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見るに見かねて掃除と料理をしてあげたら、また来てねと言われた

 美海の家のすぐ近くにドラッグストアがあったのは天の助けか。

 僕はクソ暑い中、速やかに出動。

 収納ボックスとハンガーとその他諸々を買って、ついでに晩ごはんの食材も適当に買って、汗だくになりながら帰還する。


 アクエリアスで水分補給をして、エアコンの冷気で体の熱を下げたら、孤独な戦いの始まりだ。


「美海。そこの洗濯物の山を自分で仕分けなさい」

「ええー。どこに何があるのか分かるから、いいもん」


「良くないの! 片付けられない子はすぐにそう言うんだから! 思えば、合宿の帰り支度の時点で気付くべきだった!! じゃあ、僕が勝手に仕分けるけど、下着が出て来ても普通に処理するからね? いいんだね?」


「むぅ。分かったもん。女の子の下着を処理するとか、絶対に大晴くんはおかしいと思う」

「なにか?」

「ふぇ。な、なんでもないよ?」


 僕はドラッグストアで買ってきた洗濯カゴを洗濯機の横に設置して、「今日からは脱いだ服はこの中にいれるんだよ?」と美海に言い含めた。

 なにか言いたそうな顔をしていたので、もう一度同じセリフを繰り返すと、「あぅ」と素直に頷いた。


 やはり相手と交渉する時にはドラクエシステムが一番。

 意に添わぬ返答は、聞こえなかった事にして同じ問いをリフレイン。

 これに限る。


「ここに収納ボックス置くから、タオルや下着はここに入れるんだよ」

「え。でも、それだといちいち出したりしまったりするのが面倒だよ?」


「床に放置してたら衛生的にも良くないし、何より見た目が最悪でしょう! そんな事を言うなら、僕はもう2度と来ないよ!?」

「あうぅ。分かった。ちゃんとします。だから、また来てほしいな」


 それは美海の態度次第だ。


 それから、傷みやすい衣類や下着の類を洗濯ネットに入れるように言ったのち、クリーニングから返ってきたまま捨てられていた高校の制服などの服をハンガーにかける。

 そもそも、ハンガーが一本もないってどういうことだ。


 アメリカにはハンガーって存在しないの?


 弥子さんのお店で買ったオシャレ着たちも、廊下の端で泣いていたので救出してハンガーを通したのちに、組み立て式のハンガーラックが手つかずの状態で放置されていたのでそれを手早く展開して引っかけた。


 繰り返すが、散らかっていたものの9割は衣類だったので、これでほぼ正常な家の玄関になったはずである。


「わぁ。すごい。大晴くん、収納上手。お嫁さんになれるね」

「美海はお嫁さんになれないと思うよ。いい? ちゃんとさっきから言ってる事をサボらないでするんだよ? 週に1度はチェックしに来るからね?」


「ほわぁ。大晴くん、週に1度遊びに来てくれるの?」

「美海? これはね、遊びじゃないんだよ! 君がまともな大人になれるかどうかの今が分水嶺なの! 僕のチェックに引っ掛かったら、ゲームの充電器とかコード、一式全部持って帰るからね?」


「はぅ。大晴くん、結構束縛するタイプ……」

「いいね!?」


 どうして僕は、学校のヒロインの家に来て、母親みたいな事をしているのか。

 僕にとって母親の記憶なんてまるでないのに、多分これは正しい母親の行動のように思えて、母性と言うのは与えられなくても宿るものなのだと確信した。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「あ。いい匂いがしてきた。大晴くん。大晴くん。晩ごはんはなぁに?」

「ドラッグストアで買えるものしかないから、ハンバーグハヤシライスを作ってるよ。お昼がカレーだったから、なんか似たようなものになっちゃったけど」


 美海はご飯を貰う前だけ素直になる猫みたいに、いそいそと炊飯器の前に行って体育座りをする。

 見ていてもご飯が早く炊ける訳じゃないんだけど。


 市販のハンバーグをそのまま使うのは芸がないので、固形のチーズを差し込んで、そちらを裏面にして焼き色を付ける。

 良い感じになったら、ハヤシソースにハンバーグを叩き込んで、味が染みるまで煮込む。


「大晴くん。大晴くん」

「もうすぐできるよ。あとちょっと我慢して」


「むぅ。違うもん。見て、見て。これ、ポチったの」

「なに? ああ、割烹着かっぽうぎ。えらいじゃない。美海も料理する気になったんだ?」



「違うよ。大晴くんのだもん。週に1回以上の頻度でご飯作ってもらうから」

「美海は出会った頃と比べて、遠慮がなくなったよね」



 炊飯器がファンファーレを鳴らして、ご飯が炊けましたよと告げる。

 ハヤシソースも良い塩梅。

 さて、配膳をと思ったら、既に美海がデカいお皿にご飯をこんもりと盛って僕の後ろに立っていた。


 僕の三次元センサーをかい潜った隠密スキルには拍手を送ってあげよう。


「ほわぁ。大晴くん。大晴くん」

「はいはい。どうぞ。召し上がれ」



◆◇◆◇◆◇◆◇



 守沢家。


『そろそろホノカは大晴くんのところに戻ってみますね! きっと、なんだか凄いことになっている気がします! ふんすっ!!』

「やー! どーしよ! 美海ちゃんが大人の階段上ってたら! あたし、明日から美海ちゃんの事、美海先輩って呼ばなくちゃだねー!」


『牡丹さん、今日はお世話になりましたぁ! 牡丹さんのおかげで、大晴くんと美海さんのデートをステキに演出する事ができました!』


「あはは、お役に立てたなら良かった! ただね、ホノカちゃん? ホノカちゃんだって、来間の彼女なんだから、今日の終わりにちょっとくらいワガママ言っても良いんだよ? って言うか、ワガママ言いなさい!」


『ほあっ!? ワガママですか?』

「そう、ワガママ! 来間が誰とどうなるのかはまだ分からないけど、ホノカちゃんだって、たくさん思い出を作って良いんだからね?」


『牡丹さん……。はい! ありがとうございます!!』



◆◇◆◇◆◇◆◇



 美海に夏場の鍋を使った料理の保存方法について真剣なレクチャーをしていたところ、スマホにホノカが帰ってきた。

 急にいなくなったことに抗議したかったけど、それ以上に帰って来てくれた喜びが勝って、僕は静かに幸せを噛み締めた。


『大晴くん! 美海さん! 2人で何をしてましたか?』


 僕と美海は声を揃える。


「地獄を浄化してたよ」

「大晴くんが世話焼き幼馴染みたいになってたの」


 声は揃わなかった。


 僕と美海との間には、まだまだ解決しなければならない壁がいくつもあるのだから、それは当然なのである。

「面白かった!」

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