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そんなはずないのに、意識してしまう

「来間くん。おはよう。偶然だね」

「お、おはよう。小早川さん」


 僕は何をたじろいでいるのか。

 ちょっと待て、どこかがおかしい。


 相手は、銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの美少女でスタイル抜群、文武両道な学校のヒロイン。

 それは分かっている。そして、それがどうした。


 そんなもの、彼女と出会った時から変わっていないのに、何を今更。

 しかし、そうなると、この現象に理由がつけられない。



 僕は今、小早川さんの事を意識したのか?



 いやいや、まさか。そんなバカな。

 自分でも分かっているじゃないか。

 学校のヒロイン。それがどうした。


 どんなに容姿が優れていようとも、相手は三次元。

 何を恐れる事がある。

 何をおののく事がある。


「ん? 来間くん、どうしたの? 私、なにかおかしいかな?」

「い、いや! 全然おかしくないよ? いつも通り、いつもと同じ」

「そっか。えへへ。良かった」


 これは良くない。

 何か、原因は分からないけど、これは悪い予兆だ。


「おっすー! 美海ちゃん、来間、おっはー! なに、早いね、2人とも! まだ生徒会室開けてないから、部室にも入れないっしょ!」

「ああ。良かった。守沢は今日も三次元だ。気の毒なくらい個性のない姿を見ていたら、心が落ち着いたよ。ありがとう」



「なんか分かんないけど、ケンカ売ってんな? チアシューターで撃ち抜くぞ?」

「守沢が僕の中で初めて役に立ったんだから、もっと喜べばいいのに」



 とりあえず、外は暑いので早いところ部室に避難するが吉。

 守沢の後ろにくっ付いて行って、部室の鍵をゲットする。


「1時間くらいしたら後輩が来るからさ、そしたら部室行くねー!」

「うん。待ってるね、牡丹ちゃん」

「無理して来なくて良いよ。お気遣いなく」


 鍵さえ手に入ればこっちのもの。

 部室でエアコン付けて、冷えた麦茶を飲むのだ。


「おはようございまっす! 先輩方! さすが、お早いっすね! 自分、一番乗りのつもりで来たのに、まだまだっす!!」


 玉木さんが部室の前で待っていた。

 朝から元気である。松岡修造属性の持主だな。


「さあ、中に入ろう。暑いし湿度は高いし、今日は外に出る日じゃないよ」


 そして僕の城へと帰還。

 三次元が増えたけど、そこはもう気にしたら負けなので、気にしない。

 僕は意外と負けず嫌いなのだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「ホノカ先輩! これ見て下さいっす! 今年の水着特集してる雑誌があったから、買って来たんすよ! 一緒に見ましょう!!」

『わぁ! それはステキです! あと、ホノカ先輩って響きがいいですねぇ。元気ハツラツ美少女な後輩に呼ばれるのはなかなか……。じゅるり』


 僕の恋人が部室に入って5分でさらわれた。

 玉木さんはフットワークが軽いので、注意しておかないとすぐにこうなる。


 しかも、オタクの知識とリア充の知識、両方を持ち合わせているのが実に厄介。

 その結果、水着のトレンドとか言う、僕が絶対に持ち得ないリア充情報で、僕のホノカを誘惑する。


 おのれ、ハイブリッドオタクめ。


「来間くん。来間くん。水着特集なら、私も持って来たよ」

「おお。夏アニメの水着特集! 今日発売だよね、この雑誌」


 小早川さんが取り出した雑誌も水着が満載。

 ただし、こちらは二次元の水着である。

 これこそオタクの正しい夏の嗜み。小早川さんは分かっている。


「一緒に見よ? ガチチアも載ってるよ」

「マジか。それは必見だね。見よう、見よう」


 不用意だった。

 ガチチアの水着に誘われて、ほいほいと小早川さんに接近したため、お互いの腕が触れる。

 制服は夏服なので、半そで。


 つまり、素肌が触れあってしまった訳である。


「おわっ!? ご、ごめん!」

「ん。えっと、何についてのごめん?」


 しっかりしてくれ、僕の脳細胞たち。

 こんな、三次元とのちょっとした接触事故で何を慌てているのか。

 車体がちょっとした段差に乗り上げた程度でわめくなんて、どうかしている。


「いや、うん。なんでもない」

「そっか。あ。見て、来間くん。チアレッドの水着。しかもアニメで着てたヤツとは違うバージョンだよ。アニメ雑誌はこうじゃないと。うん。グラビアで見ても、やっぱりチアレッドは腰から下がエロいよね。お尻と太もも、最高だもん。ね。来間くん。来間くん。この水着のコス、私に似合うかな?」


 先に言い訳をさせてもらえると助かる。

 これは、条件反射である。


 僕の脳は回転が速いゆえ、小早川さんのチアレッド水着コスを想像してしまったのは、優秀な頭脳を持ったがための悲劇。

 別に、そこにいやらしい感情なんて存在しない。


 ただ、脳裏に小早川さんの水着姿が浮かんだだけ。

 それだけの事である。


「うん。似合うんじゃないかな? チアレッドの方が似合うと思うけど」

「うん。それは仕方ないよね。三次元は二次元を越えられないもん」


 そして、こういう時に限って、僕の持論と全く同じ感想を述べる小早川さん。

 何が問題かって、そんな些細なことにまで意識をしている僕のコンディション。


 今日は体調が悪いのだろうか。

 大人しく家に帰った方が良いのではないか。


「おっすー! 手が空いたから牡丹ちゃんが来たぞー! およ、陽菜乃ひなのちゃんとホノカちゃんが仲良くしてる! 来間、ヤキモチ焼かなくていいの?」


 今日は守沢に助けられる日らしい。

 僕の思考は、一旦小早川さんと言うデンジャーゾーンからの離脱に成功。


「僕は寛大な男だからね。後輩にもホノカの素晴らしさを布教してるんだよ」

「おっす! シルバー先輩は最高っす! ホノカ先輩が惚れるはずっす!!」

『もぉ! 陽菜乃ちゃん、そんなにハッキリ言われると恥ずかしいですよぉー』


 やれやれ、危ないところだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 守沢のファインプレーを認めた僕は、その褒美に冷えた麦茶を淹れてやることにした。

 この僕が三次元にお茶汲みをするなんて、ほまれに思うと良い。


『やや! 大晴くん! 松雪さんからメッセージが届いています!』

「高虎先輩? なにか約束してたっけ? 内容を教えてくれる?」


『えっと、新しい衣装を作ったから、見せびらかしたいそうです!! もう学校の近くに来ているみたいですよ! お返事しても良いですか?』

「もちろん。ホノカに任せるよ」


「えー。松雪、またコスプレの衣装作ったん? ヤダー。あたし、困るんだけど!」

「守沢に着せるとは言ってないんだけど。はい、お茶」


 守沢はすっかり二次元に染まったなぁ。

「面白かった!」

「続きが気になる!」

「更新されたら次話も読みたい!」

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新参者ですので、皆様の応援がモチベーションでございます!!


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