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ずるいずるいといつも大切なものを盗る妹に婚約者を盗られた姉、婚約破棄後の辺境送りを回避するために、契約結婚というものを提示してきた20歳年上の辺境伯の提案にのってみたのだが。

作者: あかり

「リース・アルリーズ、お前は妹のユーリアをいじめ、殺そうとした罪により婚約破棄をする!」


 どうして舞踏会の会場でこんな辱めを受けないとだめなのでしょうか。

 殿下の横には長い金の髪をした妹、にやりと笑います。

 

「殺そうとなどしておりません」


「お前がユーリアに贈ったクッキーに毒がしこまれていたのだ!」


「クッキーなど贈りません……」


「お前からだと手紙がついていた、お前の筆跡だ!」


 衛兵がこちらににじり寄ります。私は違いますと首を振ります。

 するとこちらをじいっと見ていたひとりの男性が少しお待ちくださいと殿下に声をかけました。


「ロッド辺境伯……」


「リース様の筆跡などは簡単に真似できますし、それにどうして妹を姉が殺そうとするのかその理由は?」


「こいつはな、母違いのユーリアをいつもいじめているのだ!」


「いじめていません!」


 私の言葉にふふんと笑うユーリア、私のものをいつもとるのはあなたですし、後妻に入ったお義母様と私の折り合いが悪いのをいいことに私がいつも大切なものをとると告げ口をしているのを知っていますのよ!


 ロッド辺境伯は確たる証拠がないままに侯爵令嬢を罪とやらで断罪をするのはちょっとと首を振ります。

 

 金の髪を振ってユーリアは私はお姉さまに殺されそうになりましたと涙ながらに訴えますけど。

 私は口の端が笑っているのを知ってますわ。


「口で言うのなら簡単です。殿下、よければ彼女の身柄、私が一旦預かるという形ではだめでしょうか? 判事の資格も私は持ちますし、きちんとした場で彼女の言い分も聞くべきかと」


 ロッド辺境伯の言葉にうーんと言う殿下、ユーリアがお姉さまは私をいつもいじめてますわ。皆も知ってますわ! と叫びますが……。


「みんなとは?」


「お母さまにお父様、それに」


「身内の証言は信用できません。私があなたの姉上の身を預かることに何か不服でも?」


 青い目に鋭さが宿ると、うっと妹が後ろに下がりました。

 確か年齢は私より20歳上の36歳、その年頃の男性が持つ気迫に妹も飲まれたようです。


「……わかりましたお願いします」


 一旦保留ということで、私はロッド辺境伯に身柄預かりとなりました。

 


「もう多分話は出来上がっている。婚約破棄は今回は受けたほうがあなたのためでもあるとは思うが」


「……」


「罪とやらを認めるのではなく、妹に心変わりをしたのなら、それを飲むという形で……」


「……それが一番まとまりがいいと」


「そうですね」


 辺境伯の館で、私は彼の説得を受けていました。私が罪などは犯していないというのは知っていると彼が言ってくれたので少し心が晴れましたが。


「私は貴方が罪など犯していないことは知っていますが、心変わりをした男と婚約を続けるのはつらいでしょう」


「ええ……」


 私はロッド辺境伯の提案をのむことにしました。だって破棄は覆せないとしても断罪は避けたかったのです。

 彼はにこっと笑って私の手を取りました。


「リース殿、一つ提案があるのだが」


「え?」


「私は36歳、この年になっても妻がいなくてね、周りも煩いんだ。だから君とある契約を結びたい」


「……」


 私は彼からされた提案を聞いて、婚約破棄された女なんぞ確かに次の婚約者を見つけるのは難しいと考えます。それにすごすごと家に帰ったら多分お父様とお義母様に家を追い出される可能性も高いです。


「……君が真実愛する相手を見つけたら婚約を解消するというのでどうだろう?」


「どうしてそこまでしてくれるのですか?」


「私も昔、殿下の姉君に同じように公衆の面前で婚約破棄を宣言されてね、君のことを他人事だと思えなかったのさ」


 私が生まれる前、王女が婚約破棄を宣言し、その破棄をされた相手は……。辺境に据えられたと。


「王女の心変わりを見抜けなくて、まんまと弟に彼女を奪われ、無実の罪で辺境送りさ」


「……それは」


「だから君のことは見てられなくてね」


 私は彼の言葉を聞いて、似たようなことを一定周期でしている王族なのですわねとため息をつきました。さすがに殿下があんなことをするとは思っていなかった私も甘かったですが。


「契約をお受けします」


「では破棄を受けいれ、私と婚約をすることを殿下に伝えよう」


 この申し出に殿下はのったようです。妹はどうして修道院送りにしないのよ! と怒っていたようですが。そして……。


「君の無実は証明された、嘘をついていた君の妹と殿下は陛下が処断されるそうだ」


 私はある時、刺繍をしてながら彼の横に座っていると、にこっと笑った彼が私にこう言いました。


「レイル様」


「これで君は自由だ」


「ほら見てください、綺麗にできましたわよ」


 私はレイル様ににっこりと笑いかけ、出来上がった刺繍を見せました。ハンカチを手渡し、私がいる場所はここですわと笑いかけたのです。

 彼が動いてくれていたのは知っていました。こちらを見る彼に「さあ、契約はまだ続きます」と笑いかけたのでした。

読了ありがとうございます!

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