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2/24『雷騰雲奔』

 新たなヒーローが現れた。

 謎の仮面をかぶった謎のヒーロー。正体はもちろん、どこから来るのか、どうしてヒーローになったのか、その活動内容すらも謎だ。

『彼? 彼女? はゲームに参加しないの?』

「みたいですね」

『あ、仲間って訳じゃないのね』

 ヒーローの回答に宇宙軍の代表が拍子抜けした声を出した。

「はい。面識もないんですよ」

『そうなんだ。新しくスカウトとかしたのかと』

「そんな余裕ないですよー」

 笑うヒーローと代表がいる部屋のドアが勢いよく開いた。

「すみません! 遅くなりましたっ!」

『おー、良かった良かった。なんか事故にでも遭ったんじゃないかと〜』

「いや、かなり早めに本部を出たんですけど……途中で変なのに絡まれて」悪の組織の一員は全身タイツをつまんで前後に動かし空気を入れる。「あちー」

『ゆっくりでいいよ、急いでないから』

「うん、僕も今日はこの対戦だけなんで」

「すみません……」

『お水かなんか飲みな?』

 代表が指した先にはケータリングのペットボトルが置かれてる。

「ありがとう、ございます……」

 走って来たのだろう。構成員は息も絶え絶え、ペットボトルを取って椅子に座り、水を飲んだ。

「……っあー。いやホント、お待たせしてしまって」

『全然! ホントに気にしないで。もうそんなお堅い間柄だと思ってないのよ、キミたちと我々は』

「そう言っていただけると」

 構成員が頭を下げる。

「“変なの”って? クレーマーとか?」

「いえ。ほら、最近よくニュースでやってる“新しいヒーロー”いるじゃないですか。あの人が突然現れて……」

 ヒーローと代表が顔を見合わせた。

「“悪はすべて俺が倒す”と」

『キミたち最近なんかしたっけ』

「いえ、最近はこちらのゲームに参加してるだけですね。首領がゲーム好きになったもんで」

『あらそう! 嬉しいな、同士が増えるの』

「なんで僕らの組織も少しずつ方針変更してってるというか……あ、これ内緒でお願いします」

『「うん」』

「なんでもう、前みたいなやり方で世の中を変えようって気もないんですけど……やっぱ見る人には伝わらないみたいで」

『そんで絡まれちゃったんだ』

「はい」

「その“新しいヒーロー”ってどんな感じだった?」

「うーん、中肉中背、声もおじさんぽかったですね。こう、顔にグルグル、ターバン? みたいの巻いてて」

『へー、月光仮面みたいだね』

「ずいぶん古いのをご存知で」

『この国のヒーローもの、好きなんだよね』

 構成員は二人の話を首を傾げて聞いている。若いのか、年代的に知らないらしい。

「ほら、これ」

 ヒーローがスマホで月光仮面の写真を見せる。

「あー、そうそう、こんな感じで……そういや“雷光仮面”っつってた気がします」

「らいこう……雷?」

「多分。額に稲妻マークついてたんで」

「そのまんまだな」

『ニュースでそういう情報って出ないね』

「遭遇してる人が少ないんじゃないでしょうか」

『なるほど。しかしなんで今更新しいヒーロー?』

「うーん。僕がこちらの対戦をメインに活動してるから、とか?」

『でもそれは“悪の組織”の彼らも同じでしょ?』

「えぇ」

『だったら戦う相手いないじゃない』

「あの……僕らの組織が現れたから、ヒーローさんが現れたんですよね」

「そうそう。それまでは僕、ヒーローじゃなかったんで」

『“悪の組織”がいないなら“正義の味方”も必要ないってことか』

「えぇ」

「そうですねぇ」

『じゃあ別に必要ないじゃんね、新しいヒーロー』

「……もしかして……」構成員がポツリと言った。「新しく出て来たのはヒーローだけじゃなくて……」

 言葉の途中でヒーローのスマートウォッチが鳴った。出動命令の合図だ。

 思わず見た構成員は首と手を横に振っている。宇宙軍の代表が手で電話に出るよう示す。

 ヒーローは会釈して「はい」スマートウォッチに向けて応答した。

『対戦前にすまん、出動命令だ。いまそちらに向かっている』

「え、はい。でも彼らは」

『彼らじゃない。新たな組織の襲撃だ』

 博士の言葉に、三人は顔を見合わせた。

* * *

 迎えの車で着いた現場はすでに惨状。しかし物が壊されただけで人的被害はないようだ。

「いったい誰が……」

 辺りを見渡し博士が呟く。

 ヒーローは地面に落ちている物に気づき、拾った。

「なんだ? それ」

 ヒーローの手の中には、稲妻のエンブレム。

「もしかして、ここで戦っていたのかもしれません」

「誰が」

「新しいヒーロー……雷光仮面が」

 博士の眉間にしわが寄る。

「もしそうだとしたら、我々の職務怠慢だ。一刻も早く対策を練ろう」

「はい」

 博士が運転する車で対戦会場へ戻る途中、ヒーローはずっとエンブレムを手で包んでいた。

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