2/9『ふくふくの幸せ』
一目見て浮かんだ名前は【だいふく】。
寝ている姿がまんまるで、もちもちで、とってもかわいくて。
三年くらいでお別れしなきゃいけないの知ってるから避けてたんだけど、このコは私が幸せにするって気持ちが沸いた。
「すみませーん」
小さく手をあげて店員さんを呼ぶ。
ケースの中を指さして「あのコを」伝えた。
穴が開いたケーキ箱のようなケースを開ける。中に入ってるのはケーキではなくハムスター。スノーホワイトという品種の真っ白な個体。
一緒に買ってきたハウスや周辺雑貨を棚の上に設置して、ケースの中に箱を入れ、そっと傾ける。
「新しいおうちだよー。どうかな?」
“だいふく”はせわしなく鼻を動かし周囲をキョロキョロ窺ってから、ケースのすみに置いた寝床に入っていった。
寝床から少し顔を出し、だいふくが伸びをする。
「はぁー! かんわいいぃ〜!」
いくら見ていても飽きないその可愛さったら。
締切が迫っているというのに写真を撮ったり絵を描いたり。スマホのカメラロールや趣味用のスケッチブックはあっという間にだいふくで埋め尽くされた。
絶対に幸せにしようって思えて仕事も頑張れるようになった。
いつも締切ギリギリだった挿絵の依頼も、なんならいつもは締切延ばしてもらってたデザインの依頼も、いまならスルスルこなせる。
時間に余裕ができたから、と描いた、だいふくをモチーフにしたイラストをメッセスタンプストアにアップしたら、あれよあれよという間に人気が出て、仕事の依頼がわんさか舞い込んだ。
イラストだけじゃなくてグッズ化なんかもされちゃって、描いた本人が一番びっくりしてる。
増えた収入を使ってだいふくの家やフード、その他諸々をグレードアップさせたけどだいふくは特に気にせず気ままに暮らしている。
幸せかどうかはわからないけど、不自由ではなさそうだから良しとする。
ペットショップで一目惚れしたあの日から人生が好転した。幸せにすると誓ったのに、こっちが幸せにしてもらっちゃった。
だいふくには足を向けて寝られないなと思いつつ、だいふくのおかげで得た収入を、だいふくが快適に暮らせるためのグッズに使う。
出来るだけ健康で長生きしてほしいなと願いながら、届いたグッズをせっせと設置するのだった。




