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2/26『○○』

 ○○しないと出られない部屋、なんて、どっかのR18作品にしかないと思ってたんだけど……。

「はぁ……」

 盛大に溜め息を吐いたのは同じ部屋にいる同僚の女の子。

 そんなあからさまにうんざりされると、さすがに傷つく。チャンスかも? って一瞬でも思った自分の浮かれ具合が際立つから。

 っていうかここどこ。

 部屋の中を見回す。どっかのビジネスホテルみたいな内装だけど、だったら内側からドアが開けられないとかいう設計にはしないだろうし、誰かの部屋というには生活感がない。

「あいつら、かな」

「うーん、そうかなぁ。他にやりそうな人もいないし」

「俺あんま記憶ないんだけど、どのくらいまで覚えてる?」

「あんたは結構早めに酔いつぶれて寝てたよ」

「うわ、ごめん。そうなんだ」

「“こいつ酒よえー”って皆で笑ってたんだけど」

「ひどい」

「私も途中から記憶あんまないから、きっと寝ちゃったんだろうな」

「……じゃあ、あいつらがここに運んできたってこと?」

「じゃないかなぁ」

 “あいつら”というのは、同期入社の男女6名。昨日は俺らも含めて同期会をやっていた。久しぶりに集まって嬉しくなって、呑みすぎたのが良くなかったらしい。

 っていうか、この状況って多分、“俺のため”だよなぁ……。

 俺が彼女のこと好きだって知ってるあいつらが酒の勢いでセットしたに違いない。

 違うんだ、俺だってそろそろ決着つけたいよ。でも同じ部署で働く同僚とさ、付き合えたとしても、振られたとしても、なんか気まずくなりそうで二の足踏んでるんだよ。そういう俺のセンシティブな事情もわかってほしい。

「はぁ〜。早く飽きてくんないかなー」

「そういや荷物は? ある?」

 俺の質問にハッとした彼女が辺りを見回した。

「ある。あんたのも」

「したらスマホで位置情報出して、ここがどこか確認しよう」

「それだ」

 二人して自分のバッグからスマホを出すけど画面が映らない。どっちも充電が切れてる。

「コンセント……」

「いいよ、携帯バッテリーある。これ繋いで」

「やるぅ」

 心配性がこんなとこで役立つとは。と部屋を見渡し気づいた。風呂やトイレ、電話がない。ホテルだったらフロントに連絡する用の固定電話機があるはずだ。

 じゃあやっぱり誰かの部屋なのか?

 考えてもわからないから、とりあえず充電が終わるまで待つことにした。

「そもそも“マルマル”ってなんだよ。なにすりゃ出られるんだ」

 ベッドの上で頭を抱える俺と、

「知らないよ、そんなの」

 椅子の上で膝を抱える彼女。

(漫画とかだと……アレとかアレなんだけど……いや言ったら人生終わる)

「なんだろね、二文字で、男女ですること……告白?」

「あぁー」

 考えていたよりハードルが低い提案に思わず頷く。それならまだ、玉砕しても訴えられたりはしない。

「してみる?」

 含みのある彼女の言葉と視線に、思わず唾をのんだ。

「す、き?」

「なんで聞くの」

「いや……」

 ドギマギする俺を、彼女が潤んだ瞳で見つめてくる。やめてくれ、期待してしまう。

「……好きだよ」

 いつか言おうとしていた言葉。まさかこんなとこで伝えるとは。

 少し悔しい思いをしながら彼女の返事を待っていたら、

「……あとで、ホントに二人きりの時にやり直してくれる?」

 少し照れたようにふてくされて、彼女が言った。

「うん」

 これはもう、あとは本当に二人きりになるだけじゃん、って気分最高潮。

 しかし予想で“○○”してみたものの、ドアは開かない。

「もー、なんなのマジでっ!」しびれを切らした彼女が足底でドアを蹴ると

「ふがっ!」外で声がして、ドアが少し開いた。

「「えっ」」

 隙間をこじ開けるように身体全体で押したら「いてぇ……」と言って何か動いた。それは柔道をやってる巨漢の同僚。

 鍵なんて閉まってなくて、そいつがドアの前で寝てただけだった。

「マジかよ」

「んあー、起きたぁ?」ソファの上から寝ぼけた声が聞こえる。「どうー? 疑似密室。なんか進展したぁ?」

「……あんたらホント、デリカシーのカケラもないよね」

 彼女が本気で怒っているのに気づいて、ソファから飛び起きたのは同僚の女。

「ごめん」

 彼女が怒ると怖いって知ってるから、ソファの上で正座して頭をさげた。

「ここどこ?」

 俺の質問に巨漢が答える。「えー? 居酒屋近くのレンタルルーム。みんなで雑魚寝するならここが一番手頃だった」

「なんで閉じ込めた」

「えー? そろそろいい加減に進展ぶっ!」

 巨漢はソファの上から飛んできたクッションに言葉を遮られた。

「ここの代金、私たち出さないから」

「は、はい。二人以外のみんなで出します」

 もぞもぞと起きだした同僚たちをねめつける彼女の横で、今後絶対怒らせないようにしよう、と俺は誓うのだった。

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