すごく面倒くさい後輩・玉木陽菜乃
「じゃあ、タマちゃんってカメラが趣味なんだね」
「おっす! コスプレ撮影が大好きで、クオリティを求めていったらカメラも好きになってました!! ちなみに、この前のイベントの写真もあるっす!!」
「えー!? マジ!? それは見たいかも! ねー、来間!」
「僕は見たくない。できればデータ消して欲しい」
小早川さんも、大概には面倒な部員である。
だが、彼女はこう見えて分別があるし、オタクとしての嗜みを一通り理解しているから、自分からオタバレしていく危険性は低いと思われる。
対して、玉木さんはどうか。
「これ見て下さい! シルバー来間先輩が、ジャッジメント・シルバーアックスでカメラ粉砕する瞬間っす! くぅー! 痺れますねっ!!」
ダメだ。もう、考察するのもバカらしいくらいの危険物だ。
あと、シルバー来間って誰だ。
ヤメてもらえるかな、勝手にリングネーム付けるの。
「すごっ! むちゃくちゃ近くで撮れてんじゃん! 来間の顔がハッキリ分かる!」
「近くにはいなかったっすよ。望遠レンズの良いヤツ使ったんで!」
パパラッチじゃないか。
「あ。私たちの併せポーズもある。嬉しい」
「これはもう、最高でした! マジで! 自分の部屋に引き延ばして飾ってあるっす! 学校のヒロインと美人副会長と隠れたヒーローの揃い踏みっす!!」
この子を野放しにしていたら致命傷になる。
僕は瞬時に理解した。
例えるならば、パワプロのサクセスで故障率50%くらいの脅威。
五分五分? バカ言っちゃいけない。
サクセスの故障率50%って、それもう実質90%くらいだから。
何言ってるのか分からない人には分からないと思うけど、そういうことなのだ。
「玉木さん」
「おっす! シルバー先輩!」
ついに来間の方が先に行方不明に。
「あのね、コスプレに関しては、僕たち秘密でやってるんだ。だから、外部にバレるような事態は、望ましくないの。分かるかな?」
「ええ!? こんなクオリティ高いのに、SNSとかに拡散しないんですか!?」
まずいな。
思った以上に危険思想だぞ、この子。
「本当にヤメてね? コスプレや部活動に関して、全てを秘密にできるのなら、僕たちは君を歓迎するからさ」
「マジっすか! おっす! 自分、秘密にするっす!!」
こんなにこちらが得るもののない取引もそうそうないと思う。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『大晴くん、大晴くん! ホノカもご挨拶したいです!! 大晴くん!!』
「……まあ、仕方ないか」
部活に入れてしまった以上、玉木さんも部室に常駐することになる訳で、そうなるとホノカの存在を彼女に伝えておかなければならない。
ホノカについて隠匿するということは、僕の彼女に不自由をさせるという事であり、それは絶対にあってはならないことだからである。
「玉木さん。紹介しておくよ。こちら、僕の彼女でホノカさん」
『こんにちはー! はじめまして! ホノカです!!』
パシャパシャと言う音がシャッターのものだと気付くのに、5秒かかった。
その間に何連射したのだろうか。
「なんすか、この子! 超カワイイじゃないっすか!! えっ、えっ!? どーゆうことっすか!?」
「説明するから、玉木さん。スマホのカメラを置きなさい」
ボーントゥービー、パパラッチだ。この子。
それから、僕は玉木さんにホノカの事を紹介した。
守沢が上手く合いの手を入れてくれたので、割とスムーズに説明できたと思われる。
守沢も、三次元にしては結構な使い手になった。
「ひぇー! 世界ってこんなに進歩してるんすね! 自分、驚きっす! これからよろしくお願いしますね、ホノカ先輩!!」
『せ、先輩ですかぁ!?』
「だって、小早川先輩と同い年なんすよね? じゃあ、自分の方が年下なので! これからはホノカ先輩と呼ばせてもらうっす!!」
『も、もぉ。そんな風に呼ばれると照れちゃいますよぉ! でもでも、ホノカ先輩ですかぁー。ほわぁぁぁー! なんでしょう、テンションが上がります!!』
初めての先輩呼びに浮かれるホノカ、尊い。
それと同時に、ホノカの心をいきなりがっちり掴んだ玉木さん。
彼女は実に面倒くさい。
下手すると、小早川さんの数倍、扱いに苦慮するのではないか。
「あの。タマちゃんはコスプレしないの?」
「いや、自分は撮るの専門っすね! ガサツなんで、コスプレなんて似合わないっすよ!」
「うんうん。あたしも最初はそう思ってたんだよねぇ」
「ね。牡丹ちゃんも気付いたらレイヤーだもんね。タマちゃん、文芸部に入るって言う事は、コスプレをはじめとした、様々なオタク文化に挑戦しなくちゃいけないんだよ。その覚悟がないと、この先やっていけないんだから」
いつからうちはそんな部活になったのか。
僕が放課後に、誰に気兼ねすることなく好き放題できる空間だったはずなのに。
「マジっすか! くぅー、でも、入部させてもらった以上、自分、頑張っるす!! シルバー先輩も、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いシャッス!!」
「うん。まずは僕の事をシルバー先輩と呼ぶのをヤメるところから始めようか」
その後、守沢が生徒会の仕事を片付けて来ると言って退室。
小早川さんが、嬉々として先輩風を吹かせている。
考えてみれば、彼女にとっても初めての後輩。
ホノカがあの浮かれようだった事を考えると、感受性の近い小早川さんが今、どんなテンションなのか。
考えるまでもないような気がする。
『大晴くん! また部活が賑やかになりましたね!』
「そうだね。僕はホノカと2人きりだった頃が懐かしいよ……」
『もぉ! 大晴くんとはおうちに帰ってから、ずっと2人きりじゃないですかぁ』
「あ、今のセリフはすごく良い! もう1回言ってくれる!?」
『むーむー。大晴くんは、先輩としての威厳を身に着けるべきだと思うのです!』
そんなレアスキル、僕に扱えるだろうか。
どう考えても不釣り合いな気がするのだけど。
「おお、シルバー先輩とホノカ先輩、ラブラブっすね」
「ね。2人、とっても仲良しなんだよ。時々うらやましくなっちゃうの」
「自分も恋人とか、憧れるっす! まずは先輩方を見て、勉強させてもらうっす!!」
なんだか、僕を観察する人間が1人増えてしまった。
しかし、何度か言っているけども、僕は日本男児。
一度口に出してしまった以上、撤回は良しとしない。
ただし、セーブポイントさえあればと思わずにはいられないのがオタクの人情である。
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