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2/11『わんこ蕎麦屋』

【わんこが打つわんこそば】

 店頭にハタめくのぼりの売り文句に釣られて入店。店内の一角にあるガラス張りのコーナーに設られた麺打ち台。その中でホントに犬――わんこが蕎麦打ちしてた。毛が入らないよう割烹着に手袋して給食帽かぶって。

 そんでフロアでは別のわんこがお給仕してくれてる。割烹着に手袋して三角巾つけて。

 犬種は様々。蕎麦打ちしてるのは柴犬、お給仕してくれるのは小型犬はチワワから大型犬はグレートピレニーズまで。

 みんな二足歩行して手を器用に使ってお盆を運んでる。手の構造的にお椀を掴んだりはできないみたいで、そこは人間の店員さんがサポートしてる。

『はいどんどん~、はいもういっちょ~』

 店内に流れるアナウンスに合わせて、わんこたちが蕎麦とツユが入ったお椀をクルクル器用に回し、隙あらば客が持っているお椀に蕎麦を滑り込ませる。その手際の良さたるや。動体視力と反射神経良すぎなんだけど。

 すぐ近くでお仕事してる可愛いわんこを見る余裕なんてあっという間になくなって、いつ隙を見て蓋を閉めようかとタイミングを窺うのが精一杯。

 若干お蕎麦に溺れそうになりながらも、一般平均値の量を食べてフィニッシュした。

 手に持ったお盆類を人間の店員さんに渡したわんこの店員さんが、健闘を称えぽふぽふと拍手してくれる。えぇ~~~! 嬉しいぃ~~~!

 なんでこんな犬好きには最高のお店、メディアで取り上げられないんだろうって不思議に思ってレジ係の人間のおばちゃん店員さんに聞いたら、取材一切お断り、店内外の撮影も一切禁止にしてるんだそう。

「ほら、ねぇ。一応、飲食店だからさ。気を付けてはいるんだけど、とやかく言う人もいなくはないから~」

「なるほど」

 確かに潔癖症の人とか動物嫌いな人が見たら身の毛がよだつであろう光景である。犬好きには天国だけど。

「飲食店許可はちゃんと得てるのよ? だから安心してまた来てくださいね」

「来ます、絶対」

 犬好きのワタシが鼻息荒く返答したら、近くを通りかかったお給仕係のチワワが嬉しそうにこちらを見てしっぽをはためかせていた。

 か、かんわいいぃ~~~!

 うなずいて、手を振ってチワワを送り出す。

「撮影禁止、つらいです」

「みなさんそうおっしゃるわ~。私たちスタッフもね、すっごく我慢してるの」

 そう言っておばちゃん店員さんは笑った。働いている人はみんな犬なり動物なりが大好きなんだそうで、わかりみが過ぎる。

 どういうルートで保健所の許可が下りたのか、そもそもなんで犬たちがあんなに器用に接客できるのかとか諸々わかんないけど、可愛いから良しとする。

 今度来るときは犬用と人用の差し入れ持ってこよう、って弾む気持ちで帰宅して、忘れていたことを思い出した。


 今日はたぬきが作るたぬきうどんが食べたくて外に出たんだった。

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