第一、迫力満点の数だとわかる
気体定数じゃなくて
ボルツマン定数のほうが基本的な物理定数だ
と物理学者はいう
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アイツらと来た日にゃー
分子を数えるのに、一粒一粒数えたがる
マイクロモル、ミリモル、モルって数えりゃ
身近な数字だし
実験するにも実用的だ
アイツらだって
磁気がガウスかテスラかはっきりしやがれ
と化学者はいう
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アイツらときた日にゃー
ものをつくるのに、親水だの疏水だの言い訳しやがる
ベンゼン環になんちゃらブチル基だかをつけりゃ
嵩高くて疏水性で云々
誘電率もそのままだという
そのなんとか基をつけると
キロ単価が桁で跳ね上がるなんて
と電気設計者はいう
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アイツらときた日にゃー
ものをつくるのに、側鎖の修飾がいかに大変か知らない
このベンゼン環にターシャルブチル基をつけるには
クロスカップリングが有効で
油に馴染んで誘電率はそのままだ
彼らの必要なのが
キログラム単位だったんなら最初に言ってくれ
と化学者はいう
私が苦労してつくった物質を
誘電率の一言で済ますのはやめてくれ
と化学者は叫ぶ
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アイツらときた日にゃー
電気動作だけを考えてたんじゃなかったんだ
バージョンアップしたプリント基板を世に送り出すには
安全で長持ちが絶対に重要で
需要予測やコストを考えていたんだ
アイツらは化学者を
頼りにしてくれてたんだ
と設計者に感謝する
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アイツらときた日にゃー
ただフラスコ振ってたんじゃないんだ
猫の目のように変わる私たちの要求を先取りして
日々地道にデータを蓄えて
いろいろな要求に応える準備をしてたんだ
アイツらは設計者の
無邪気な頼みを聞いてくれてたんだ
と化学者に感謝する
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こうして、互いの境界がなくなり、
世の中が広がることを祈るばかりである
と著者は希望する
お読みいただきありがとうございました。
なんか、まだ書けそうな気がします。
でも、どんなことでもあることですね。
以下注釈です。
注1: モル
ある粒子、例えば、原子や分子、の個数の単位です。1ダースが12個のように、1モルは、6.02×10^23個です。6.02×10^23個をアボガドロ数といいます。
その物質の分子量の数字にグラムをつけた質量に含まれる分子の数であることに由来します。物質が原子や分子からできていることが定かでなかった時代から使われています。原子や分子の存在がわかった今では、個数で数えたほうが、より基本的です。しかし、モルの概念自体が、原子や分子に気がつくのに重要であり、実用上も便利です。(いちいち3.5かける10の21乗とかいうとかえって面倒)。
注2: ガウスかテスラ
磁束密度の単位です。1テスラ(T)=10000ガウス(G)です。
注3: 親水だの疏水
水と油のどちらと相性がよいかに関する定性的な言い方です。
注4: ターシャルブチル基
ブチル基は炭素数4の飽和炭化水素です。ターシャルブチル基はt-Buとも略される-C(CH3)3です。一方ノルマルブチル基、n-Buは、-CH2CH2CH2CH3です。どちらもCとHの数は同じです。t-Buが、一番左のCから3つのCH3に枝分かれ分岐するのに対して、n-Buは Cが左から右に直鎖状に並んでいます。この化学的な違いは大きいです。これらは、分子の疏水化に有効です。
注5: クロスカップリング
炭素と炭素を人工的に直接結合させる化学合成法です。特に、ベンゼン環を直接に結合した分子を合成できます。液晶材料や発光材料の合成に使われます。薬剤の合成にも使われます。この方法の開発で日本人二人がノーベル賞受賞しています。*ベンゼン環がつながる複素環などから、特定の場所をブロムBrまたはボロン酸で置換できれば、パラジウム触媒下で、その場所だけをターシャルブチルで置換できます。他にも、ターシャルブチル基をベンゼン環に置換する反応には、Friedel-Crafts反応などがあります。ここでは、何やら複雑な分子の合成してることにしました。
注6: 誘電率
物質に電圧を印加すると、物質内の電荷は電界の方向に少しだけずれます。原子は、分子内で多少プラスかマイナスのどちらかに荷電しているので、原子位置が少しずれます。また、分子内の電子の波動も微妙にずれます。これにより、電気が「誘電」されます。
以上、さらにありがとうございました。