シルバー司令官、またの名を来間大晴。原作通りの必殺技で流れるようにカノジョとヒロインを守る
「なぁ、足開けよぉ!」
「はあ? バカなんじゃないの!?」
「やめてください」
「嫌がりながらも興奮してんだろ? いやぁ、エロい恰好してさぁ!」
コスプレイベントにおけるルールは多岐にわたる。
そのため、ここで全てを言及するのは不可能である。
大事なものだけ説明させてもらうと、彼らはローアングラーと呼ばれる汚物。
主に女性レイヤーを下から撮影して、スカートの中を撮っちゃうぞという、どうしようもない連中であり、中にはその画像で商売をする不届き者までいると言う。
当然のことながら、即刻ギルティの違反行為。
だが、高虎先輩が数時間前に言っていた通り、ここのイベントは運営が甘い。
騒動が起きればすぐさま駆けつけるべきスタッフが、近くにいない。
さらに不運なのが、休憩しているレイヤーさんがみんな女性だと言う点。
先ほど仲良くなった、ポップ・ウィッチの2人組も、「やめなって」と抵抗しているが、やはり相手が男のため、強く言えずにいる。
それも当然。
そんな犯罪まがいの行為を平然と行うような輩を刺激したら、襲われるのではないかという想像くらい、誰でもするだろう。
「どうしましょうか、先輩」
ここは、ベテランコスプレイヤーの高虎先輩に指示を仰ぐのが上策。
僕がヘタに手を出すと、面倒事がさらに拡大するかもしれない。
「そうだね。まあ、強めに警告して、それで引き下がれば良し。ダメなら、運営の人間を連れて来るから、大晴くんは時間稼いでおいてくれるかい?」
「了解です。なるべく穏便に済ませる方向なんですね」
「やっぱり、強行策はイベントの興が冷めるからね。せっかく来ているのに、嫌な思いを残すのは、誰だって嫌なものさ」
「さすがです」
そして現場に到着。
やれやれ。せっかく引いた汗がまた流れ始めたじゃないか。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「あ。来間くん」
小早川さんが真っ先に僕の名前を呼んだ。
呼ばれたら仕方がないので、返事をしなければ。
「来間! ちょっと、助けて! 変態が絡んで来る!!」
「分かってるよ。ちょっとすみませんね。ヤメてもらえますか?」
なるべく穏便に。
こんなルールも守れない輩を相手に穏やかに接するとか、結構ハードモードである。
しかし、高虎先輩の指示ならば致し方なし。
と、心に誓ったはずなのに。
「なんだよ、お前ぇ!」
「うわぁ。自分の思い通りにならないと癇癪起こすタイプか。ヤダなぁ。あなたみたいなのがいるから、オタクがいわれなき迫害を受けるんですよ」
ここまでは良かった。
ここからがまずかった。
「な、なんだとぉ!!」
『ひゃあぁっ!』
ローアングラーAが、僕のスマホを乱暴に払いのけた。
その結果、どうなるか。
スマホが地面に落下して、ホノカの悲鳴が響いた。
僕が冷静さを失うには充分な出来事だった。
「ホノカ! 大丈夫!?」
『は、はいぃー。ビックリしましたぁ』
ああ、良かった。
冷却装置がクッションになったのか、スマホの機能は正常に働いているらしく、画面の中のホノカも目を回しているものの、無事なようだった。
「なにスマホに喋ってんだ、こいつ。はは、キモ!」
「……ちょっと失礼」
「ちょ、おまっ、何すんだよぉ!」
ローアングラーAの首から下げていたカメラを強引に奪い取る。
さぞかし大事なのだろう。
もしかして、今日のイベント以外でもそうやって撮ってきた、お宝ショットがいっぱい詰まっているのかな。
僕は、悠然とカメラを地面に置いて、マントをバサッとやったのち、鷹のように荒ぶるポーズで喝を入れる。
「ふぅぅんっ!!」
バキャッと音がして、カメラのレンズが割れた。
粉々にするつもりで踏んだのに、意外と頑丈で腹立たしい。
「おまぁ! お前ぇ! ひどい! ひどいよぉ!! 何してんだよぉ!」
「ご存じない? ジャッジメント・シルバーアックスですよ」
シルバー司令官の必殺技である。
有体に言うと、ジャンプしてから繰り出す踵落とし。
「し、知ってるよぉ! お前、コスプレしてるからって、技使うの反則だろ!? あと、カメラ壊しやがって! は、犯罪だぞぉ!!」
僕は無言でカメラの元へ戻り、今度は先ほどよりも力を込めて、気合一閃。
「ふぅぅぅぅぅぅぅん!!!」
ゴギャッと音がして、今度は蓋が弾けて、外装が割れた。
やはり粉々にならない。今晩から下半身の筋トレを増やそう。
「な、ななぁ、何してんだよぉぉぉ!!」
「ジャッジメント・シルバーアックス・メテオですが?」
ジャッジメント・シルバーアックス・メテオとは、ガチチアの11話で、窮地に陥ったチアーズを救うべくシルバー司令官が使った、渾身の一撃である。
「あ、頭おかしいんじゃないのか、お前ぇー!」
「てめーは僕を怒らせた」
ああ、これは失敗。
勢い余ってジョジョネタを振ってしまった。
せっかくシルバー司令官になり切っていたのに。
「裁判だぁ! 訴えてやるからなぁ! 警察呼ぶからなぁ!!」
「はい。そこまでです」
次はジャッジメント・シルバーアックス・カタストロフィだなと考えていると、高虎先輩が僕とローアングラーズの間に割って入った。
もしかして、僕もジャッジメントされます?
「あなたのカメラはこれですね? たった今、Amazonで注文しました。住所を教えてください。ご自宅に配送いたします。……それから、このSDカードは、預からせて頂きます。通報でしたら、ご心配なく。もうしました。このカードの中身は、さぞかし良い証拠になるでしょうね?」
「えっ、あっ? あ、ああ?」
「やべっ!」
「お、おい、待てよぉ!」
逃げ出そうとするローアングラーズ。
そこに立ちふさがる、チアブルー。
「カメラの弁償はすると言っているじゃないですか。さあ、住所とお名前を」
「い、いらねぇよ、そんなの! もう2度と来てやんないからなぁ!!」
「それはこちらのセリフですね。はい、スタッフさん。今の2人の顔写真です」
鮮やかに場を納めた高虎先輩。
すると、僕の前で跪く。何ですか!? 僕、何されるんですか!?
「皆様、ご安心めされよ! 我らのシルバー司令官が、チアーズを襲おうとした不届き者を、見事に撃退してくれたでござる!! さあさあ、拍手をお頼み申す!!」
いつの間にか周りに集まっていたレイヤーさんたちが、パチパチと手を叩き始めたかと思えば、それは瞬く間に伝播していき、喝采に変わる。
なんということでしょう。
むちゃくちゃ目立っているじゃないか。
とりあえず、仮面被っておいて良かったと心の底から思う僕である。
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