4/4『写真の中の幸せ』
「あ」
部屋の片づけをしていて、古い写真を見つけた。若い私と、隣に初めてのカレシ。
いまはただ【懐かしい】という感情しかない。
そんな風になれたんだなぁ。なんてしみじみしてしまう。
テレビなんかで『元カノの写真取っておくとか信じられない!』みたいなエピソードトーク聞くと、私はむしろ男性側の気持ちになってた。
思い出なんだし、捨てられない過去だって色々あるじゃん。個人の自由じゃんって。
そんであれもよくわかんない。趣味の物が幅きかせてるから勝手に捨てた、みたいの。
なに人の物勝手に捨ててんだよ、あんたが同じことやられたらムカつくでしょ、って思う。
反論されても面倒だから誰かに言ったことはないけど、賛同してくれる女性、もしかして少ないかなー。真偽のほどは定かじゃないけど、ちょっとだけ異端児な気持ち。
さて、この写真、どうしようかな。
未練があるわけじゃないけど、捨てるのはなんか……うーん。でも彼に見つかってなんか言われてもなぁ……うーん。
世の中の男性も、こんな風に悩んでるのかな。彼は……どうだろう。
どちらかというと彼のほうがセンシティブというか、ヤキモチ焼くのも拗ねるのも彼のほう。一般的な“男女の性質”が逆転しているような私たちだから、上手く行ってるのかも。
元カレはこう、【亭主関白】というか自我が強いというか、支配欲が強かったように思う。負けん気な私はそれらに従えなくて反発して、結局別れてしまったのだけど……いまはそれで良かったって思える。
あの経験がなかったら、彼に会えてなかっただろうから。
その時は【悪いこと】としか思えなくても、いつか【いいこと】って思える日が来るんだなぁ。って気づいたとき、大人の階段とやらを一段あがれた気がする。
実際大人になれてるかどうかはわかんないけど。
「お」
テーブルの上に置いたスマホが鳴った。彼からだ。
「はい。……うん、そうだね。七割終わってるかな。……いいよ、そっちはそっちで疲れてるでしょ。……うん。……まぁ……そうだね。…………はい、わかった。勝手に鍵開けて入ってきていいから。……うん。待ってる。じゃあね。はーい」
通話を終えて、顔がほころんでいることに気づく。うん、好きだよね。だから結婚するんだもん。
好きだけじゃやっていけないときもあると思うけど、それでも好きじゃなきゃ一緒に生きていけない。
元カレとの写真を思い出ボックスに封印して、彼が来る前に梱包した。
この写真よりももっと幸せそうに笑う私と、旦那様(彼)との思い出を重ねていけばいいなって思いつつ、頭の片隅であの頃の回想が始まっていた。
現実と記憶の狭間に漂いながら荷造りをして、元カレとの思い出の品と一緒に記憶も箱詰めした。新しい家のどこかに箱のまま入れて、折りを見て処分しようかな、なんて画策。
ちょうどよく鳴ったチャイムで一区切りつけて、新しい生活のための一歩を踏み出した。




