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3/24『踊りを忘れえぬ雀』

 マネキンとか、人体模型とかが“動く”って良く言われてるけど実際見たことないなー、って考えながらウィンドウショッピングをする。

 これが動くって関節とかどうなってんの。あ、でもこのタイプは球体人形だから動きやすそう。こっちの人は固定されてるっぽい。これは胴体だけだ。

 やっぱ動きやすさで動くかどうか決まってるのかな。

 そもそも魂って入ってるんだろうか。魂だけの存在が身体として使ってるんだろうか。

 うーん、謎。

 なんて思いながら街を一巡り。

 目当てのものを見つけて購入して帰宅。

 お風呂に入ってもご飯を食べても、眠る前までも動く人形のことを考えてしまう。なぜだ。

 取り憑かれちゃったかなぁって考えながらウトウトしてたら、昼間歩いた街の風景が脳内に再生されていた……。


 ……なんだろう、暗いな。

 まぶたは開いているのに周囲が暗い。そういえば電気を消して眠ったっけ。なのに身体は立っている。

 なんだか全身筋肉痛になったみたいに動きづらくて、それでも力いっぱい腕を動かし目の前に持ってきたら、手が全部球体関節になってた。

 これって昼間みたマネキンでは?

 どうも首には関節がないみたいで動かなくて、力いっぱい腰をかがめる。やっぱりそうだ、このワンピース、可愛くてほしかったけどお値段が見合わなくて諦めたやつ。

 わー、ホントにマネキンに宿っちゃった。夜で街に誰もいないみたいだから、ちょっと歩いてみたいな。

 とはいえここはショーケースの中。どうやって外に出よう。ディスプレイするのに人が出入りするだろうから、どこかに出入口が……あった。長方形の短辺にあたる壁にドア。内カギは手で開けられるみたい。

 動かしにくい指を器用に操作して鍵を開け、ノブを両手で掴んで押したら開いた。

 夜のデパート内、もしかして出入口って全部閉まってる? いや、全部閉めた後に帰ってる人もいるはずだ! と探して、従業者出入口を見つけた。これも内カギは手で開けられるやつ。

 カチャリと回して外に出た。

 動かしにくい身体にだんだん慣れてきて、普通にしてるときとあまり変わらない感じで歩ける。

 さっきまで入ってたショーウィンドウを見ると、中から一体マネキンが消えて、ガラス面に映ってる。うわ、こわ。これ見た人いたらホラーだなぁ。

 意識の中では表情が変わってるのに、プリントされた顔はおすましのまま。

 そうか、マネキンってこんな感じで動くんだ。

 初めての体験に心が躍る。マネキンは中身が空洞なのか、とっても軽やか。普段はできない側転やたバク転やらが軽々できちゃう。

 軽い身体サイコー!

 って思ってたら、遠くから光が射した。やばい、車が来る。

 こんな夜更けにマネキンが動いてるの見たら、運転手さんめっちゃ怖いじゃん!

 って慌てて、いや、夢なんだから別にそんなん気にしなくても、と思い直す。でもやっぱなんか焦って、なるべく視界に入らないようにと歩道に寝転んだ。

 ヘッドライトがだんだん強みを増して、横の道路をトラックが走り去った。運転席が高いところにあるから、見つかりはしなかったみたい。

 ホッと息をついて起きあがろうとするけど身体が動かない。

 ないはずの瞼が重くなって、夢の中で眠りについた。


 翌朝、楽しい夢だったなーって思い返しながらニュースを見て、歯みがきする手が止まる。

 昨日“夢の中”で私が動かしていたマネキンが画面に映ってる。

 道路に放置されてたって。

 聞こえなくて気づかなかったけど、どうやらデパートの通用口はセキュリティを解除しないでドアを開けると警備会社に通報が行く仕掛けになっているらしく、私が内側から開けたドアを感知して通知が行っていたそうな。

 かけつけた警備員が通用口とショーウィンドウのドアが開錠されてるのを見つけて、侵入者があったかと探したが見つからない。

 多分、監視カメラにはマネキンが動いてたの映ってたと思うけど、さすがにニュースでは言われなかった。怖すぎるし、フェイクニュースだと思われるからだろうと推測する。

 ……現実だったんだ……。

 奇跡のような出来事に、何故だか背筋が寒くなる。

 もしあのままトラックにぶつかってたり、眠らずにマネキンのままいたらどうなってたんだろうって。

好奇心に任せてなんでもやってみたいと思う癖、ちょっと治さないとかもなぁ、と思いつつ、その奇跡がまた起きるならなにがしたいかなぁ、って脳が自動で動き始めた。

 癖って、簡単に治らないものだ。

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