表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/366

2/8『小さな人たちの大冒険』

 窓を開けて、中央にそびえる小規模な竹林を眺める家主。

「思い切って作って良かった~」

 四方を壁に囲まれた吹き抜けの庭、いわゆる【坪庭】を前にご満悦だ。

 家主は照明に照らされた竹を見つつ晩酌しているその光景を、竹林の中から見つめる小さな存在が――。


 カラカラ音を立ててサッシが閉まる。それを見計らったかのようにピョコッと顔を出したのは小さな人。

 キョロキョロあたりを見回して安全を確認すると、後方に向かって手招きをした。

 ソロリと出てきた小さな人は、手招きをした人にそっと寄り添う。

「○×※◆□◇#△★」

「▼★※△☆○▲※◎●▽」

 小さな人たちは音楽のような言葉で会話した。

(以下、人間語に翻訳)

『ちょっと重くて開きそうにないよ』

『うーん、やっぱり難しいかぁ』

『どこかに抜け道ないかな』

『えー……? あっ。あれは?』

 指さしたのは猫用のドア。

『二人で押せばなんとかなるか』

『やってみよ』

 二人は猫ドアに体重をかけて押し込む。できた隙間をすり抜けて、室内へと入り込んだ。

『おぉ、広いね』

『どこかに住めるところあるかなぁ』

『人間が住む場所は危険がいっぱいだから……住むとしたら屋根裏とか、床下とかかなぁ』

『えー』

『仕方ないだろ、寝てるうちに運ばれちゃったんだから』

『そうだけどー』

『僕らの身体じゃ都会暮らしは難しいよ。人家に近いほうが食べ物にありつける確率が高い』

『うん……』

 小さな人たちは竹が生い茂る山に棲んでいた。

 竹の隙間の秘密基地で眠っていたら秘密基地のある竹が人間に収穫され、そのままこの家の坪庭に移設されてしまった。

 二人はなんとか山に帰ろうとしたが、いまいる場所がどこかもわからない。仲間が不本意に連れ去られたという事件を何度か耳にしたことはあったが、まさか自分たちが当事者になるとは思ってもいなかった。

 広い家の中を恐る恐る歩く。人家にあがりこむのは初めてだ。夜目が利くとはいえ、なにが起こるか見当もつかない。

 忍び足で歩く二人の近く、暗闇に浮かぶ二つの光。

 光は少しずつ大きくなって、二人に生暖かい風があたる。

『猫だ!』

『きゃあ! こっち来る!』

 ズドドド! ズドドドドー!

 猫がフローリングの床を走る。小さな人は捕まるまいと必死で逃げる。

「ニャトラ~? なに~?」

 家主が気づいて起きたよう。寝ぼけ声で飼い猫の名を呼んだ。

「にゃっ!」

 返事するように鳴いて、家具と壁の隙間に手を入れようとしている。

「え、やだ、虫? やめてよちょっと……」

 怯える家主がスマホのライトを当て、隙間を覗き込む。その先に見えたのは………………なにもない空間だった。

 家主はホッと息を吐き「Gナイン買っとこ……」害虫駆除剤をネットショップで注文して、猫と一緒に寝床へ戻った。

『あぶなかった~……』

 こちらもホッと息を吐き、家具の反対側から隙間へ戻る。

『このフロア危ないね』

『上の階ってどこまであるんだろう』

『うーん、行ってみよう』

 小さな人たちは身軽さを武器に上階へ進む。

 行きついた先にあったのは屋根裏にあたる三階の部屋。

 そっと入るや、

『わぁ……!』

 小さな人がため息を漏らした。

 そこは家主の趣味であるミニチュアハウスがたくさん並ぶコレクション専用部屋。ここには猫用のドアもついていない。

 まるであつらえたかのようにサイズもピッタリだ。

『ね、今日はここ借りて寝ない?』

『そうだね、外もだいぶ寒かったし……』

 並んだベッドに靴を脱いで横たわる。ふかふかのマットレスに布団が、二人を眠りにいざなった。


 かくして二人の小さな人は屋根裏部屋を拠点に生活することになった。

 ほどなくして夢見がちな家主に存在を気づかれてしまうのだが、それはまた別のお話……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ