会場をひとり占めにした、僕とチアーズ
「シルバー司令官! こっちに目線ください!!」
「こっちもお願いします!!」
どうしてこんな事に。
騒ぎが収まって撮影が再開されたと思ったら、なんか僕がやたらとご指名を受けると言う、摩訶不思議な異常事態。
「ジャッジメント・シルバーアックスでお願いしまーす!!」
「ええ……。ふ、ふぅぅぅん!」
僕が技を繰り出す度に、周りのカメラマンさんたちが沸く。
もうこうなってくると訳が分からない。
教えてよ、インキュベーター。
「あのぉ、チアイエローと併せのポーズお願いできますか?」
また、とんでもないハードルのお願いをされてしまった。
守沢が良しとするはずがないじゃないか。
「仕方ないなぁ! ほら、来間! やるよ! あたししゃがむから、あんた立ちポーズね!!」
「えっ!? 守沢、中の人変わった!?」
「意味わかんないこと言ってないで、早くしろ!!」
あの守沢が、率先して僕と併せポーズを。
もしかして、これは僕が見ている夢なのではないか。
目が覚めたら、今日が始まるのではないか。
そうだ。
僕も今日を結構楽しみにしていたから、自分に都合のいい夢を見ているんだ。
「今度はチアレッドと併せお願いします!」
オファーが届くのと同時に、既に小早川さんが僕の隣でポーズを取っている。
この動きの速さと、完璧なポージングは紛れもなく小早川さん。
「司令官。共に敵を迎撃しましょう」
「えっ。ああ、うむ。よし、行くぞ」
彼女と背中合わせでDVD3巻のジャケットを再現すると、これまた囲みが大いに盛り上がった。
「ウチらも一緒にいい?」
「ねー! せっかくだから、ガチチアとコラボしたーい!」
ポップ・ウィッチのお姉さんたちまでやって来るものだから、さらに囲みのカメラマンが増えた。
その中には、ひと際異彩を放つスカイブルーのディーン・フジオカが交ざっている。
「こっちに視線を頼むでござるー!! 司令官殿ー!! 号令をー!!」
うちの先輩、最高の笑顔でカメラマンの最前列に陣取っている。
そして僕に無茶振りをする。
身内が一番無茶を言うとか、何の罰ゲームですか、これ。
「総員、敵を確認! 出撃せよ!!」
そして、意外とノリノリでやってしまう僕。
ああ、これは多分夢だから。
夢の中なら普段は絶対できない事だって、不思議とやれちゃうものなのだ。
その後も、大変な盛り上がりの渦中に僕は取り残されて、イベント終了まで解放される事はなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
そして祭は終わりの時間を迎え、僕は高虎先輩と更衣室へ引き上げてきた。
『むーむー! 大晴くん、イベントの主役でしたよ! ホノカは彼氏が大活躍で、鼻が高いのです! むー!!』
ホノカのバーニングフォームコスが、「これは現実だよ」と僕に語りかけて来る。
心を落ち着けるべく、ホノカの可憐な姿を2分ほど凝視した。
ああ、尊い。
「大晴くんは本当に大活躍だったね! まさかコスプレイベント初参加で、会場を独り占めするなんてさ! 小生も誘ったかいがあったよ!」
「ヤメてください……。僕、ちょっとずつ現実を感じ始めて、軽く絶望してるんですから。ああ、なんて事をしてしまったんだろう」
記憶が曖昧だけど、なんかカメラを遮二無二踏み散らかした覚えが。
この僕がそんな犯罪スレスレの行為を?
スレスレ超えているのがなお悪い。
『わたしを守ってくれて、わたしのために怒ってくれて。ホノカ、とっても、とーっても、嬉しかったんですよぉ! 絶対に今日の事、忘れませんからね!!』
ホノカの言葉で、記憶が鮮明になる。
と、同時に、僕は自分の乱行を正当化するに至った。
僕の彼女に手を挙げた悪漢のカメラを踏んで、何か問題があるのか。
まったくもって、ノープロブレム。
むしろ、やり足りないまである。
もののついでに髪のひと房、いやさ、ふた房、むしり取ってやれば良かった。
「そう言えば、高虎先輩。すみません。僕がカッとなって無茶苦茶やった尻ぬぐいをさせてしまって。穏便に事を済まそうって話だったのに」
悪漢に対して行った行為に後悔はないし、同じ事されたら僕も同じ事を繰り返す自信があるけども、高虎先輩に迷惑をかけたのはよろしくない。
その点だけはしっかり反省して、謝罪する。
「何言ってるの。小生の知っている大晴くんは、そういう人だ! 小生の方が2つも年上なんだから、背中は任せてくれたまえよ。君のそういうところが小生は好きなんだから!」
「ああ、すみません。僕の中で先輩の好感度がハート2個分増えました」
『むーむー! 大晴くん、浮気ですかぁ? 彼女として見過ごせません!』
「ええ!? いや、今のは話の流れと言うか、ノリじゃないか!」
僕たち3人は、「ははは」と吹き出した。
イベントにはトラブルが付きもの。
問題が発生した、その後が肝要なのだ。
笑い話にできるならば、そのトラブルはもう立派な思い出になったと言っても良い。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「お待たせしました。ごめんなさい、更衣室が混んでて」
「つか、松雪! なんでチアシューター回収してくんないのさ!? 更衣室でものすごい周りの人に迷惑かけたんだけど!!」
小早川さんと守沢が、僕たちに遅れること10分で合流。
と言うか、更衣室にチアシューター持って入るとか、守沢も三次元にしておくにはもったいない可能性を見せ始めている。
「いやぁ、守沢氏どうするのかなと思って見てたら、まさかのそのままゴーだったので、小生はその様子を動画に撮ることくらいしかできなかったでござる! でゅふふ!!」
「むきーっ!! 絶対に許さん! チアシューターで撃ち抜いてやる!!」
そして追いかけっこを始める2人。
元気だなぁ。僕はもう、ライフゲージが赤に近いオレンジなのに。
「来間くん。来間くん」
「うん。どうしたの、小早川さん? 忘れ物でもした?」
「むぅ。違うもん」
「あ、分かった。喉が渇いたんだね」
「それも違う。あのね、来間くん」
「うん。何かな?」
「イベント、すごく楽しかったね! 私、来間くんと来られて良かった!」
三次元にあるまじきキラキラした笑顔の小早川さん。
これはいけない。繰り返すが、相手は三次元。
その笑顔に僕が一瞬とは言え見惚れるとは、本格的に疲れているらしい。
「さて、それでは各々方! 参るでござるよ!」
「やっと帰れるんですね」
「何を言っているのでござるか、大晴くん。なるほど、ハイレベルなボケでござるな?」
高虎先輩は、親指を立てて言うのである。
「打ち上げに行かねば! もう、お店の予約は済んでいるでござるよ!!」
なるほど、その提案を蹴る理由を探すのには、骨が折れそうだった。
「面白かった!」
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