鬼コーチ・来間大晴、学校のヒロインをしごく
「それじゃあ、僕と守沢で1人ずつ担当しようか」
「おっしゃー! 任せろー! じゃあ、あたしにコーチして欲しい人!」
「はいっす!」
「はい。私も」
何故か僕がぼっちになる事案発生。
「いやー! なんか、ごめんね、来間? あたしがモテモテでさぁー! あっはっは!」
「別に。全然悔しくないけど? 本当に、全然だから。そういう穿った見方、ヤメてほしいな。本当にさ」
『美海さんは大晴くんじゃダメなんですかぁ? 大晴くん、教えるの上手ですよ!』
「うっ。……だって、恥ずかしいもん」
僕がぼっちではない事が証明された。
「小早川さん、気にする事はないよ。みんな、生まれた時はお母さんのお腹の中で浮いてるんだから。僕の指導を受けたら、瞬く間に泳げるようになるよ」
「わー。来間が必死に美海ちゃんを勧誘し始めたよ。やだやだ、見苦しいぞー」
「大晴くんにしては珍しく、結構饒舌でござるな。どうやら、仲間外れにされなかったのが嬉しかったと見えるでござる」
チアブルー(休業中)とチアイエローがうるさい。
もう、2人で併せポーズでも取っててもらえます?
『美海さん、大晴くんに習いましょう! ホノカも精一杯サポートします!』
「うー。来間くん……。優しくしてくれる?」
「ううん? ビシバシしごくよ? 優しくしてたら何も覚えられないから」
「美海ちゃんの潤んだ瞳からの童貞を殺すセリフをスルーとか。さすが来間」
「大晴くんはブレないでござるねぇ。そこに痺れる憧れるでござる」
こうして、水泳特訓のチーム分けが完了した。
守沢のチーム・ぬるま湯。
僕のチーム・ガチ。
どっちが有能なコーチか、白黒つけようじゃないか。
「ところで、陽菜乃ちゃんはなんであたしを選んだん?」
「やっ、だって来間先輩、絶対ガチるじゃないっすか! 完璧主義者っぽいとこありますし! 嫌っすよ、プライベートビーチで鬼コーチは!!」
僕は、小早川さんのやる気を引き出す事から着手する。
「大丈夫。絶対に今日中に泳げるようになろう。それまで晩ごはんは食べさせないからね。よし、元気出していこうか」
「「「ああ……」」」
なにやら、失礼なため息が3つ重なった気がするのは、僕の空耳だろうか。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ひとまず、小早川さんがどの程度の泳力を持っているのか見極める事にした。
「じゃあ、自分なりのやり方でいいから、泳いでみてくれる?」
「うん。分かった」
そして、浅瀬でジタバタする小早川さん。
おもちゃ屋さんの前で駄々こねる幼稚園児かな?
「どうだった?」
「うん。だいたい分かったよ」
これは、僕でも無理かもしれない。
「まずは、水に慣れよう。僕が手を引っ張るから、体の力を抜いて、浮かぶことだけに集中してね」
『美海さん、気楽にですよ! ほら、ホノカを見て下さい!! こんな感じです!!』
ホノカさんinバカンスデバイス。
バカンスデバイスは水に浮くと言う親切設計。
親父もなかなかにくい仕事をする。
そして、デバイスの中で海にプカプカ浮かぶホノカ。
正直、こっちをずっと眺めていたい。
「むぅ。来間くん、今、私のこと忘れてたでしょ」
バレてしまった。
意外と人の表情を読むのが上手い、学校のヒロイン。
「うん。どうにか浮かぶことはできて、ホッとしたよ」
「なんだか、すごくバカにされてる気がする」
「とんでもない。それじゃあ、バタ足してみようか。できる?」
「それくらいできるもん。んっ。んんっ」
意外と綺麗なバタ足が出来ている。
もしかして、泳げないんじゃなくて、泳いだことがないから出来ないと思い込んでいるパターンなのではないのか。
もしそうならば、試してみる価値はある。
僕は、スッと小早川さんの両手を離してみた。
「わっぷっ。………………」
普通に沈んだ。
足のつく浅瀬で良かった。
一歩間違えたら溺れているじゃないか。
まったく、危ない事をする。
「むぅ。来間くん。ひどい。もうヤダ。私、泳げなくて良いもん」
「拗ねないでよ。今のは小早川さんの可能性に賭けてみたんだ」
「アニメだったら、慌てて助けて、胸触ってラッキースケベな展開なのに。来間くん、助けてくれなかった。ひどい」
「だってここ、三次元だもの。それに、足がつくじゃないか。と言うか、何なら膝もつくよ?」
「来間くん。信じてたのに」
「分かった。悪かったよ。ごめん。今度は手を離さないから」
「ホント? 2度と手を離さない?」
「ああ、うん。ホント、ホント」
そして、バタ足再開。
フォームは綺麗なのに、沈んでいく様はもっと綺麗なのだから現実って残酷。
しかも、小早川さんはどの特訓メニューも故障率が20%あると言うハードモード。
そして故障イコール、機嫌を損ねると言うひどいペナルティ。
なんだこのバランス調整ミスってる育成ゲームは。
ヒロインから育とうと言う意思が感じられない。
「さあ、そろそろ手を離してみるよ?」
「ダメ。絶対ダメだもん」
「いや、でも、手を離さないと特訓にならな」
「さっき来間くん、言ったもん。2度と手を離さないって。ね、ホノカちゃん」
『やや! 確かに、大晴くんはそう言っていました!!』
そしてハメ技である。
ダメだ、さすがに誇り高きゲーマーの僕でも、この育成ゲームはクリアできない。
「……分かったよ。それじゃあ、このまま引っ張るから。満足するまで泳いで良いよ」
「やたっ。来間くん、やっぱり優しかった。信じてたよ、私」
「あー。うん。来年は泳げるようになろうね」
「来間くんが教えてくれるなら、頑張ってみてもいいよ。えへへ」
それから、ご機嫌の回復した小早川さんを30分にわたり引っ張ったところで、僕はギブアップを宣言した。
なお、玉木さんも全然泳げるようになっていなかったので、守沢とのコーチ対決は引き分けである。
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