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3/6『世界一周飛行』

 空を飛んでいた。

 映画やアニメの主人公みたく両手を広げて飛んでいた。

 いや、両手を広げないと飛べない、みたいなイメージがあるだけだな、って気づいて気を付けしてみたら飛べてるままだった。どうやらポーズは関係ないらしい。

 そうとわかれば楽な姿勢をとる。

 なんかのアトラクションみたいに椅子に座る格好になってみた。おぉー、夜景が綺麗。

 ここ、どのあたりだろう。ちょっと高度を下げようかな、って思って手足をジタバタさせてみるけど動けない。なにかのレールに敷かれたような定位置のまま前に進むだけ。

 目の前が明るくなってきた。どうやら夜の地域を抜けたらしい。眼下に見えるのは生まれた国。飛行開始地点に戻ってきたようだ。それにしてもすごい。地図と同じ形してる。

 これで終わりかなぁって思ってたら、今度は地球儀で言うところの【上】のほう、北極に向かって動き出した。

 景色は陸地を越え海を越え、北極を超え南極を超え、また生まれ育った国の上。

 おぉーって感動してたら、“迎え”が来た。

『いかがでしたか』

「すごかったです。けど、思ってたのとは違いました」

『おや、それはどういう』

「こう、生きてるときの【世界一周】って、各地の観光をしつつ一周するってイメージなんですね?」

『ふむ』

「今回の体験もすごかったですけど、これは【世界一周】というか、【軌道一周】って感じで……気象衛星かなにかになった感じです」

『なるほど。しかし観光と言っても……』

「ですよね。身体ないと、ねぇ」

『えぇ。もしどうしても、というのでしたら、次回の人生のときに【世界一周する】という計画を立てて生まれられてはいかがでしょう』

「うーん、ちょっと、考えます」

『わかりました。今回は、これでお戻りいただいても?』

「はい。あっ、不満じゃないですよ? こんな経験、生きてるときじゃできなかったので」

『わかっていますよ』

 “迎え”が笑う。

『では参りましょう』

 “迎え”が鈴を鳴らすと視界が白くなって、次の瞬間には元居た場所に戻っていた。いわゆる“天国”だ。

『じゃあ、通行書お預かりしますね』

「あ、はい。ありがとうございました」

 首から下げていたネックストラップ付きカードケースを外して渡した。これがあれば地上に降りても影響ないらしい。お盆とかに使うのかな?

『では、こちらの世界にお戻りになる手続きを始めましょうか』

「はい」


 人生でひとつだけ、思い残したことがあった。それは【世界一周旅行をする】こと。

 お金も貯めて計画立てて、予約までしてたのに流行り病によってそのツアー自体が中止になってしまった。渡航するにも世界的に移動制限がかけられ、旅行やレジャーでの行き来はできなくなった。

 最後のチャンスだと思って申し込んだその予約は、本当に最後のチャンスだったのだ。

 私は病に倒れ、旅行などできる状態ではなくなってしまった。

 天国に召されたとき、頑張って生き抜いたご褒美に、と願いを一つ、聞いてもらえることになった。

 それがさっきの【世界一周】だったのだけど。

『“やっぱりちょっと、納得いかないな”』

 その声に視線をあげる。

『って顔してますよ』

 “迎え”がふふっと笑う。

「あー、いや……出る前にちゃんと伝えなかった自分が悪いので」

『こちらでそういうお仕事をなされてはいかがですか?』

「そういう、とは」

『世界を観光しつつできるお仕事……それがなにかは貴方のお考え次第ですが』

「そんな仕事が」

『こちらでは望む仕事に就くことができますし、まぁある程度限度ありますけど』

「え、じゃあちょっと、考えようかな」

『以前こちらで過ごされていたときのことも徐々に思い出されると思いますので、ごゆっくり』

「はい」

 差し出された書類に記入しながら、心の中はワクワクで満たされる。

 病気になって苦しかった身体はもうない。こちらの世界を、心置きなくエンジョイするとしよう。

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