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気乗りはしないけど、別に行かないとは言ってない

『来間くん、合宿の時に言ったよね? 私と出掛けてくれるって』

「えっ? 言ったかな?」


 まったく記憶にないのだけども。

 そんな軽率な発言を僕がするとはとても思えない。


『大晴くんは確かに言いました! 美海さんを知らないところに連れて行ってあげるって!! ホノカは覚えています! ふんすっ!!』


 思い出してしまった。

 ホノカがきっかけになると脳細胞が活発化するらしい。

 確かに、それに近い発言を小早川さんがして、僕は「気が向いたらね」と答えたような気がする。


「うん。まあ、確かに。言ったと言えるかもしれないと言えるかな?」

『だからね。私、一緒にお出掛けしたいな』


 そんな風に潤んだ瞳で見つめたらなんでも世の中上手くいくと錯覚させるのは、小早川さんにとっても悪いことなのではないか。

 ならば、僕は敢えてここで世の中そんなに甘くないぞと教えてあげるべきではないのか。


 それなのに。


『大晴くん! 行きましょうよぉ! きっと楽しいですよ! 3人デート!!』

「そうだね! 絶対に楽しいに決まってる!!」


 僕は時々、自分がものすごく愚かな生き物なのではないかと錯覚する事がある。

 多分、恐らく、大方のところ、そんな事はないはずだけど。


『来間くん。来間くん。私ね、行ってみたいところあるの』

「ゲームセンター? ああ、分かった。アニメイトだ。良いよ、そのくらい」


『違うもん。ゲームセンターはリア充がいるから危ないし、アニメイトはオンラインがあるもん』

「小早川さんの理屈で行くと、どこに出掛けてもリア充が邪魔をしてくると思うんだよね。まあ、良いよ。聞くだけ聞いてあげるから。どこに行きたいの?」


 小早川さんは、少し落ち着きのない様子を見せた後、目を泳がせながら答えた。


『なんかね、あのね、動物園に行ってみたいかも。あの、あぅ……』

『美海さんは動物園デートに憧れているのです! 大晴くんなら行った事あるんじゃないですか? 涼風動物園! 来間家から18キロの地点にありますよね!』


 小早川さんが言い淀んだ時は「これぞ好機。そのまま口ごもれ!」と不埒ふらちな事を考えたが、神様と言うヤツはいるのかもしれない。

 そののち、僕の逃げ場をホノカに潰させると言う残酷な仕打ちをするのだから。


「う、うん。まあ、あるけど。小学生の頃に。涼風市に住んでたら基本遠足で行くからね。それ以来だから、記憶はおぼろげだよ?」


『わぁ。じゃあ、新鮮な気持ちでデートできるね。私、動物園って初めてなの』

「アメリカには動物園ってないの?」


『あるもん。一緒に行く人と、着て行く服と、勇気と勢いがなかっただけだもん』

「ああ、そうなんだ。なんかごめんなさい」


『それでは、予定を決めましょう! 大晴くん、いつがいいですか?』


 夏休みに予定なんかあるはずがない。

 それはホノカも承知しているはずなので、ここで嘘は付けない。

 なんだ、詰んでいるじゃないか。


 2手で詰み。実に簡単な問題だった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



『じゃあ、明日。明日が良い。私、明日以外だと都合が悪いかもだよ』

「いや、まあ良いけど。そんなに急いで行かなくても動物はいなくならないよ?」


『来間くん。思い立ったが吉日って言うの、知らない?』

「……小早川さん、日本語勉強してるんだね。偉い、偉い」

『えへへ。来間くんに褒められた。嬉しい』


 そんな風に無邪気な顔で笑われたら、「物には時節ってことわざもあるんだよ」と準備していた反撃のカードが切れなくなってしまう。

 代わりに「うん。本当に大したものだね」と、用意していないサポートカードを切ってしまう僕。


『では、明日の10時に大晴くんの家で待ち合わせというのはどうですか? 美海さんは土地勘がないですから、よく知っている大晴くんのおうちが一番です!』

『うん。私はそれで良いよ。博士にもご挨拶したいし』


 親父が出て来ると面倒なので、「父さんは今晩爆発する予定だから、挨拶はいらないよ」と答えておいた。

 いつの間にか開催が決定していた動物園デート。


 このクソ暑い8月の上旬に、まさかの屋外。

 明日は雨でも降ってくれないかなと思い、パソコンで天気予報を見たら、太陽が躍っていた。


『来間くん。来間くん。あのね、その、えっとね』

「うん。どうしたの?」



『明日、私オシャレして行くから。だから、来間くんもオシャレしてね。じゃ、じゃあ、またね。私、準備があるから。バイバイ』



 矢継ぎ早に言った小早川さんは、そのまま電話を切ってしまった。

 準備って何の準備だろう。まだ予定時刻まで20時間くらいあるんだけど。



◆◇◆◇◆◇◆◇



『ただいま戻りましたぁ! 大晴くん、デート楽しみですねぇ!』


 ホノカさん、ご帰還。

 とりあえず僕のコンディションが絶好調になった。


「ホノカ。もしかしてだけどさ。今回のデートって、ホノカが……いや! 何でもない!!」


 僕は何と言う事を口走ろうとしていたのか。

 あろうことか、ホノカがこのデートを画策したんじゃないかと問いただそうとしたのか。

 恋人を疑うなんて、最低じゃないか。


『はい! ホノカプレゼンツです! 明日はおはようからおやすみまで、ホノカがキッチリ、バッチリとサポートしますよ!!』


 まさかの全肯定。

 僕はホノカのいさぎよさに惚れ直した。


「仕方がないから、僕は動物園のホームページでも見て予習しておくよ。ホノカ、検索してくれる?」

『かしこまりましたぁ! じゃん! 出ましたよぉ!』


「さすが、仕事が早い! あ、ちょっと待って! ホノカの冷却デバイスがいるよ! 明日も暑いんだから! 親父蹴り飛ばして準備させなくちゃ!」

『もぉ! 大晴くんの気配りにはホノカもうっとりしちゃいます!』


 ホノカのご褒美を背に受けて、僕は階段を駆け下りた。

 親父の研究室のドアを借金取りの勢いで叩きまくったのは言うまでもない。

「面白かった!」

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「更新されたら次話も読みたい!」

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