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4/10『フォントのフォント』

 ボクには特殊な能力がある。

 街中で見かける文字のすべてが、どのフォントを使われているかわかる。というか、見える能力だ。

 あの看板のフォントは“ヒラギノ明朝”、あっちの看板は“游ゴシック”。標識のフォントは“丸ゴシック体”で……と視界に表示される文字を見て疑問が生じた。


 フォント名のフォントは、なんてフォントだ?


 と気になったが最後。視界の中には看板のフォントに使われている文字のフォント名、の文字に使われているフォント名、の文字に使われているフォント名……といったように、フォント名が延々ループされて表示されてしまう。いつしかボクの視界はフォント名だらけ。表示しきれない文字で視界が黒くなってきた。

 いやいやキリがないって! ちょっとマジでほとんど見えない。

 えっ、どうしたらいいの? どこになにがあるかわかんないんだけど。

 下手に歩いて事故にでもあったらヤバいって、その場にうずくまる。

 瞼を閉じて視界を遮断。ようやくフォントは見えなくなる。

 あ、そうか。

 閃いて、そっと瞼を開けた。

 視界に見えているのは灰色。道路のアスファルト。

 ここだったらなにも書かれてない率高いじゃん。って思ったのもつかの間。視界の先に【止まれ】の文字。

 ああぁ、もおぉ。

 視界に広がるフォント名を消すために瞼を閉じた瞬間、誰かが背中を押した。

 ビックリして振り向いたら、そこにはカワイイ女の子がいた。

「え、っと……」

「困ってたみたいだから」

 僕の背中を押したであろう人差し指を、そのまま前方に向ける。「見てみて」

 なんのことかわからず、それでも言葉に従って、その指先に視線を送る。

「あ」

 あんなに視界に蔓延はびこっていた【フォント名】が、元の通りターゲットの文字に表示されるだけになっていた。

「どう?」

「戻った……っていうか、え?」

「あなたの場合は、背中」

「……なにが」

「リセットボタン」

「リセット……」

「いま押したのは【フォント認識機能】のやつ」

 間違えて押すと、人生がリセットされちゃうから気を付けてね。なーんて冗談。

 クスリとも笑わず、真顔で言い残してその子は去って行った。

 え、いや、まだ聞きたいことあるんだけど~、とは言えずその背中を見つめていたら、立ち止まり、振り返り、こちらへ駆け寄ってきた。

「困ったら、ここ」

 胸ポケットから出した紙片をボクに渡して、その子は本当に去って行った。

「“リセット屋”……」

 名刺に書かれたその名称。裏にはびっしり書かれた文字。なにを“リセット”できるのか、その一覧表が印刷されていた。

 意識して見える文字を遮るように指で隠しつつ一覧表を読み進める。見たこともない名称もある中、【フォント認識機能】の文字を見つけた。

 これがボクの能力の名称……。

 案外そのままだなーって思いながら名刺の端まで読み進めた。

 端っこに小さく書かれた【※リセット後のデータの復元は致しかねます。】がちょっと気になるけど……困ったら連絡できるようにしておこうか。

 連絡先が知りたくて名刺を表にする。書かれているのは【リセット屋】という文字と電話番号だけ。

 ここに電話したら、さっきのカワイイ子に繋がるのかな。

 ちょっと興味はあるけれど、怪しい感じも拭えなくて躊躇する。

 もし本当に困ったら、電話してみよう。多分そのときは、視界いっぱいのフォント名で電話番号なんて読み取れないと思うけど。

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