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3/14『ケーキと決意』

「ケーキ買ってきた、食べよ」

 帰宅するなり彼女に報告したら、

「えっ、ありがとう。なんか喧嘩でもしてたっけ」

 目を丸くしながら首を傾げた。確かに仲直りのケーキ、たまに買ってくるけど。

「違うよ、今日何日?」

「え?」と彼女が腕時計を見る。「あ、ホワイトデー!」

「そうそう。ちょうど美味しそうでカワイイの売ってたからさ」

 食後にね、って告げて、箱が入った袋のまま冷蔵庫に入れた。

 と、ここで彼女がなにか気づいたみたい。

「……あれ? 私チョコあげたっけ?」

「いや?」

「うわ、ごめん!」

「いーよ、オレ出張でいなかったし」

「にしても、用意すらしてなかったとか倦怠期すぎる」

「え? 俺ら倦怠期だったの?」

「違うけど、ちょっと私、女終わってる」

「そんなんで終わらせないでいいよ」笑って続けた。「ちゃんと魅力的だから」

 頭を撫でたら照れたように笑ったけど、結局“そういう問題じゃない”ようで、彼女は反省モードに入ってしまった。

 作っていた料理にもう一品加えると言い出したので、「食べ過ぎになっちゃうから明日にしない?」って提案したら納得してくれた。

「とりあえず来年のバレンタインはちょっと前に通知出るように設定しておく」

 なんて言ってスマホをいじってる。

 そりゃあ来年も再来年も、この先ずっと一緒にいるだろうけど、別にバレンタインだからチョコ欲しいってわけでもないんだけどなー。とホワイトデーのお菓子を買ってきた自分を少しうらめしく思う。

 なんかフォローできないかなって彼女をながめていたら、その視線に彼女が気づいて手をかざしてきた。

「これは! 私のプライドの問題なので! あなたは関係ないからね!」

 文節を区切り、強調するように言う。

「ホワイトデーの贈り物もケーキもすごく嬉しい。ありがとう」

 ニコリと笑う彼女に、俺の顔がほころぶ。

 彼女のこういうとこ、ホント好き。

「うん。じゃあ来年楽しみにしてる」

「うん、楽しみにしてて」

 笑って言った彼女を抱き寄せる。なんかうっかりプロポーズしちゃいそうなくらい愛おしさがこみ上げた。

「好きだよ」

「うん。私も」

 ヘヘッて笑いあって、軽くキスをする。

 きっと買ってきたケーキより甘いよね、って言ったら、彼女が一瞬真顔になって、すぐに笑顔でうん、って答えた。

 そうそう、そういうとこも大好きなんだよね。

 もうどうしたって好きなんだよなって観念して、腕の中の彼女を愛しく想った。

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