2-1 追跡
2-1
サラマンダー。
成体でも狐くらいの大きさ。
獲物を仕留めるために火を吐く。
森に生息しているが、本能的に手加減しているのか滅多に火事は起こさない。
だが、たまに起こす。
そのために、発見されると即討伐命令が出される。
クマより大きいサラマンダー。
炎の温度も上がっている。
目撃証言、討伐記録は少ないがある。
ノアたちが初めて見つけたわけではない。
女王バチのような存在だと言われているが詳細不明。
火竜。
家よりも大きい。
極端に高い温度の炎を吐く。
平均的な兵士が槍で突いても貫けない鱗を持つ。
サラマンダーの顔はトカゲに似ているが、火竜の顔は鰐に似ている。
極めて危険。
討伐には入念な準備が必要。
「俺とシドは火竜を追う。あんたらはどうする?」
「俺たちは街の連中の墓を作る」
と、ダンが答えた。
火はすでに消えていた。
燃えるものはすべて燃え尽きた。
墓を作ると言っていた冒険者たちは穴を掘ってはいない。
埋めるべきものがないのは一目でわかる。
だから、人数分の墓標だけを作るつもりだった。
「終わったら、お前達を追いかける」
「止めといたほうがいい」
「仇、とらねぇと」
「わかった。ギルドに情報を残していく」
「・・・なあ、ノア。間に合ったと思うか?」
「なにが?」
「もし俺たちがサラマンダーを退治してすぐに街に戻ったら、間に合ったと思うか?」
「・・・わからない。火竜は俺たちが街を出てすぐに着たのかもしれない。そうじゃないのかもしれない」
「まあ、そうだな・・・」
気休めではなく、本当にわからない。
空が割れて以来、未来のことは本当になにもわからなくなった。
空を眺める。
池の表面に張った氷を割ったような亀裂がある。
「やっぱりあんなのあっちゃダメだよな」
ノアは街の周囲を調べていたシドを探した。
「いたいた。何か見つかったか?」
「足跡があるにはあった」
「追えるか?」
「おおざっぱな方向しかわからないな。あれも一応、野生動物だ」
足跡をつけたのは戦っている間だけ。
その後は、痕跡を残さないよう器用に歩いている。
「あれの向こう側にはもっと危ないヤツがいるってことかな?」
ノアは空の亀裂を見上げる。
足跡を消して歩くということは、火竜を捕食する生物がいる可能性を示唆している。
「ロクに文字も読めないくせに頭が回るじゃないか」
「なめるな。仕事で必要な分は読める。あと、動物ならこっちのほうが詳しい」
「そりゃ、悪かった。あの方向にはでかい街があったはずだ。とりあえず、そこに向かおう」