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3/16『同じ空のもと』

 子供の頃、祖父母の家に預けられていた。

 年に二回、十六個のお団子を祖父母と一緒に作って、農事の神様にお供えした。

 農家の多い地域に伝わる風習だそうで、田畑が多いこの地域でも昔からの慣わしになっているとか。

 三人で楽しく作って神様にお供えして、おさがりを真顔の無言で食べるっていう神事。

 祖父母の住む地域は神仏が身近にあって、人間を助けてくれる存在だと信じられていたから私もその感覚が強くて、実際に助けられたと思う場面も多々あったから信じて疑ったことはない。

 だから両親が海外での仕事を終えて帰国し、高校入学と同時に都会で一緒に住むようになったとき、かなりのギャップを感じた。都会の人って、あんまり神事とか行事とかやる人いないんだ、って。

 神頼みとか初詣とかはするけど、十六団子なんて存在も知らないみたい。クラスメイトからそんな思い出話を聞くことはないし、私がポロッと祖父母の家での話をしたら、“スピリチュアルな人”として扱われるようになった。いやいいんだけど、なんかちょっと含みのある言い方のような気がして、実感として信じてないんだなぁ、っていう雰囲気なのがちょっと寂しかった。

 両親も例外ではなく、祖父母ほどの信仰心はない。いつも祖父母と一緒に神棚にお供えしたり挨拶してたから、それがないこっちでの生活はちょっとだけリズムが狂う。

 両親の家だから勝手に神棚を祀るわけにもいかないし、おじいちゃんおばあちゃんがいないのに自分でちゃんとお供えを続けられるかもわからない。

 しばらくしたらこっちの生活に慣れるんだろうなぁ、って思うと、それも寂しい。もしかしてホームシック?

 とりあえず、家と学校の近くそれぞれに行きつけの神社を見つけることにした。

 探索がてら街を歩くと、いたるところに神社やお寺がある。守るべき場所や結界を張るべき場所がたくさんあったんだろうなと思う。

 こんなに身近にあるのに、同年代の人があまりいない。両親や祖父母世代の人ばかり。たまに子供もいるけど、親とかに連れられてきてるって感じ。

 もったいないなぁ、せっかくご利益いただけるのに。

 とはいえ、神仏を信仰するかどうかは完全に個人の自由だから、誰かに強要はしない。聞かれたら教えたり、一緒に行ったりはできるけどクラスメイトから聞かれることはないと思う。

 それにしても小さな御社の稲荷神社が多いなぁ。一軒家の敷地内とか、路地の奥とかにもちょこんとある感じ。

 地域神さんとか屋敷神さんなのかな? って思いつつ、手は合わせずに会釈だけして前を通過する。

 ふと、都会じゃ農事をやる家なんてほとんどないから、十六団子の風習も伝わらなかったんだなって気づいた。その土地土地によって伝わる習慣が違うのは当たり前かって思ったら、寂しさが少しだけ消えた。

 私は私にできるやり方で伝承を継いでいこうかな、ってなんとなく考える。そうしたら、悩んでいた今後の進路も少しだけ見えた気がした。

 こんな風に道が開けることってあるんだなって思ったら、都会での生活も楽しみになってきた。

 子供のころ見ていたよりも狭い空は、あちらと変わらず青く澄んでいた。

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