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デートの開幕

 涼風動物園は、市役所の通りを真っ直ぐ3キロ進んだところにある、良い言い方をすればそこそこ年季の入った施設。

 身も蓋も言い方をすると、出来てから20何年経っているらしく、古い。


 ただ、手入れは行き届いているので、その古さをびと表現できなくもない。

 何より、最新のアミューズメントパークではないので、夏休みなのに動物見に来たのか人混みを見物しに来たのか分からない、なんて憂き目に遭わないで済むのは助かる。


「来間くん。来間くん」

「トイレならゲートの脇にあるよ」


「むぅ。違うもん。初めての動物園の感想言おうとしたのに。ホノカちゃん。来間くんがひどい」

『大晴くん! めっ! ですよぉ! 今日は可愛い女の子を2人もエスコートするんです! ちゃんとジェントルマンとしての対応を求めます!』


 ホノカに言われると、それはもう要求ではなく決定事項として処理される。

 僕はモード反転、裏コードザ・ジェントルマンへ移行。


「じゃあ、入園料は僕が持つよ。初デートってそういうものらしいし」

「ほわっ。来間くんがなんだかイケメンみたいな事言ってる。ホノかちゃん、ホノカちゃん。来間くんがちょっと変かも」


『大晴くん、完璧主義ですから! 実はデートのノウハウは既に学習済みなのです!』

「そうなんだ。この前一緒に行ったお買い物をデートにカウントしてないとこ。ちょっと嬉しいな。えへへ」


 僕は、入園ゲートのお姉さんに「うちの二次元のカノジョの料金ってどうなりますか?」と辛抱強く説明した。

 「お気持ちだけで結構です!」と何度言っても受け取ってもらえなかったので、近くにあった募金箱に高校生1人分の料金をダンクシュートする事で決着とする。


「さあ、入ろうか。まずは何から見たい? 2人の希望通りに行くよ」


 予習は完璧。

 シミュレーションで6パターンのルートも計算済み。

 始めようじゃないか。完璧なデートを。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「あっ。ふれあい動物コーナーが空いてるね。ちょっと触れあっていく?」

「え。来間くん。来間くん」


 何やら小早川さんが後ずさりする。

 ふれあい動物コーナーには、ウサギとモルモットとカピバラしかいない。

 このラインナップで怖がるとか、もしかして小早川さん、動物苦手なのだろうか。


 じゃあ、どうして動物園に行きたいとか言い出したのか。

 これは問いただす必要がある。


「もしかして、怖い?」


「うん。だって、私がしゃがんで、ウサギさんにおいでって言ったら、何故かスカートの中に入り込まれたり。あとは胸元に飛び込んできたりするかも」


「そんなダークネスな展開はね、現実では起きないんだよ?」

「……うん。そうだよね。大丈夫。今日は、可愛い下着にしたもん」


 問いただしたら、実にしょうもない答えが返ってきた。

 僕がウサギだったら、あらぬ疑いをかけられて泣いていると思う。

 うちの連れが失礼な言動をしたお詫びに、ニンジンスティックを買ってあげよう。


「すみません。一袋ください」

「はい。どうぞ。結構ガツガツ食べますから、噛まれないように気を付けてね」


 係員のおじさんから、ウサギたちへの供物を受け取る。

 200円もしたのだから、さぞかし喜ばれるだろう。


「ほら、小早川さん。餌をあげてみよう」

「う。じゃあ、ちょっとだけだよ?」


「いや、全部あげようよ……。可哀想でしょ、ちょっとでヤメたら」

『美海さん、頑張ってー! ホノカは応援してますよー!!』


 小早川さん、緊急ウサギクエストを受注する。

 ウサギたちの群れの端に立って、ニンジンスティックを取り出すと「おい! あの人間ニンジン持っとるやんけ!!」と、草食動物の目がギラついた。


「わ。わわ。来間くん。なんかいっぱい来たよ?」

「さすが学校のヒロイン、動物にも好かれるんだなぁ」


「わぁ。なんだか急いで食べてる。慌てないで。いっぱいあるよ」

「とりあえず、写真でも撮っておこうか?」

『大晴くん、惜しいです! 写真を撮るのはとてもポイントが高いです! 形に残る思い出ですから! ただ、一緒に映らないとダメですよぉ!』


 なるほど。ホノカの言う通り。

 このまま撮影したら、ただ小早川さんが可愛いだけの写真になってしまう。


 学校で売り捌いたらさぞかし儲かるだろうけども、そんな用途に使う予定はないし、他の三次元に小早川さんが不埒な視線を向けられるのも何となく腹が立つ。


「小早川さん。一緒に写真を撮ろうか」

「え。あ。あぅ。どうしたの、来間くん。なんだか、女の子に慣れてるイケメンみたい」


「ホノカが教えてくれたんだよ。デートの写真はツーショットが基本なんだってさ」

「そうなんだ。うん。写真、欲しい。撮ろっ」


 デートの際、自撮りで苦戦するカップルは多いと聞く。

 意外とスマホを持って2人がフレームに入った状態を維持しつつ、シャッターボタンを押すには技術が必要であり、初心者はそこで手間取るらしい。


 だけど、僕たちにその心配は無用。


『それでは、撮りますよぉ! 大晴くん、デートでは女子の肩を抱いてあげるのがマナーです! さあ、美海さんの肩を抱き寄せて!』


「あ、そうなの? はい、じゃあ小早川さん。失礼して。よっと」

「ほわぁっ。え。あの。あぅ」


「小早川さん、ちゃんとカメラ見ないと。何回も撮り直すのは面倒だから。あ、しゃがみっぱなしで疲れた?」

「むぅ。むぅぅ。……そうじゃないもん。来間くん、今日は結構いじわる」


『やや! シャッターチャンスです! 連射ですよぉ! それそれそれー!!!』


 ホノカ先生はカメラの撮影技術にも造詣が深い。

 その証拠に、彼女の撮ってくれた写真には、僕と小早川さんが絶妙の距離感で画面に収まっていた。


 デートの出足としては、良好なスタートなのではないだろうか。

「面白かった!」

「続きが気になる!」

「更新されたら次話も読みたい!」

等々、少しでも思って頂けたら、下にございます【☆☆☆☆☆】から作品を応援する事できますので、【★★★★★】にして頂けるととても励みになります!!


新参者ですので、皆様の応援がモチベーションでございます!!


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