~超能力囲碁ファンタジーここに始まる~
五月三十一日の放課後まで。
生徒会から届いたペラ一枚の印刷用紙の文末には、迎えたばかりの五月の最終日を示されていた。ここが大切ですよと言わんばかりにピンクのラインが引かれ、その日付はそれを受け取った側の注目を集めていた。
それが何の期限を示しているのか、彼らはスッと視線を上に上げる。もう一本ラインが引かれていた。たったの二文字だけにそのマーカーは引かれていた。
廃部。
つまり、その通知が示す内容というのはこうだ。
『あなた方の部活は残念ながら、五月の最後の日をもって廃部となります』
実に分かりやすい。これ以上分かりやすい文書は他にないだろう。
しかしながら、ただそれだけの内容ではなかった。そうであったならば、印刷用紙を一枚使わずともよいのだから。
その内容と言うのは。
『ただし、それまでに後二人。つまりあなた方の部活の部員が五名以上となれば、認めましょう。あなた方が<囲碁部>としてこの学校の部活動を行うことを』
そう言う点ではまだ話の分かる役員たちで助かったというべきだ。
<囲碁部>は問答無用に廃部に追いやられることなく、たったの二人部員を集めるだけで生き残ることができる。
「なんだ驚かすんじゃないよ、生徒会ごときが」というのは囲碁部顧問の女教師だ。
「二人くらい余裕ですよね、先生」というのが囲碁部の部長。
「終わったわ。後は天に運を任せるしかない……」とうなだれる囲碁部の副部長。
「あれ、五月って三十日までだったような……」いち、にいと数え始めるアホの子。
三者三様ならぬ、四者四様の姿がそこにはあった。
部員三名とその顧問の教師は、「囲碁部」とプレートのかかった部室棟の一室でその紙を覗き込んでいた。