表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/14

1-1 酒場の二人

1-1


それは少々、風変わりな二人だった。


一人は槍と盾、最低限胴を覆う鎧。

一人はフードのついたボロボロのマントをかぶっている。


一見すると、いかにもフリーの冒険者、傭兵、賞金稼ぎだという風体だ。

だが、なにかが違う。


数多の冒険者を見てきた酒場の主だから気がついた小さな違和感。


「シド、そっちの棚にあるソースを取ってくれないか?」


マントの男が言った。


「ノア、自分で取れ」


鎧の男が言った。


マントの男がノア。

鎧の男がシドと言うらしい。


「いや、高いところは・・・」

「ああ・・・そうか。わかったよ」


シドが棚においてあった共用のソースをノアに渡した。


これだ、と店主は思った。

鎧の男は一見して、過去に騎士階級だったことがわかる。

なんらかの理由で没落して野にくだったのだろう。

一方、マントの男はどうみてもド平民だ。


没落してもそれらしく振る舞うのが騎士というものだ。

明らかに平民な男にソースを取ってあげるというのはなかなかない。


そう思うと、フードがなんだか不気味に見えてくる。


関わらんとこ。


酒場の店主はいつもどおり無関心を装うことにした。


「よーっ。みんな、揃ってるな」


にぎわっている酒場のなかでも、店のすみずみまで届く大声。

ここいら一体の冒険者たちの顔役扱いされている大男、ダン。


「仕事を持ってきてやったぜ」


ダンは鎧を着こんだ剣士をつれている。

こっちは正規の騎士様のようだ。


「こいつが今回の依頼人だ。内容はサラマンダー退治。人数は多いほうがいい---やるヤツは?」


飲み食いしていた男たちが一斉に手をあげる。


さっきのダンも手を上げる。

ノアは・・・。


(なにをやってるんだ、アイツは?)


ノアは手を上げていると言えばあげている。

上げていないと言えばあげていない。


腕を肩の位置まで上げて、まっすぐ伸ばしている。


「見ない顔だな?」


ダンがノアとシドに声をかける。


「ああ。最近、流れてきたシドってもんだ。こっちはノア」

「お前は・・・元反乱軍か?」

「まあ、そんなところだ」

「そっちの妙なポーズのやつは?」

「ポーズは気にしないでやってくれ。昔の怪我のせいで肩が上がらないんだ」

「こいつが盾持ちで、あんたが槍を?」

「どっちも俺が使う」

「じゃあ、こいつは荷物持ちか?」

「いや、ちゃんと戦闘にも参加するよ」

「ふぅん・・・ま、足だけはひっぱんなよ」


ダンは店内を一周して、人数を確認した。


「よし。出発は明日の昼だ。この店の前に集合しろ」


ウース。

と、だるそうな返事があちこちから上がった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ