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12/29『抽選器からアルマジロ』

『歳末大セールの抽選会場はこちらでーす!』

 派手なハッピを着て、プラスチック製のメガホンを持った男の人ががなってる。吐息がマスクの隙間から出て眼鏡を曇らせる。

 寒いのに仕事大変だなぁ……。

 僕が吐いた息もちょっと白くなって、すぐに消えた。

 年末年始に必要なものの買い出しに来たはいいけど、人が多くて少々疲れた。

 そういう人のために開放されているらしき、休憩所という名の倉庫に置かれたパイプ椅子に腰かける。

 はす向かいのシャッター店前で、ハッピ姿のおじさんはまだ頑張ってる。

『500円ご購入で補助券一枚! 1000円ご購入で抽選券一枚! 補助券二枚でも抽選できますよ~! この機会にでっかいガラポン回してみてね~! 豪華賞品たくさんでーす!』

 でっかいガラポンとは?

 不思議に思って見てみたら、おじさんの後方に人の背丈より大きな抽選器が置かれてた。グルグル回すと玉が出てくるアレのでかいやつだ。ちょっと興味湧いてきた。

 眺めていたら小さな子供連れの夫婦がやってきて、おじさんに声をかけた。おじさんはガラポンの近くにいた、同じハッピを着た若い女性に声をかける。どうやら受付は女性が担当しているようだ。

 女性がチケットを受け取って、右手の指を三本立てた。3回まわせるということだろう。

 若いお母さんが子供を抱っこし、取っ手を持たせた。そのまま子供ごとガラポンを回す。もう子供はただ取っ手の一部となってしまっている。

 ガラガラと大きな音がして、カプセルトイのケース大の玉がゴトリと落ちた。3回全部末等だった様子。スナック駄菓子を3本渡され帰っていった。

 子供は理解していないようだが、我が子の可愛い姿を録画できた夫婦はご満悦だ。

 そういえばさっき買い物した店でなんかもらったな、と思い出し、財布の中を漁る。

 手元には5枚の抽選券。購入品は宅配サービスで届けてもらう予定だから荷物はない。

 そろそろ体力も復活してきたし、抽選して帰るか、という気持ちになった。

 休憩所から出て一直線に移動し、受付の女性に抽選券を渡す。

「はい、5回分ですね。まわして玉が出たら一度止めてください。少ししたらまわして、を繰り返してくださいね」

「はーい」

 言われた通り、まずは1回まわす。近くで聞くと玉が混ざる音がけっこう派手だ。

 ガラガラガラ……ゴトン。

 ボールは白色。末等の駄菓子だ。

 2回目、3回目も白ボール。4回目に茶色の玉が出た。

「おめでとうございます! 3等の商品券三千円分でーす!」

 女性が声を張ると、おじさんが手に持っていたハンドベルをチリンチリン鳴らす。

 あっ、注目されてる。恥ずかしい。けど三千円は嬉しい。

「ラストでーす」

 言われてまたガラリと回す。そうして出たのは……――


「果たして当たりなんですかねぇ」

「僕に聞かれても……」

「ですよねぇ……」

 腕に乗った女の子は困り顔だ。きっと僕も同じ表情になっている。

 大きなガラポン抽選、最後の1回で出てきたカプセルは、アルマジロの形をしていた。そして、「あいたたた」と喋った。

「おっ、大当たりで~~~す!」

 女性の声に反応してヂリンヂリンとベルが鳴らされた。僕は【大当たりの景品】と顔を見合わせ、「えぇ……?」とつぶやいた。

 いま、その景品と一緒に家に帰っている。

「目、まわんないんですか」

「アルマジロアーマーの中は水平機能が働いてるので。けど、まさか落ちると思ってなくて、油断しました」

 着地を失敗して足をくじいたらしく、商店街の医務室に置かれていた湿布を小さく切って貼っている。

 ガラポンの玉と同じくらいの大きさをしたアルマジロの中には、人間と同じ形をした女の子が入っていた。宇宙のどこかにある星から来た宇宙人だそう。

「人を景品にするってアリ?」

「どうなんでしょう。うちの星では聞きませんが」

「うちでもだよ」

「まぁ私のお給料は商店街の方々が払ってくれるそうですし、私も収入が得られるので助かります」

「出稼ぎってやつ?」

「どちらかというと、社会勉強とか異文化交流ですかね。せっかく違う星に行けるんだから、若いうちにと思って」

「なるほどねー」

 女の子が僕の家で一ヶ月間家事手伝いをしてくれる。それがガラポンの特賞だった。

「変な人に当てられてたらどうするんだ」

「そのときはコレを」

 女の子が腕を伸ばすと、棒のようなものが現れた。バチバチと音を立てて電流が走ってる。

「え、コワ」

「これで攻撃して逃げてもいいと、さっきの契約書に」

「嘘。ちゃんと読まなきゃ」

「使うことは滅多にないと思いますが……これからよろしくお願いします」

「……こちらこそ」

 電気棒に怯えつつ返答した。

 あの特賞が僕にとって当たりなのか外れなのかがわかるのは、もうちょっと先かもしれない。

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