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1/28『life is a game』

『ちょっと聞いたんだけどさ』

 宇宙軍の代表が翻訳機を通して話しかけてきた。

「はい」

『キミたち、地球上では正義と悪として対立してたの?』

「あー、まぁ、そうですね、前までは」

『いまは?』

「えー……」

 僕たち地球軍の関係性に当てはまる上手い言葉が見つけられなくて口ごもっていたら、代表が笑った。

『いいよ、俺らアクなんでしょ? 地球の人たちから見たら』

「いや、悪ってわけではないですよ。僕らに危害を加えるような方々じゃないですし」

『でもわかんないでしょ? 突然光線銃かなんかでビャーッとさ』

「やらなさそーな印象しかないですけど」

『うん、やらないねー。残虐なの嫌いだし』

「それは、個人的にですか?」

『いや、星民性。一応軍事力はあるけどさ、攻撃じゃなくて防御のためなの。うちの星は地球で言う“自然”が豊富で綺麗でねー。ただ他の星から見ると“開発”しがいがあるんだって。資源も豊富だしさ』

「もったいないですね、壊しちゃったら二度と戻らないのに」

『そーなのよ!』

 代表が僕の肩を叩く。なんだかちょっと近所のおっさんくさくて親近感。

『うちの星、科学と化学がすんごい発達してるのね? でもそれには自然が不可欠な訳。空気を洗浄するとか、土を作るとか、結局自然にやってもらう以上のことって、知識あってもできないんだよね。技術が進歩すると同時に、それがわかったわけ』

「うわー、全地球人に聞かせてやりたい」

『最近は気を付けてるんでしょ?』

「そうですね、やっとというか、長年のツケの代償というか」

『まぁまぁ。地球はまだ早く気づいたほうだよ』

「そうですか」

 宇宙軍が訪れた中には、もう再生が不可能なほど汚染が進んでしまい、限られた一部の生物しか生きられない星がいくつもあったらしい。【ゲーム】どころではないが、もし勝てれば宇宙軍の星の資源や自然が手に入る、と勝負を受け入れるそう。

『で、まぁ当然というか私たちが勝つんだけど、勝ったかわりにその星の再生をさせてもらうわけ。そうすると、うちの星じゃ検証できない事例とか事象とか、再現が難しい環境での実験ができて、また技術が発展していくの』

「すごい。慈善事業じゃないですか」

『その代わり、うちの星の傘下になってもらったり、提案したルールに従ってもらったりはするんだけどね』

「滅びゆくのを待つだけより、全然いいでしょう」

『多分ね。不満分子も生まれるけどね』

 代表は少し寂し気に笑う。

『あ、そろそろ【試合】の時間だね。戻らなきゃ』

 代表は手のひらサイズの空気モニターに表示させた時計を見て言った。

「あの、最後に質問いいですか?」

『うん』

「いま伺ったみたいな星だったらわかるのですが、なぜそこまで汚染が深刻ではない星にもゲームを持ち掛けるんですか?」

『それはね……』

 代表は少し楽し気に笑みを浮かべ、教えてくれた。


 技術が発達して宇宙へと進出して行く星が最近増えているそう。その星の生物たちはやがて自星だけでは飽き足らず、他の星を侵略しようとする。それを未然に防ぐため、危険因子がある星へ先回り的に訪問し、その星の代表者やそれに近しい生物と契約を交わすそう。ゲームで勝った星には、武力を行使した侵略をしない、と。


「え、じゃあもし僕らが勝ち続けたら……」

『うん、私たちの星は地球に攻め込めない……まぁ契約交わさなくても攻め込まないんだけどね? で、このままそちらが勝ち続けたら――』

「……ってことですよね」

 僕らが勝つことで地球の平和は守られても、彼らの平和は保証できない……なんて、そんなこと、赦されるのだろうか。

『あ、でもだからって手加減はしないでよね? 同情で負けられても楽しくないからさ』

 代表は本当にそう思っているようだ。笑顔にも言葉にも一切の曇りがない。

『さて、ホントに戻らなきゃ。ごめんね? やりにくくなるようなこと聞かせちゃって』

「いえ、聞いたのはこちらですので。むしろありがとうございます」

『こちらこそ、聞いてくれてありがとうございます』

 代表と別れたあと、誰かにこの話聞かれてたらマズいなって急に気づいて、パワードスーツの聴覚を高めてみたけど周囲に人はいなさそうだった。

 代表と協議したであろう首脳たちは、契約の話を知っているのだろうか。知っているからこそ、ちょっと過剰すぎやしないかと思えるほどの支援があるのだろうか……。

 もし負けてもプレイヤー(僕ら)にはリスクが生じないよう契約されてはいるけど……彼らの星の命運も、僕らにかかっているとなると話は別だ。


 知力で平和を守るには、各星共通の【ゲーム】を用いるのが有効だったんだろうな。

 代表の考えを少し考察してみる一方で、こうも思う。

 ゲームで自星の平和を守る彼らの手法も、なかなかにクレイジーだな、と。

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