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1/10『光る牙の鷲獅子と共に』

「ですからこの世界ではー、誰もが分け隔てなくー、“特性”の恩恵をー、授かっているのですー。はーい、ここテストに出ますよ~」

 先生が白板に書いた字の下に赤い線を引く。

【127年 特性扶翼元年】

(とくせい、ふよく、がんねん……)

 ノートに書き写し、手持ちぶさたになったぼくはペンを回した。

「はーい、今日はここまで~。日直さん、消すのお願いね~」

「「「はーい」」」

 みんなが返事するのと同時に、終わりのチャイムが鳴った。


「一緒にいるのは当たり前、って思ってたけど、違うんだね」

「そうらしいな」

「あれ? 知らないの?」

「ワタシはその時代の生まれではないから」

「そっか。みんな“せーの”で生まれたんじゃないんだね」

「お前たち(ニンゲン)だってそうだろう」

「あー、うん、そっか。そうだね」

 ぼくはえへへと笑う。光牙こうがと一緒なのが嬉しかったから。

「お前も大人になれば色々わかる」

「いまだってわかるよ。授業で習ってるもん」

「そうか」

「光牙はぼくが学校行ってるとき、なにしてるの?」

「仕事だよ。お前が大人になったら一緒にすることになる」

「そうなの⁈」

「そうだ。ワタシと同じ種族を特性に持つヒトは、みな同じだ」

「へえぇ~。でもぼくの学校にはぼくしかいないんだよね」

「あぁ。ワタシもここ数年、鷲獅子を持つヒトにあまり会わなくなった」

「そうなんだ」

「時代というやつかな」

 光牙はさみしそうに笑った。


 学年があがり、僕は鷲獅子たちの歴史を詳しく習った。

 彼らの世界では力の強さが全てだということ。弱い者は虐げられ、強い者たちの争いに巻き込まれて年々個体が減っていること。

 それを憂いた一部の厭戦派が人間と契約を交わし、“特性”になることで人間と協力し、和解交渉していること。しかしその強さ故に特性として共生するに耐えうる人間が少ないこと。

 鷲獅子を特性とする人間は和解交渉の場に参加するのが義務付けられていて、それは鷲獅子も同様だということ。

 月日が経ち、膠着状態だった争いが悪化して僕らも戦場へ赴くことになった。

 戦地で和解を試みようにも、話し合いに応じる好戦派など皆無だった。戦う術を持たない人間はただの足手まといで、ただ悔しさが募る。

 戦のさなか、小高い丘にひとりの鷲識子が飛び乗った。その体の色は王位の証である、赤。

 大きく開けた口から雄叫びと共に出た炎が、敵味方関係なく焼き払うかのように戦地に広がる。

 炎の中光牙が唸り、王めがけて跳んだ。

「ダメだ!」

 静止の言葉が虚しく響く。

「退け!」

 光牙は王の鋭い爪に薙がれ、地面に叩きつけられた。

「光牙!」

 僕が呼ぶと周囲の者たちが一斉にこちらを見た。大概の人が特性に名前を付けないのは知っていたが、こんなにも異端の目で見られるとは。

 炎の波をかき分け、光牙に駆け寄る。

「心配するな、かすり傷だ」

「でも血が!」

 そのとき初めて見た。光牙の体に通う、僕たちと同じ血の色を。

 同じなんだ、彼らは、僕らと。

 僕は光牙の隣で声をあげた。

「鷲獅子の王よ! もう傷つけ合うのはやめないか!」

 燃え盛る炎の中、皆が動きを止めこちらを見ている。

「力で制圧して何になる! ただ怯えて暮らすしかない者を増やして安寧を得たいだなんてただのエゴだ! こんな混沌とした時代に、皆が協力せずに未来などあるものか!」

 鷲獅子の王ただ黙ってこちらを見ている。

「僕らは、この世界を守りたいんだ……!」

 立ち尽くす僕の隣で、光牙が言った。

「王……厭戦派を代表し申し上げます。このままでは我が種族は絶えてしまいます。どうか……そちらの道へはお進みにならないでください……」

 鷲獅子の王は顔をそむけ、吐き捨てた。「興覚めだ、戻る」

「はっ!」

 お付きの者と共に王は戦地を後にした。光牙は息を吐き、座り込む。

「光牙……!」

「心配するな、少し眠る」

 光牙は目を閉じた。僕は着ていた上着を光牙の体にかける。

「……ヒトと鷲獅子がそのように慣れ合うとは」

 近くにいた好戦派の鷲獅子が呟く。

「パートナーだから……当然です」

「そうか……」

 鷲獅子は近くの火を消すと、その場を去った。


 それから少しして、鷲獅子の王から停戦の意が発表された。秩序を守るための知識を、人間に貸してほしいとも。

 光牙は嬉しそうにそのニュースを見ていた。身体には包帯が巻かれている。

「大げさにされた」

 光牙は不服そうにしてたけど、

「たまにはゆっくりしたらいいよ」

 僕はその隣で微笑む。

「そうだな。たまにはどこかへ遊びに行くか」

「いいねぇ、どこにしよう」

 これからは鷲獅子と共生する人間が増えるだろう。その日の為に何かできることはないか。そんな風に考えながら、僕は今日も光牙と共に生きる。

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