ピーチ姫くらいトラブルに巻き込まれる学校のヒロインを、マリオくらいの頻度で助ける来間大晴
小早川さんが出張していった。
女子バスケットボール部のメンバーが1人欠席したらしく、試合前でゲーム形式の練習がしたい彼女たちは、スポーツ万能のヒロインに目を付けた。
小早川さんはアメリカに住んでいた頃、庭にあるバスケットゴールで一人遊びをしていたため、シュートだけはむちゃくちゃ上手いらしい。
なんでも、スラムダンクにハマって、特に三井寿推しだったのだとか。
ここで「バカだなぁ」と否定できないのが僕。
ダンベル何キロ持てる? をきっかけに、未だ筋トレを趣味にしてしまった僕からすれば、分かりみが深くてむしろ親近感すら覚えるレベル。
ただ、小早川さんには苦言を呈したい。
バスケ部に出向するのは全然構わない。
なにゆえホノカまで連れて行くのか。
ホノカが『美海さんのバスケットボールのユニフォーム姿、見たいです! じゅるり』と言って、彼女のスマホに出掛けてしまったのだ。
おかげで、僕は部室で待ちぼうけ。
楽しい放課後が台無しじゃないか。
「シルバー先輩、ゲームします?」
「シルバーと呼ぶんじゃない。……仕方ないから、玉木さんとゲームするか」
「あは! ものすごい不服そうっすね! 自分は気にしませんけど!」
玉木さんとマリオカートに興じる。
彼女のキノピオをサンダーで小さくしたのち踏みつぶし、ストレスを発散させていると、スマホが震え、それがホノカの帰宅の合図だとすぐに察知する。
コントローラーを投げ出して僕は帰って来た彼女とご対面。
「おかえり、ホノカ! やっぱりバスケなんて退屈だったでしょ?」
『それどころじゃないんですよぉ、大晴くん!! 大変なんです!!』
「スマホの充電ならまだ余裕があるけど。ああ、お腹空いたのかな?」
『むーむー! 違いますよぉ! 美海さんが大変なんです!!』
なんだか嫌な予感がした。
既視感も覚えた。
その続きは聞きたくないなとも思った。
『お手洗いに行った帰りに、美術部の3年生が美海さんを拉致したんです!!』
「ええ……」
マリオカートで僕がピーチ姫を使ったのが悪かったのだろうか。
なんで君はそんなにトラブルに巻き込まれるのか。
『大晴くん!!』
「あ、やっぱり助けに行かないとダメなんだ。うん。分かったよ」
「シルバー先輩、落ち着き方がパネェっす! さすが部長!! 自分、カメラの用意オッケーですよ!!」
早いところ面倒なことは済ませよう。
三次元のオスに費やす時間なんて、無駄以外の表現ができない。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ホノカのナビで、小早川さんのスマホの位置情報はバッチリ。
ご丁寧に、美術準備室に連れ込まれているらしい。
『あの、美海さんの周りに2人いますけど、大晴くん大丈夫ですか!?』
「うん。まあ、大丈夫かな。多分だけど」
「ちょっと落ち着き過ぎじゃないっすか!? 怖いとかないんすか、先輩!!」
ホノカに嫌われること以外を怖いと思った事はないから、質問の意図がよく分からない。
三次元のオスに恐怖って感じるものなの?
そして到着した美術準備室。
みんなでドアの隙間から中を覗いてみると。
「おいおい、そんな睨むなよ。別に、乱暴しようって訳じゃねぇんだぜ」
「いい加減にしてください。しつこい人は嫌いです」
「ははっ! お前、告る前からフラれてやんの!! じゃあ乱暴だな!!」
小早川さんが、三次元にオスに言い寄られていた。
しかし、求愛の最中に突入しても良いものなのか。
これ、僕がやらかした事になったりするんじゃなかろうか。
「先輩、今のやり取り、動画で撮影しときました! オッケーっす!!」
『おおー! 証拠を先に撮るとは、陽菜乃ちゃん、やりますね!!』
「えっ? 突入しても僕、罪に問われない感じ?」
「いやー。むしろ称賛されるんじゃないっすか?」
『大晴くん、美海さんを助けてあげてください! きっと心細いし、怖いと思うんです! お願いですぅ!!』
上目遣いのホノカのお願い。
なるほど、僕は何でもできる。
◆◇◆◇◆◇◆◇
準備室のドアを乱暴に開ける。
「来間くん!」
「なんだ、てめぇ! いつかの陰キャ野郎じゃねぇか! あの時、むちゃくちゃ痛かったんだぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん」
「たっくん!? え、マジかよ!? 普通出会い頭に顔めがけてグーパンする!?」
「いえ。話が長そうだったので。えーと、あなたは、うちの部員の拉致をした犯行グループの一員ですか? その場合、ぶん殴りますけど」
たっくんは山盛りになっている画材道具の山に頭から突っ込んでいるので、まあそのままにしておいてあげましょう。
「いや、違う違う! オレは何もしてないって!!」
「そうなんですか。じゃあ、良いかな」
しかし、ホノカの声が響く。
ご存じない? ホノカからは逃げられない。
『この人、美海さんを羽交い絞めにした人です!!』
「なに、今の声!? いやいや、あれはスキンシップだからぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん」
「どうして嘘をつくんですか。やれやれ。手が痛い」
「来間くん。ごめんね、また助けてもらっちゃった」
「本当だよ。今度からは僕もついて行くからね。面倒で仕方ないよ」
『ツンデレです!』
「ツンデレっすね!!」
たっくん、フラフラながら立ち上がる。
意外にタフじゃないですか。すごい、すごい。
「お前ぇ、今の、暴力だからな? 退学だぞ! は、はは、退学だ!!」
「ホノカ、玉木さん。首尾はどうだろう」
『牡丹さんがあと30秒で現着します!』
「動画、バッチリ撮れてるっす!」
「えっ? あの、退学? あれ?」
「多分お会いするのは最後になると思いますので、教えてあげましょう。あなたが小早川さんに乱暴しようとしてこの部屋に連れ込んだのは、当人の証言と、玉木さんの撮影した動画で証拠はバッチリ。そうなると、僕の行為は」
僕のセリフを引き取るのは、鬼の副長。もしくはチアイエロー。
「正当な武力行使と生徒会は認めるし! 前回の停学処分が明けてすぐにこの悪行! どう見積もっても退学だから! 来間、グッジョブ!!」
その後、守沢の手回しは良く、駆け付けた生活指導の教員によって、たっくんプラスワンは連行されていった。
三年生で退学ってキツイなぁ。
「やれやれ。本当にやれやれ。小早川さん、隙があり過ぎる」
「むぅ。だって、困ってるからって言われたんだもん」
「うん。そういうところが隙って言うんだよ。本当に、気を付けて。君に何かあったらホノカが悲しむんだから」
「うん。ごめんなさい。……ありがと。来間くん」
「良いよ、もう。部室に帰ってスマブラしよう。今日こそ勝ってやる」
『むーむー! 大晴くんのそういうところ、とってもステキです!!』
実に面倒な一件だったが、ホノカにステキと言ってもらえたので、これはプラスマイナスゼロどころか、ちょっとだけプラスもある。
たっくんにささやかな感謝を。学校生活、お疲れさまでした。
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