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海の撮影会と落ちこぼれが2人

「じゃあ、来間先輩! マントはためかせてそこの貝殻持ってくださいっす!」

「ごめん、玉木さん。コンセプトが全然分からないんだけど。それ、完全に僕を使って面白写真撮ろうとしてるよね?」


「てへぺろっす!」

「悪びれもせずに。その態度は、さすが撮り専。少しだけ尊敬するよ」


 仕方がないので、貝殻掴んでマントはためかせて、ついでにその辺を走り回ってあげた。

 多分、この写真を流出させられたら、僕は死ぬと思う。


「次はチアーズの併せポーズ撮るっすよ! チアレッドコンビと、チアイエローさん、お願いするっす!!」


「うん。いいよ」

『了解です!!』

「もー。しかたないなぁー、陽菜乃ちゃんは! 恥ずかしいけど、しょうがなくだよー? 特別だかんねー?」


 僕の隣では、下唇を噛み締める高虎先輩。


「ぐぬぅぅぅぅぅ! 小生は、小生はなんたるミスを!! チアーズの水着コスに参加できない、この哀しみ!! どうして、どうして小生は!!!」

「先輩。良ければマントと仮面、貸しますよ?」


 身長180センチの高虎先輩がどんなチアブルーの水着を着たのかは、正直興味がないと言えば噓になる。

 この人、本当に三次元の壁を越えて来るから。

 ただの女物の水着で女装したイケメンにならないところが恐ろしい。


「次、個別の撮影っすよ! チアイエロー先輩から行ってみるっすか!」

「えー! あたしが最初? もー、陽菜乃ちゃん、欲しがり過ぎっしょー!!」


「高虎先輩。オタク趣味ゼロの人がオタクの沼にハマって行く姿って言うのは、見ていて少し気持ちのいいものですね」

「大晴くんも分かってくれるのかい? 最初は無理やりさせていたのに、コスプレにのめり込んでくれると、衣装の作り甲斐があるんだよね」


「やーっ! いいっすよ! 今度は、もう少し胸寄せてみましょうか! 大丈夫っす! 自分たち以外に誰もいないっすから!! あー! いいっす、セクシーっすよ!!」


はまっている……。すでに土中、首まで……」

「まさに泥沼! 今度は守沢氏に何を着せようかな。腕が鳴るよ」


 そして、玉木さんは小早川さんとホノカの写真撮影も済ませる。

 彼女たちは役になり切るタイプなので、チアレッドのように少し照れて、元気ハツラツなポーズに終始した。


 どこかの三次元のように、乗せられてサービスポーズなどはしない。


「いやぁ! 良い写真がいっぱい撮れたっす! じゃあ、撮影会はこの辺りで……」


「タマちゃん? まだ終わってないよね。大事な子が1人残ってるもん」

『陽菜乃ちゃん! チアホワイトの写真も撮らなきゃですよ!! ふんすっ!!』


「え、いや、あの! じ、自分は、ちょっと、そーゆうのは早いって言うか! にゃ、か、カメラ返してくださいっす!」


 あろうことか、玉木さん、カメラを守沢に奪われる。

 この場で一番悪ノリしている、守沢に。

 ご愁傷様と言えば良いのか、胸の前で十字架きってアーメンと言えば良いのか。


「陽菜乃ちゃん、こっち向いてみよっか! あ、何て言うんだっけ、来間! 来間がイベントで退治したヤツ!」

「ああ、ローアングラー?」


「そそ、それ! 今日は無礼講ってことで! ローアングルから撮ってみようか!!」

「ひゃあっ!? だ、ダメっすよぉ! それは、カメコのギルティのひとつで!」


「やー! あたし、オタクじゃないから、分かんないんだよねー、そーゆうの!!」

「ひゃ、やめてくだしゃい! 許してくださいぃぃー!!!」


 その後、小早川さんとホノカ監督が満足するまで、玉木さんは守沢にいいようにされた。

 僕? ああ、特に興味ないから、高虎先輩とビーチボールで遊んでたけど?



◆◇◆◇◆◇◆◇



「さぁ! みんな、海で泳ごうよー! あそこの堤防まで競争しよー!!」

「守沢、はしゃいじゃって。仕方ないな。僕が相手をしてあげよう」


「お! 来間、珍しい! 言っとくけど、オタクに負ける牡丹ちゃんじゃないぞ?」

「そのセリフ、そっくりそのまま返すよ。オタクの泳力舐めたら泣くよ?」


「では、小生も参加するでござるかね! 全員で一等賞を競うでござる!!」


 盛り上がって来た。

 海水浴なんて、もう何年も来ていなかったけど、やっぱり泳いでなんぼ。

 しかも人がいないプライベートビーチが舞台となれば、誰気兼ねすることなく泳げる。



「あ。私は大丈夫です」

「えっと、自分も、大丈夫っすかね。あははー」



 この2人が輪を乱すのは珍しい。

 守沢ならばともかく。


「小早川さん。そう言えば、いつか泳げないとか言ってたような気がするんだけど」

「そんなことないもん」


「僕の目を見て言ってくれる?」

「ソンナコトナイヨ?」


 ダウト。

 文武両道で勇名を馳せる小早川さん、まさかのカナヅチ。


「そう言えば、うちの高校、水泳の授業なかったね」

「知らないもん」


「陽菜乃ちゃんも泳げないん? 運動得意だって言ってたじゃんか!」

「いや、水泳は無理っす。だって、人間って海の中に入ったら死ぬんすよ?」

「あ、泳げない子の常套句じょうとうくだ!」


「来間くん。私ね、実は悪魔の実を食べたの」

「そうなんだ。ちなみに、何の実を食べたの?」


「食べるならスケスケが良いな。絶対」

「ノータイムで嘘だって白状しないで欲しいな。せっかくノッてあげたのに」


 とりあえず、我々のチームに海水浴に来たのに泳げないと言う落ちこぼれが2人もいる事が判明した。


「どうするでござるか? みんなで砂のお城でも作るでござるか?」



「いや、ダメですよ。高虎先輩。海に来たら泳がなくちゃ。特訓ですね」

「おっ! 来間、分かってんじゃん! 万が一の時にも役立つしね! さあ、特訓だ!!」



「おおう。珍しいコンビが出来たでござるなぁ」


 時には三次元との共闘だってしてみるものである。

 海に来て泳げないなんて、水泳を楽しむ僕が悪者みたいじゃないか。


 僕の楽しい水泳の時間のために、2人には泳げるようになってもらおう。

「面白かった!」

「続きが気になる!」

「更新されたら次話も読みたい!」

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新参者ですので、皆様の応援がモチベーションでございます!!


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