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2/19『アプリのひみつ』

『ニンゲンは働くのが好きだよなぁ』

 カゲが言う。

『特に“ニホンジン”は勤勉ですよね』

 ヒカリが言う。

『“天啓”という形でアイデアを与えるだけで自主的に動いてくれるのだから、こんなにコスパの良い生き物もそうそういないな』

『こちらからはノーギャラですしね』

『“イノチ”という“カネ”より大事なものを与えているんだ、それで充分だろう』

『“チキュウ”上では金銭も発生しているようですしね』

『そうそう』

 ヒカリとカゲが会話している間にも、宇宙のどこかで新たな世界が創られていた。名もなき星の不要物が消え、大地を成すために地表が耕され、風が吹き、雲が出来、雨が降って水が流れる。

 ピロン♪ と音がして、ヒカリとカゲがモニタを見やった。

『お。【最初の生命体誕生】』

『この星は進化が速そうですね』

『どうだかなぁ。飽きっぽいヤツも中にはいるし……』

『ある程度まで育ててくれれば、あとは知的生命体が勝手に動きます。そうすれば星も勝手に繁栄する』

『あんたが創った“チキュウ”みたいな?』

『あぁ、そうですね。そんな感じです。まぁ一応、都度メンテナンスはしてるんですけどね』

 ヒカリは手元のスマートデバイスを操作する。

『あの星の知的生命体のおかげで、そういう便利なものができたし、こちらとしては手間が省けてありがたいよ』

 カゲがヒカリの手元を見て言った。

『そうですね。ニンゲンが自主的にゲームアプリを作って普及させてくれれば、こちらはそれに土壌を紐付けるだけで済みますから』ヒカリは言いながら、新たに【ストア】へアップロードされたゲームを確認して、手元のデバイスと連携させた。『そうとは知らずにプレイしているのでしょうけれど、彼らが新たな星々や生命体を創ってくれるようになって、本当に助かっています。私にはもう、そこまでの力はないので』

『ないっていうか、使うの億劫なんでしょ?』

『そういうわけではないですけど……』

『あとはその中からいくつの星がどのくらいの進化を遂げるかだな』

『それはもう、我々にも分かり兼ねますねぇ』

『神すらも知らぬ、か』

『えぇ、もうさすがにちょっと……。特にこの星は、私の手を離れすぎましたね』モニタを切り替えて、青く輝く美しい星を表示させた。『この青もいつまで見ることができるか……』

『あんたの影響が全く及ばないわけじゃないんでしょ?』

『えぇまあ……それなりには』

『それに“ニンゲン”も色々対策してるみたいじゃない』

『やっと、って所ですね。壊滅的な部分もあるので……』ふぅ、と息を吐いて、ヒカリはモニタを切り替えた。『まぁ、あとはなるようになってもらうしかないですね』

 ヒカリは手元に視線を落とす。

 ヒカリの持つデバイスには、様々な“箱庭系”と称されるゲームのアイコンがズラリと並んでいる。地球上の人間がプレイしているものが主だが、地球外生命体が作成・遊戯しているものも混ざっている。

『ニンゲンの強い想いが、新たな世界を創造するとはねぇ』

 知力はおろか、言語すら危うい時代からその生命体を見続けてきたカゲが、感慨深そうにしみじみと呟いた。

『ゲーム化することによって取っ付きやすくなりますし、まさか実際に天地創造しているとは思いもよらないでしょうしね。なによりゲームの面白さが、集中力に大きく影響します。熱狂すればするほど強い想いが生まれる。ニンゲンの想いが宇宙をも動かすのだと、初めて知らされました』

『いやいや、ありがたいことだよ』

『複数人で行うことによって、神格化することも防げますし』

『それ重要。本人たちが無意識でやってるのも重要』

 カゲが操作したビジョンでは、地球の世界各国で遊ばれている“箱庭系”ゲームの操作画面がモニタリングされている。それは地域ごとに管理され、宇宙に浮かぶ星々の中核コアに設置された【天地創造システム】に紐付いていた。

 知的生命体がプレイしたゲームのデータが幾許いくばくか、それぞれの【天地創造システム】に反映・蓄積され、それが規定量に達すると、ただの土やチリの塊だった土壌に影響を与え変化をもたらし、新たな世界を創り出すのだ。

『お、また星がひとつできたみたいだぞ』

 カゲが楽しそうに言った。

『【高度な知的生命体誕生】まで行くといいですねぇ』

『いい加減、“チキュウ”と同様かそれ以上の文明ができるといい、か?』

『まぁそれは、私の管轄外の地域にいくつかあるんで……そこまで期待していないのですけど。他の星と戦争が起こってニンゲンが絶滅したら、私たちも消えてしまうわけですし』

 ピロン♪

『『おっ』』

 ヒカリとカゲがモニタを見やる。

 今日もまた、どこかで新たな星が構築され、生命体が生まれている。それは、いま世界のどこかで遊んでいる誰かの指から生み出されたものかもしれない。

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