三次元の温泉回
高虎先輩が食後に言った。
「1時間くらい食後の休憩を取ったら、温泉に入ろうでござる」と。
温泉があるんですか?
「マジ!? すごっ! あ、でも、どうせ混浴狙いなんでしょ? やだー。やらしいんだけどー」
守沢が最近本当にアレな発言を繰り返す。
「先輩。自意識過剰な三次元ほど腹立たしいものはないですね」
「大晴くんの言う事はいつも実に筋が通っているでござるなぁ」
「やっ! 自分は混浴とか、む、無理っす!! そんな、お見せできるような体でもないので! あの、皆さんだけでどうぞ! あと、できれば撮影させてくださいっす!!」
自分は安全なところから、ハレンチな写真を撮らせろと言う玉木さん。
何を言っているんだ、君は。
「タマちゃん。大丈夫だよ。混浴の温泉に入る時は、不思議な白い光で見えちゃいけないところが隠れるようになってるから。あとね、貧乳の子が巨乳の子を見てちょっとショック受けるシーンとか、私、大好物なの。だからね、タマちゃん? 私、巨乳の役やるから、タマちゃん。ね?」
「美海せんぱぁぁぁい!!!」
本当に、この子たちは何を言っているのだろう。
この場でエチケットを持つのは僕と先輩だけとは、嘆かわしい。
「そんなの、女子から入ればいいに決まっているじゃない。僕と先輩は後でいいよ」
「あいや、待たれよ大晴くん! 同時に入れるでござるよ!!」
信じていた高虎先輩までもが、おかしなことを言い出した。
ヤメてください。僕はまだ真っ当な人間でいたいのです。
「温泉、露天風呂でござるから。もちろん、男湯と女湯で別れているでござるよ」
「マジですか」
松雪家の別荘を甘く見過ぎていた。
こんな、年に数回しか使わない施設に、男女別れた露天風呂を?
僕みたいな平民の発想ではとてもたどり着けないファビュラスの極致。
「松雪先輩、松雪先輩。お風呂の仕切り、押したら倒れますか? 倒れるなら私、一度でいいからラッキースケベを自分の手で演出してみたいです。来間くんもどうかな? 牡丹ちゃんの日に焼けた胸とか、タマちゃんの小っちゃい魅力たっぷりのお尻とか、見られるよ?」
「美海ちゃぁぁぁん!!!」
「美海せんぱぁぁぁい!!!」
小早川さんの危険な好奇心は女子チームによって排除された。
この子の頭の中はどうなっているのだろうか。
ノートンかマカフィー辺りでセキュリティチェックしたら、ものすごい数のエラーが検出されそうである。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『では大晴くん! 松雪さん! ホノカも女の子チームでお風呂に行きます!!』
「分かったよ。楽しんできてね」
「大晴くん、やけに聞き分けがいいね? てっきり限界まで抵抗すると思ったのに」
「いえ。さっき部屋でバスタオル姿のホノカを堪能しましたから」
「大晴くんさ、届かない夢を見させるようなことを言うなよ」
高虎先輩がかつてないほど悲し気な表情で脱衣所に入って行った。
僕もそれに続く。
ホノカは小早川さんに預けた。
何となく危険な香りが漂っていたが、誰に預けても結局同じ結末が待っているような気がしたので、これはどうしようもない。
「おお! すごいですね! なんですか、これ。檜風呂ってヤツですか!?」
「確かそうだったと思うけど。小生もここに来るのは3年ぶりだから、イマイチ記憶が定かじゃないんだよね」
「聞くまでもない事ですけど、一応聞いておきますね。その言い方だと、他にも別荘がありますね?」
「あとは、スキー場の近くと、避暑地にあるよ。次はそっちに行くかい?」
「小早川さんの前では絶対に言わないで下さい。もう、面倒なことになるのが目に見えるので。本当にお願いします」
「やれやれ。大晴くんと小早川氏はじれじれ両片思いパターンなのか。まあ、それはそれで、見ている分には楽しいから良いけどね」
高虎先輩、もうのぼせたのだろうか。
ちょっと何を言っているのか分からない。
「それより、耳を澄ませてみるかい? 温泉回のお約束が聞こえるかもしれないよ」
「ああ、なんとかちゃん、おっぱい大きい、触らせてー。みたいなヤツですか? アニメなら大好きなシチュエーションですけど、三次元相手ですよ?」
「まあまあ、良いじゃないか。これも余興のひとつ、思い出の1ページだよ」
「そんな事言って、自分も大して興味ないくせに。分かりましたよ。ちょっとだけですよ」
僕と高虎先輩は、湯船に波紋すら立てず、自然と一体化した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ちょ、待って、美海ちゃん! お願いだから、待って、1回待って!! なんで体洗う前から胸触ってくんの!? シャワー浴びたけど、汗くさいっしょ!?」
「うん。平気だよ。むしろ、それがご褒美」
「じ、自分は、体洗ったら先に出てるっすね……。先輩方で楽しんでくだひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「タマちゃん、スキだらけだよ。戦場で敵に背中を取られるなんて、甘いと思う」
「やめっ、やめてくだしゃい!! じ、自分の体なんか、全然アレっすから! ほら、守沢先輩の方がおっぱい大きいっすよ! あっち行ってください!!」
「ちょっ、えっ、陽菜乃ちゃん!? うわわ、ホントに来たぁぁ!! 美海ちゃん、ヤメよ? もうあたしら、高校生なんだから、お風呂は静かに入らにゃぁぁぁぁっ!!」
『美海さん! カメラモード、湯けむり加工仕様で立ち上げましたぁ!』
「そっか。じゃあ、撮ろう。ホノカちゃん」
「美海ちゃぁぁぁん!!!」
「来間先輩! 松雪先輩! た、たしゅけて!! こっちに来て助けてくださいっすぅぅぅぅ!!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
僕は、わずか3分の時間、聴力に全集中をかけた。
そして、色々と分かったことがある。
「高虎先輩。だから言ったじゃないですか」
「うむ。小生が間違っていたようだね」
「まあまあ地獄ですよ。あっち」
「小生たちは湯を楽しもう。背中の流しっこでもしようか」
近隣に家がなくて本当に良かった。
下手したら、通報されるレベルの大騒ぎである。
チーム三次元の2人、ご愁傷様。
僕はなんとなくだけど、このオチの予想はついていたと付言しておく。
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